表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帝都の歩き方  作者: 初瀬灯
第一部 帝都の歩き方
10/180

9 悪戯

 つまり、こういう事らしい。


 初めに明神と花房を招き入れたメイド服の少女が神津深雪で、客間にいた如何にもご令嬢然とした少女が実は奥山雲雀、と。


「ははは、これは一本取られましたね」


 花房は面白そうに言った。内心どう思っているのか明神には分からないが、とりあえず大人の対応である。


「ごめんなさい。私達、時々こうやって遊ぶのです。どうも雲雀の方が大人しくってお嬢様の様に見えるらしくって」


「ええ、雲雀さんの深雪嬢があまりにも様になっていて、すっかり騙されてしまいました」


 水を向けられた雲雀が赤面して俯く。そして「お茶をお入れしてきます」と言って逃げる様に部屋から出て行った。


「どうぞ、お掛けください」


 深雪に促されて、明神達はソファーに腰を下ろした。


「父の死の調査を依頼されたのですね」


「はい。それで出来ましたら協力していただければと思って、こちらに参った次第です」


 深雪は頷く。先程の猫の様に悪戯な表情は消えていた。


「私も、ずっと気に掛かっていました。何故、父があの様な――。調査をなさるというのならば勿論、探偵様に協力は惜しみませんわ」


「ありがとうございます」


「今の私があるのは、父のお陰ですもの。私が父に見出されなければ、きっと私は――あの舞台に上がる事無く生涯を終えていたことでしょう」


 そう言った深雪の瞳は、先程の雲雀以上に遠くを見ている様であった。


 神津深雪は父である神津直に才能を見出されてデビューする事になり、今に至るという話は探偵事務所で聞いていた。実の娘であるとはいえ、その才能に気づき、開花させる事は決して簡単な事ではないだろう。


「生前、直氏にどこか変わった様子はありませんでした?」


 深雪は憂鬱そうに首を振った。


「心当たりはありませんか?」


「――一つだけ」


 深雪は明瞭に、花房を見据えて言った。

 まるで、自分達を値踏みしている様な――。少なくとも明神はそう感じた。


「最近、私達の身の回りは変わった事ばかりが起こるのです」


「変わった事、ですか」


「何と言えば良いのでしょうか――間尺に合わない、不可思議な出来事です」


 ――叔父の死には、得体の知れない何かが関わっているのではないかと、そんな気がしてならないのです。


 依頼人、宮元正はそう言っていた。


「詳しく教えていただけますか?」


「――よろしいのですか?」


 深雪の瞳が、怪しく光った気がした。明神の背中に、何故だか冷たい物が走った。花房が黙って先を促す。


「影が――」


 ――影が見えるのです。


 神津深雪はそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