鼻かけ聖騎士と取り巻きーズ
お久しぶりです。謎の高熱で体力を失っていました。
恐らくアリオなら死んでいました。
「んま〜!今日のも絶品だね!」
「いくらでも食べられますね!」
「ユキトはいつもでしょ、あ、これあげるよ」
「スーリアちゃん、こっちにお水置くね」
「サフィちゃんありがとうございます!」
美味しいご飯は緊張感なども解してしまうのか、サフィもさっきよりかは話せるくらいにまで仲良くなった。
女子だからなのかスーリアとはもう打ち解けたようで、サフィが魔法職であることもあってか魔法について話しているみたいだ。
「そういえば、ユキトは近距離得意なの?」
「はい。こちらではあまり出回っていませんが、刀というもので戦ってます」
「いいな〜…ボクあまり剣が得意じゃなくてさー」
サフィとスーリアの話題に触発されたのか、ガーネットは机に立てかけた剣を見て頬を膨らませる。
剣が得意じゃないということは、少なくとも剣士職ではないということ。
サフィが遠距離系ならば近距離職の方がバランスがいいと剣を取ったみたいだが、どうもあまり伸びがよくないらしい。
「教えることも出来ますが…まずはガーネットさんの適性を知った方がいいと俺は思います」
「ボクの適性?」
「はい。色んなものを使うことで自分にあった武器を探すんです」
「色んな武器って言ってもなー…」
多種多様の武器を試すのは容易ではない。
服みたいにお試しができるわけでもないし、少し試して分かるほど簡単でもない。
何より武器の調達にはお金がかかる。
「俺もユキトに賛成。色々試してみなよ、協力するからさ」
「いやいや悪いよ!愚痴こぼしといてなんだけど、みんな巻き込むのは嫌だし」
モニョモニョと言い淀むガーネットだが、興味はあるのかチラチラと迷うような伺うような目でこちらを見ている。
そんな子供っぽい様子に和んでいると、ズカズカと大きな音を立てながらやって来た人影は俺たちの座る席の横で止まった。
「うっわ…最悪」
「エラブル様を前に最悪とはなんだ貴様!」
「そうよ!さっさと挨拶したらどうなの!」
「やめたまえ。彼らが困ってしまうだろう」
突然ギャーギャーと食卓で騒ぎ始めた取り巻きと思われる数人を芝居がかった動きで止めるソイツがエラブルなのだろう。
正直食事中に茶番に付き合うつもりはないので無視を決め込むことにしよう。
話しかけられても、俺が囮になればいいか。
ユキトにはあらかじめ言葉で伝えられない時用のハンドサインで合図をし、ユキトはスーリアの手の平に文字を書いて伝言してもらう。
あ、このうさぎ肉のシチュー美味しい。
「やあ新人くん達、調子はどうだい?」
貴方が絡んでこなければ最高でした。
なんてことは言えないので、無難に返すのが吉だろう。
「別に変わりはないよ、そっちは食事にきたの?」
茶番の云々はスルーし、ガーネット達が口を開く前に短く返す。
取り巻き(仮)とガーネットの相性は悪そうだから、俺が答えるのが無難だ。
それに食堂に来たのに、席に着く前にこっちに来た理由も気になるしね。
「いや、食事は外でとっているよ。ここは貴族の来る場所ではないからね!」
「そうよ!エラブル様がこんなところで食事をとるわけないじゃない!」
「まあまあ、仔ウサギちゃん怒らないでくれ…彼らはここに来たばかりなのだから」
「エラブル様…!なんて寛大なお言葉……!」
いやここ王族と一部の貴族からのお布施によってかなり良い食事出てますが??
