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帝都の歩き方  作者: 初瀬灯
第一部 帝都の歩き方
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49 今も

「ここで一つ大事な事があるので、予め整理しておきますね」


 環は立ち止まり、三本指を立てて明神達に示した。


「この世界、表と裏もひっくるめての世界――には三種類のヒトがあります。まず、明神さんに花房さん、そして三条蓬子の様な異能の無い普通の人間。後から雲雀に異能を与えられただけの神津深雪もこれに属します。次に私や雲雀の様な裏側生まれの人ならざる存在、私達は異能を持っています。寿命も人間と違いますね。そして、表に生まれた人間であるにも関わらず異能を持った者。アマネと織川苑緒。彼女達がそれにあたります。これらは魂の質が違うのですよ。種族が違う、と言いますか。イヌとオオカミとキツネくらい違います」


 分かるような分からないような、微妙な例えである。


「それのどこが大事なんですか?」


「特に三つ目の普通の人間でありながら異能を持つ者の事です。アマネと織川苑緒は同質の魂を持っています。織川苑緒ならばアマネの心の中に入る事が可能です。そうしたならば、彼女を目覚めさせられるかもしれない。だから雲雀は織川苑緒を――アマネと同質な魂を持つ者を探していた。何とか私が先に見つけたので、織川苑緒を裏側に送ったんですが、結果はご存知の通りです」


 環が恨みがましい目付きで明神を睨む。


「ちょっと待って下さい。今、アマネを目覚めさせられるかもしれないって言いましたよね?さっきの神話は何千年も前の話ではないのですか?」


 そうですよ、と環は何でもない風に肯定する。


「アマネが能力を解除するとどうなるのか。はっきりした事は分かりませんが、既に存在する者や物が消えて無くなる事はありません。多分文字通り、世界がひっくり返ると思います。先程事務所で話した雲雀がやろうとしていたとんでもない事、というのはそれです。雲雀はアマネを目覚めさせようとした形跡があります。それが実行されればきっと、裏と表は混ざりあって、世界はぐちゃぐちゃになるでしょう」


「まさか、アマネは――」


 その時、視界が一気に開き、明神達は草原に足を踏み入れた。ようやく森を抜けたらしい。


 眩しい光に薄く目を開いて前方を見ると、草原の真ん中に古い塔があるのが見えた。


 その塔を見上げながら、環は言った。


「アマネは今もここにいます。あの塔の中で裏側の世界を想像しながら、何千年もの間――眠り続けているのです」

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