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帝都の歩き方  作者: 初瀬灯
第一部 帝都の歩き方
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39 行方不明者

「ええ、その通りです。出来る事なら、私は花房さん達に助けて貰いたいと思っているのですよ。私もずっと一人でやってきたのですが、恥ずかしながらあまり上手くいっていないのです。このままでは取り返しのつかない事になります」


「助けて欲しい、だと?」


 思わぬ言葉に、明神と花房は目を丸くした。


「上手く行ってないって言いますけど、環さんは何か凄い能力があるって言っていませんでしたっけ? 因果が見えるとか何とか。あれを使えば何でも思うがままに出来るのではないですか?」


 思った事をそのまま口にしたら、環は苦笑した。


「あれはそんな万能なものではないのですよ。まず見られる因果は限られている上に、いつ何が見えるか私にも分かりません。私にとって都合のいい因果がいつも見えたら万能なのでしょうけど、実際はそういうわけではないですから」


「なるほど」


「それともう一つ、因果の因の部分の実行を妨害される等して失敗した場合、何もかもが不発に終わる事ですね。例えば昨夜の話で言いますと、私が叫ぶという原因で守衛さんが駆け付けるという結果が見えていたわけです。でももしあの時花房さんが、私が悲鳴を上げようとしている事に気がついて私の口を塞いでいたら、不発に終わります」


 それでも強力な事には変わりはないだろうが、確かに思ったよりは制限がある能力らしい。

 しかしそれにしても――


「いいのですか?」


「何がでしょう?」


「自分の能力を僕らに説明して――ですよ。別に話さなくても構わない事をわざわざ話してそれが全くの出鱈目、という事はないと思うので今の話はとりあえず信じますが――一つ目の条件も大変ですけど、特に二つ目は敵対者に知られるととても不味いのでは」


 環は静かに首肯する。


「そうですね。確かに教えて得になる事は何一つありません。それをあえて話したのは、花房さんに、私の味方になって欲しいからです」


「味方に――か。確かにお前が神津直を殺した犯人でないなら、交渉の余地はあるかもしれない。しかし、お前は大抵の事は自分で何とかしようとする人間に見える。それが昨日のあったばかりの、しかも一戦交えた相手にそれを求めるのか? 何かどうしてもそうしなければならない理由があるのか?」


 花房が問う。


「どうしても、です。助けが必要なのです。――奥山雲雀を、止めるために」


 そう言った環の目付きは、いつになく真剣だった。


「雲雀さんを――?」


 確かに彼女は裏の出身だと聞いていたが、止めなければならないとはどういう意味だ? 彼女が何かしようとしているのか。


 明神は花房を見る。花房はしばらく難しい顔をして黙っていたが、やがて口を開いた。


「駄目だな」


 冷たく言い切る。


「まだ俺達は肝心な事を聞いてない」


 そう、先程から環が時折口にしていた昨夜の仕事。その内容をまだ聞いていない。あの時、環は何をしていたのか。明神達を攻撃してまでどこへ向かおうとしていたのか。


「三条蓬子と織川苑緒――彼女らを何処へやった? 知らないとは、言わせないぜ」

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