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帝都の歩き方  作者: 初瀬灯
第一部 帝都の歩き方
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61 賭け

 深雪を伴い、花房は最上階まで登ってきた。完全に心を失い、立ちあがってもゆらゆらとしているばかりの深雪を連れて登るのはかなり骨が折れたが、放っておくわけにもいかない。


 深雪の様子からして、それこそ自殺しかねない。


 惣也は環の式で縛られている上、明神の封印式を貼り付けられているので何も出来ないだろう。さっきの意趣返しも兼ねて放置しておいた。


 最上階はこれまでとは打って変わって、宇宙空間の様だった。まるでここだけ別世界だ。散々訳の分からない物を見せられ続けてきたが、やはりそれなりに驚く。


「ああ、花房さん」


 花房の姿に気が付いた明神が軽く手を上げる。傍らには環と、惣也と同じ様に縛り上げられて倒れている雲雀の姿があった。


 ――こいつらだけか?


 花房は顔を顰める。花房の思うところの察したのだろう、明神が済まなそうな顔で首を振る。


「一歩遅かったようです。織川苑緒は既に、アマネの心の中に入り込んでいました」


「三条蓬子は?」


「彼女も織川苑緒を追って――こちらは完全に僕の不手際です。申し訳ありません」


 明神は項垂れる。


「俺に謝っても仕方ないだろう」


 その言葉に明神は苦笑して、ばつが悪そうに頭をかいた。

 花房は倒れている雲雀を見下ろす。


「随分あっさり捕まってるな。もっと暴れ回るかと思っていたが」


「暴力沙汰は嫌いなんですよ。織川苑緒への『説得』を含め、やれる事はやったので後は神の――いえ、アマネのみぞ知るってところですね」


「そうかい」


 花房は見上げる。白の少女、アマネがそこには眠っている。


「織川苑緒と、三条蓬子は戻ってこられるのか?」


 環は難しい顔をして、どこか苦しげに言う。


「はっきり言って、難しいです。アマネに存在が近い織川苑緒はまだしも、ただの人間である三条蓬子の意識はすぐに闇に飲まれるでしょう」


「そうか――」


 花房はポケットから煙草の箱を取り出す。今朝から何本吸ったのか記憶に無かったが、幸いにも一本だけ残っていた。


「あの蓬子って娘。凄い勢いだったよな。まるで迷うそぶりもなく、真っ直ぐ織川苑緒の所へ向かっていった」


 ライターで火を付け口に銜える。


「だったら俺達は、それに賭けるしかないだろう」


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