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帝都の歩き方  作者: 初瀬灯
第一部 帝都の歩き方
56/180

53 哄笑

「だから、苑緒も歪んでいるって言いたいのか?」


「途中から貰っただけの私ですら、こうですもの。生まれ持っての異能者である織川苑緒がどんな孤独を生きてきたのか、想像も付かないわ」


 異世界に来た時の事を思い出す。苑緒は眠りながらも苦しげで、誰かにずっと謝っていた。


 ごめんなさい。ごめんなさい。


 あれは誰に謝っていたのだろう。


 日常でも、話しながら不意に苑緒が硬直する時がある。


 嘘を見抜ける苑緒は、ふとした会話から、思わず人の心の深淵を覗いてしまう。そしてそれに罪悪感を覚えている。


「私とあの娘は同じです。異能に振り回されて、人を傷つけた。私も彼女もこの世界にもう居場所はないわ。だったらもう何もかも――滅茶苦茶になってしまえばいい。表も裏も無くなったら、異能者の私の新しい居場所も出来るかも知れません」


「それがあんたの答ってわけか?」


「ええ、そうです。きっと織川苑緒もそう」


 深雪は氷の様に冷たい表情で、そう言った。


「ふ、くくく――」


 それで苑緒と同じ、か――


「あははははははははは!」


 思わず、蓬子は笑い出した。何もかもおかしく、滑稽で仕方がなかった。


 深雪が蓬子を睨む。


「何がおかしいのですか?」


「これが笑わずにいられるか。あんたと苑緒は同じだと言ったな? 確かに苑緒はいつも葬式みたいな顔つきをしてるさ。だが、あいつはあんたみたいに曲がっても歪んでもいないぜ。あんたは自分の意気地が無いのを異能や周りのせいにして自分を憐れんでるだけだ。一緒にするなよ。苑緒はただ優しすぎるだけだ。ただそれだけで、あいつはあんたや私なんかより、ずっと真っ直ぐさ」


「何を――」


「もうあんたに用はないぜ天才少女。私を今すぐここから出せ。私は今から苑緒に大事な話がある。それでもあいつがあんな顔してるのなら――ひっぱたいてでも目を醒まさせてやる」


「ふざけ――ないで!」


 深雪が凄まじい形相で蓬子を睨む。


「あー、お二人さん。お取り込み中のところ悪いけど、お客さんが来たみたいだよ」


 ずっと黙って話を聞いていた惣也が、そう言って水鏡の方を顎でしゃくる。

 水鏡には見知らぬ男性二人と、瀬川環の姿が映っていた。

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