クラスメイト
「早田くんは何の競技に出るの?」
前の席の神崎龍が椅子の背もたれに両肘をつき話しかけてきた。
「きょうぎって?それと呼び方、咲でいいよ」
「体育祭だよ。毎年五月は体育祭があるんだ」
「五月に?早くないか。大体七月や八月にあるだろ」
「大体の学校はな。ところで咲よ、五月に体育祭をすることでメリットは何だと思う?」
龍が得意げに聞いてくる。
「気候が涼しい、友達がつくりやすい、とか?」
指を折りながら考える。
「さすがはサク、それも十分メリットと言える。だがもうひとつ!重要なものがあるのだよ」
だから何でお前が得意げな顔してるんだよ。とツッコミを入れたくなるのを抑え答えを待つ。
「練習時間が短いことだ!」
あ、さいですか。
「くだらないこと言ってないで競技決めるぞ」
担任の後藤が黒板に板書する。
全体競技に加え、個人では最低二つの競技には出ないといけないようだ。
全体競技では玉入れ、個人では借り物リレーと綱引きの出場になった。リレーは目立つから嫌だといったが一緒に出たいと龍の押しに負けてしまった。リュウはほかにも学年別リレーや応援団など出場予定で全力で体育祭を楽しむのが伝わってきた。
「それにしても昼休みに咲が教室にいるの初めてだな」
本庄裕司が袋からメロンパンを取り出した。
「昼休みになるといつの間にかいなくなってたもんな。今までどこ行ってたんだ?」
水無月隼人が弁当箱の蓋を開ける。
競技決めの後すぐ昼休みに入り、流れで龍と過ごすことになった。龍といつも昼休みを過ごしている裕司と隼人も一緒に昼飯を囲んでいる。
「屋上だよ」
「屋上?そりゃ見つからないわけだ」
なるほどなーと龍が関心する。
「見つからないって、俺を探してたの?」
「必死に探していたのは女子だよ。イケメンの転校生と仲良くなるぞって意気込んでたぞ」
「龍なに言い方真似てんだよ、全然似てねーし」
隼人が肩を揺らして哄笑する。
「そんなことねーだろ。傑作だろ。なあ、裕司」
「俺に振るなよ。それより、確かに屋上だと見つからないかもな」
裕司が笑いをこらえながら俺を見る。
「何で屋上がいいんだ?」
俺が聞くと龍が人目を忍ぶように続けた。
「それはな———」