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【完結済】 悪役令嬢のデスゲーム ~婚約破棄の時、それは復讐の始まりです~  作者: せんぽー
第2ラウンド

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第28話 転生者

 最後のタコ焼きを平らげると、私たちはタコパをお開きにした。セイレーンは片付け終わると、乗ってきた水色の大型バイクにまたがり。


「チャオ~! アドヴィナ! また会おうね~」

 

 とマフラーをふかせながら颯爽と去っていった。そんな騒がしい彼の背中を見送りながら、ふと思う。


 なぜセイレーンはあんなにも早く、私の所に来れたのだろう、と――――。


 ケヴィンの時は蚊よりもずっと小さな声だったのにも関わらず、彼は来た。さっきは呼び方を変えたのにも関わらず、秒速で来た。


 たとえバイクを持っていたとしても、階数が異なれば時間がかかる。唯一瞬間移動を可能にする鏡を使用しても、何度も偶然的に私の所へ辿り着くはずがない。


 もしかして、ずっと私をストーキングしていたのだろうか………。


 まぁ、ありえなくはない。変人だし………私が好きだからって理由で今でもずっとどこかで見張ってそうだ………ま、いっか。どうせあいつは何をしてもこちらに害はないし、彼も大丈夫。


 さっさと犯人を見つけてしまおう――――。


 タコは残念ながら、魔法使用を可能にさせた犯人ではなさそうで、その他の女子も同様だった。犯人捜し&敵殲滅のため、私はバーの横にあった楕円の鏡へと飛び込む。


「次はどこかな~」


 お腹も満たされルンルン気分で闇の中へ入った。

 直後、感じたのは冷気。その寒さで一瞬身震い。


「ここは……………」


 次の会場――――それは室内スケートリンク。

 周囲はライトが一切ない真っ暗な観客席。重厚な席が用意されていたが、観客は誰1人としていない。


「…………」


 しかし、眩しいほどのライトを浴びせられたリンク中央で、1人の少女が舞っていた。軽やかにしなやかに、まるで空気を感じさせない舞い。彼女がクルクルと回る度に、氷上を駆ける心地いい音が響いていた。


 彼女にスポットライトが当たっているのもあったが、無くても恐らく目が離せなかったことだろう。


 それぐらい……………美しかった。

 へぇ………あの子がこんなにスケートができるなんて意外だったわ。


 瞼を閉じ、流れるままに踊り、桃色の髪をなびかせる少女の名前はロリーナ・プレザンス。クラスメイトではないが、学園の生徒であれば誰もが知っている人物。彼女は精巧な人形のように美しく輝いているが、学園での噂はそれはそれは汚かった。


 彼女を一言で表すなら、そう――――ビッチ。


 男タラシなドジっ子ビッチ女子だった。相手がいる男であっても所かまわず食べてしまい、彼女さんとトラブルになってしまうのは日常茶飯事。トラブらない日の方を数えた方が早いぐらい。

 

 女子の間では憎たらしいまでにあざとく見え、ずる賢い猫泥棒と呼ばれ、ドジをするのも演技だと言われる始末。


 そんなクソビッチロリーナちゃんのたくましいところは、そんな噂も女子の目も気にもせず、好みの男はとことん自分の物にしていくところ。


 乙ゲーメインキャラ以外のイケメンはほぼ全員寝ただろうし、学生だけでなく、ワンチャン先生の相手もしているはずだ。


 そこまで来ると、いっそ清々しいまではある。


 計算高いとこはあるものの、ドジな部分の半分は恐らく本物。だからこそ、彼女は完璧なスケート(舞い)ができているのに驚きを隠せない。


「ねぇ、ロリーナさん。あなた、雪国の出身ではなかったわよね?」


 私は最前列の席に腰を掛けて、彼女に話しかけてみる。


「そうなのです~。私の出身は雪が降らない南のラヴミサなのです~。スケートをするのはこれが初めてです~」


 呑気な返事をくれる彼女は舞いを止めることなく、氷上で踊り続ける。彼女が着ている水着は薄桃色グラデーションのベルラインミニスカドレス。フィギュアスケート選手のようで、リンク上では違和感を感じさせなかった。


「その声はアドヴィナさんですか~?」

「ええ、1人で踊る可哀そうな子を見かけたから、私が観客になってあげようと思って」

「そうなのですか~ありがとうございます~」


 クルクルと回り、手足の先まで全身を使って、ロリーナは可憐に踊る。レースも揺れて、その姿は雪の妖精のよう。


 初心者なら、氷上で踊る前に立つことすらできない、センスがない限り立てても生まれたての小鹿のように足を震わせてしまうだろう。


 でも、彼女の滑りは初めてとは思えない………プロレベルね――――。


「私、元々スケートができたんですよ~」

「へぇ、それは初耳だわ」

「でも、ロリーナとしては初めてのスケートなのです~♪」

「…………」


 なるほど……ロリーナとして(・・・・・・・)、ね。

 ようやく舞いを止めたロリーナ。彼女は座席の物陰で何かを拾った。


「サクラメントさん、もうお気づきですか~?」

 

 彼女が拾ったそれは可愛らしい姿とは真逆のいかつい大斧。全く似合わない武器を手にするロリーナにいつもの甘い笑顔はなく、ただ静かに黒の瞳で私を見据えて。


「――――――あなた()転生者なのですよね~、悪役令嬢(・・・・)さぁ~ん?」


 この世界ではまず呼ばれない、その私の呼び名を口にしていた。

 第29話は明日10時頃更新いたします。よろしくお願いいたします。

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