ちなみにギロさん達に聞いたらシーディアも結構な金額寄付していました。流石です父上。
建物も近代的だし、冒険者の卵達の生活も保証しているため離れに寮がある。
この異世界にしてはかなり進んでいる施設だ。
正直それを知らないあたり、貴族は貴族でも駄目な方の貴族かもしれない。
そんなことを考えていてじっと見ていたからか、エラブルはハッとわざとらしく何かに気付いた素振りをした。
「ああすまない。自己紹介がまだだったね!私はエラブル・ハッサン、ハッサン子爵家の者だ」
「へー」
知らへん。
お肉をもぐもぐしながら記憶を探るが心当たりはない。
というか子爵家ってシーディア家より爵位的に下じゃないですか。
ということはこの世界の王国的には端の方領、もっと言うと戦争とかそういうもので競う必要のない安全な土地の貴族だった気がする。
シーディア家は多くの武力を持つので、爵位は伯爵でも港を任されるほど。
何より貿易や武力で名を轟かせているシーディア家は、一部の侯爵や公爵にも負けない権力を持っているのだとドゥールが言っていた。
「『へー』とはなんだ!エラブル様が名乗ったのだからお前も名乗れ!」
「へーい。俺はアリオだよ。これでいい?」
「貴様なんだその態度は…!!」
何って、ヘーイって親しみを込めて挨拶しただけなんだけどな。
青筋を立てた取り巻き(確信)をまた宥めると、エラブルは俺の目の前にドンッと手を置いた。
「ところでアリオ君、こんな品もない女と関わっていたら君までお里が知れてしまうよ?」
「うっざ」
「相変わらず下品な女だな君は」
ギロリとエラブルのことを睨んだガーネットに、「怖い怖い」と半笑いのエラブル。
ソイツはすぐにガーネットから視線を逸らすと、俺に向かって今度は手を差し出した。
「私のパーティーに入ったら三人まとめて面倒見てあげようじゃないか!まあ、私は人気者だから、君らの取り分は少なくなってしまうかもしれないがね」
つまりは俺らが貢献してもお前とお前の取り巻きに報酬奪われるってことですよね。
分かりやすい詐欺!誰もこんなのに乗らないでしょ。
と思ったのだが、取り巻きの一人はふふんと鼻を鳴らすと偉そうに胸を反らせた。
「エラブル様は聖騎士の祝福を授かっていらっしゃる!お前ら愚民どもとは格が違うのだよ!」
ついに愚民って言ったよコイツ。
でもどうやらその言葉に嘘はないらしく、試しに使った透視くんによるステータスには、しっかりと聖騎士と書かれている。
聖騎士は過去に勇者パーティーに入っていたとされる祝福なので高嶺の花とされているが、こんなのが聖騎士になったら世も末かもしれない。
「へーそりゃすごいね」
「だろう?貴族であり聖騎士、そんなエラブル様がお前らをパーティーに入れてやると言っているのだ!」
「お断りしまーす」
「そうだろうそうだろう。ありがたいだろ……は?」
「だーかーらーお断りしますって。俺はもうかけがえのない仲間がいるから間に合ってるよ」
ポカンと口を開けた取り巻き。
だって俺たちにメリットないし。すでに奇跡的に目指すものが同じな仲間と出会えているのだ。
それに俺達にとって祝福は一番どうでもいいものだからね。
「アリオ君、今なら聞かなかったことにしようじゃないか」
「お断りします」
「クッ…では黙っている二人はどうなんだい?二人はパーティーに」
「俺もお断りします」
「私はアリオさん達としか一緒に組むつもりはないので」
三人連続玉砕したエラブルは、グギギと奥歯を噛むとバサリと邪魔そうなマントを翻す。
「今に後悔しろ愚民…お前らなぞ簡単に消せるからな」
「どーぞご勝手に。お前こそ足元掬われるなよ?」
ドタバタと去っていったエラブル一行に溜息を吐く。
せっかくの食事タイムが台無しになってしまったなと思っていると、ずっと様子を伺っていたサフィが、おずおずと口を開いた。
「あの…三人とも良かったの…?」
「良かったって何が?」
「あの人貴族だから…絶対何かしてくるよ」
なるほど心配して言ってくれたのか。
でも正直怖くはない。だって俺らにはバーサーカーユキトがいるし、お家関係でも問題ない。
勿論この一件は今日くらいに来るであろう、兄であるカリスの手紙にしっかり書いて返信するつもりだ。
あれを野放しにする子爵家怖すぎるし、仮に子爵家も駄目そうなら領民が心配だ。
「なんとかなるって!というかガーネットが馬鹿にされた時点で俺の中じゃアレはない!」
「そ、そうなんだ…へへっ、アリオありがとね」
親切に案内をしてくれた二人と、食事中に押しかけて愚民と言って去る奴ら、どちらに着くかと言われたら前者だ。
「じゃあみなさん、冷めちゃいましたけど食事の続きにしましょうか」
「賛成です!」
「ぷっはは、ユキト元気になりすぎでしょ」
ガーネットが笑い声を上げたのをきっかけに、さっきまでの空気は無くなっていく。
そうして俺達は、寮に帰るまでの間食事を楽しんだのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
面白いと感じたらいいねしてくれると嬉しいです!
感想等も受け付けております。




