聞いてほしいことがあって
「龍、裕司、隼人‼」
走って三人に追いつく。
「お、咲。おかえりー」
みんなが笑うこの空間が好きだ。
そんな場所を今から台無しにするかもしれない。
みんなを傷つけるかもしれない。
期待を裏切ってしまうかもしれない。
俺が傷つくかもしれない。
それでも、俺がしたいことは———
「あのさ、聞いてほしいことがあって……、俺……、転校するんだ」
「「「……え」」」
「せっかく仲良くしてくれたのにごめん、こんな形になって、ほんとにごめ———」
「いつ⁉」
「え?」
「いつ引越すの⁉」
龍が勢いよく聞いてくる。
「は、はんとしご……」
龍が沈黙する。
背中に冷汗が流れる。
「半年後か、……まだちょっと時間あるな!」
予想外の反応に拍子抜けするが、お構いなしに龍が笑って続ける。
「みんなでいっぱい遊んで思い出つくろうぜ!」
「俺のために時間作ってくれるのか?半年後にはいないのに」
「当たり前だろ!時間は有限なんだから」
さっきまでの氷のような緊張が太陽に照らされて解けていった。
眼に溜まった涙には気づかないふりをした。
「咲、友達には話せたのか?」
「先輩のおかげで」
「そりゃよかった」
「先輩って、教師とか向いてそうだよな」
「それは光栄だな」
心地良い風が吹いていた。
「でも、やっぱりさみしいな」
「先生は知ってるのか?」
「親が伝えてなければまだ知らないと思う」
そっか、先輩が呟くと同時に扉が開く音がした。
後藤先生がいた。
俺に用があると思い先生を見ると、ある一点を見つめて言葉を失っていた。
そして、こう呟いた。
「……霧人」
「久しぶり、広明」




