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帝都の歩き方  作者: 初瀬灯
第一部 帝都の歩き方
46/180

43 協力

 隣を歩く少女、奥山雲雀を横目で見る。ただ歩いているだけなのに、どことなく楽しそうな気配がある。

 彼女が惣也に命じて蓬子を攫わせた。

 その確信が苑緒にはある。しかし、まだそれを暴き出し、指摘し、糾弾するわけにはいかない。しても意味がない。

 それをやって雲雀が泣いて許しを乞いで蓬子を解放するならいいが、間違いなくそうはならないだろう。自分が関係しておきながら素知らぬ顔で苑緒と接触してくる様な相手だ。

 ころりと方針を変えて苑緒に危害を加えてくるかもしれない。

 今はこちらも気が付いていない振りをして、出来る限り情報を収集する。苑緒が嘘を見抜ける能力を持っている事も気付かれてはならない。

 雲雀の目的を探りつつ、隙を見て抜け出し蓬子を救出する。それは簡単な事ではない。そんな事は十分承知している。

 しかし、蓬子は帰らなければならない。必ず。

 苑緒自身は別に帰れなくても構わなかった。元々帰る場所などどこにもないのだ。物理的な場所はあっても、自分自身の居場所はない。

 しかし蓬子は違う。帰る場所も自分の居場所も、彼女にはきちんとある。自らの手でそれを壊しもしない。彼女はあの時、苑緒の手を離さなかった。だから巻き込まれてしまった。それだけなのだ。

 雲雀は淡々と歩みを進めている。裏通りの裏通り、とかく人気が少ない場所を選んで進んでいる。

 人ならざる者が歩く通りは、やはりあまり安全とは言えないらしい。基本的に彼らも知性が無いわけではないので、獣の様にいきなり襲って来る事はないだろうが、それでもここは彼らの住まう場所なので人がうろつくのは奨励されていない。

 そこで何か不幸な事が起こっても、同情されない程度にはよろしくないらしい。

 これらの情報は嘘ではなかった。だから極力人目につかないだろう路地を進んでいる事には苑緒も異論はなかった。

「何から話せばいいかな――」

 暗い路地裏をきょろきょろ探りながら、雲雀は呟く。

「どうして私を探していたのか、教えて欲しいのですけど」

「そうねえ――」

 雲雀は立ち止まり、苑緒の顔をじっと見つめる。人と関わる事に不慣れな苑緒はそれだけでも緊張してしまう。そんな場合ではないという事は重々承知なのだが、長年培ってきた性格なので今すぐどうこうは出来るものではない。

「知りたい?」

 にやり、と雲雀は唇の端を曲げる。

「ええ」

 苑緒は怯まずに頷く。

「実は貴女に協力して貰いたい事があるのよ。それをやってくれるのなら、貴女のお友達を助けるの――手伝ってもいいわよ?」

 自分達で蓬子を攫っておいてぬけぬけといい加減な事を言う。苑緒は怒りを覚えたが、一方で今の発言は有用だった。


――苑緒に協力して貰いたい事がある。


 これは、本当である。理由は分からないが、苑緒は雲雀にとって必要な存在であるらしい。手伝う云々は勿論出鱈目だが、この事実はもしかしたら利用できるかもしれない。

 ならばここは追求するべきだ。


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