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帝都の歩き方  作者: 初瀬灯
第一部 帝都の歩き方
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44 嘘と確定情報

「手伝い?」


「そう、苑緒さんにしか出来ない事があるのよ」


 本当。


 今更ながらに苑緒は自身の能力の性能を実感する。こんな言い回しは日常でちょっと何か手伝って欲しい時にだって冗談めかして使う、ある意味では決まり文句と言っていい。常人が聞いても真に受けていいものかどうか、まるで分からない。判断の材料にはならない言い回しだ。


 しかし、それを苑緒が聞いたなら話が変わる。苑緒は発言の白黒を確実に付ける。曖昧な発言が確定情報に変わる。


「何をすればいいのかしら?」


「まだ言えないわ。その時に話をする」


「それを手伝ったなら、蓬子を助けて貰えるんでしょうね?」


「ん――」


 その言葉に雲雀はすぐには応えず、また先程と同じ様にじっと苑緒の目を見つめた。


 間違いない。


 苑緒が雲雀にやっているのと同様に、雲雀も苑緒の腹の内を探っているのだ。


 苑緒の今の言い方では、まるで雲雀が蓬子を人質に取っているみたいである。だから苑緒が雲雀を疑っているらしい事は勘づかれただろう。


 構うものか。


 彼女らに苑緒の協力が必要なのは確定情報である。ならば、ここは強く踏み込む。


「それだけは約束して貰わないと、何も協力出来ないわ。今からでも別れて、私一人で蓬子を探す」


 雲雀の視線が宙を彷徨う。何かを思案しているのは明らかである。


「いいわ。約束する」


 嘘――ではない。


「分かったわ。なら私も貴女に協力する」


 雲雀が嬉しそうに微笑む。


「信じてくれて嬉しいわ」


 何となく皮肉っぽい。これも恐らく苑緒の反応を見ようとしてのものだ。何の保証もない口約束をあっさり信じた様に見えてしまったか。


 雲雀はおそらく苑緒の能力が何か探ろうとしているのだ。嘘を見抜く、という一点を看破する事はまだ不可能だろうが、読心に通じる何かだという疑いは持っているかもしれない。


「約束を破るようなら、私は一人で行くからね」


 だから一応付け足しておく。構わないわ、と雲雀は力強く頷いた。


 それから二人はしばらく無言で歩いた。


 浅草もどきの裏道を、人目に付かない様に抜けていく。雲雀はどうやらここに土地勘があるらしい。迷う様子もなく道を選んでいく。


 次第に建物がまばらになってくる。少しずつ、郊外に抜けて行っているらしい。ここまで来ると辺りに妖怪変化はまるで見られない。常夜の通りと同じ様に、人気のない道である。


 まだまるで気が抜ける状況ではないが、化け物の姿が見えないだけでも、苑緒の気持ちの上では随分有り難かった。

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