俺とギルマスと提案
「いやー凄いもんだな少年」
超省エネで勝負を終わらせた俺が駆け寄ってきたスーリア達と話していると、パチパチと手を叩きながら小綺麗なおっちゃんがニコニコと近付いてきた。
誰なんだろうと首を傾げて見上げれば、おっちゃんは金色のバッジを俺の目の前に出した。
「ギルドマスターのギロ・ハウンズだ。お前ら面白い戦い方するんだな」
「は、はぁ…ってハウンズ?!」
ミューロ先生達と同じ名字じゃないかと先生達を見れば、ギルドマスターの方が「話してなかったのかよ!」驚いたような声を上げた。
何を話してないのか分からないが、先生達には呆れの色が浮かんでいる。
「その話はここでは無い所で…人が多すぎます」
「そうですよぉ!空気読めって感じですぅ!」
「分かった分かった、悪かったって!まとめて俺の部屋に来い」
ぼりぼりとバツが悪そうに頭を掻いたギロさんは、そう言うとギルドマスターの部屋へと案内してくれた。
「全く…貴方には秘密という概念はないのでしょうか」
「そうですぅ!ギロのことも後から説明するつもりだったんですぅ!!」
「だとしてもよ、この少年はシーディア家の坊ちゃんだろ?俺達のことはさっさと耳に入れといた方が得だろ」
「あのー…まどろっこしいの嫌いなので聞きますけど、先生達の関係は?」
何の要件なのか分からないので、さっさと話してほしいですはい。
スーリアも反応に困っているし、俺達には腹ペコ大魔神ユキトが待っている。
様子を見たいから早く帰りたいのだ。
「俺らはな、簡単に言えば同じ名字を持つ他人だ」
「ほーん?まぁ顔とか全然似てないですもんね。先生達の方がイケメンですし、可愛いですし」
「少年結構ズバズバ言うな…」
ギロさんもお酒の似合う渋めのおっちゃんだからモテそうだけど、ミューロ先生は乙女ゲームとかの正統派のイケメンといった感じだ。
何より二人のどちらにも髪色が似ていないしね。
「私達はぁ、アリオくんのお父様に拾われてぇ、その執事さんに鍛えられた裏部隊なんですよぉ」
「父上の執事…ってドゥール!?!」
俺の頭にはイケオジ執事の顔が浮かぶ。
いや、確かに二人は父上に拾われたーみたいなこと言っていたけど、裏部隊ってどういうこと!?
俺の頭によぎるのはドゥールのステータスにあった祝福、暗殺者の三文字。
「ま、まさか…暗殺とかそういうやつ…?」
「半分アタリで半分ハズレですぅ」
「暗殺はやむを得ない物以外は立派な犯罪ですからね」
「あの…では先生方がやっているのは違法的なことではない、ということですか?」
先生の言う意味が分からず首を傾げれば、スーリアが俺の気になることを繋いでくれる。
そして三人はその問いに少し考えると、代表してというようにギロさんが口を開いた。
「ま、そこの少年の父親とドゥールの爺さんが絡んでるから違法なことはしないな」
「じゃあ裏部隊ってのは?」
「魔物関連の出現調査や領民の意見調査が主だな。あとは少年らみたいな奴らの手助けだ」
「手助け?」
「お前らは他言出来ない理由で旅に出る道を選んだみたいだが、それが出来ない奴もいる。ようは神に嫌われた奴らの保護みたいなもんだな」
「神に嫌われた奴ら……」
そう言われればそうかもしれない。
俺は今まで勝手に「俺のこと絶対に嫌いだろ!?!」とか皮肉って思っていたけど、望んでいない物を勝手に与えられているわけだし…
中にはそれこそ人生を左右された人もいるだろうし、俺達みたいな人はこの世界の神に嫌われているのかもしれない。
そろって考え込んでしまった俺達を見て何を思ったのか、ミューロ先生とメロー先生はギロさんのことをベシベシと叩きだす。
そんな二人に何かを察したギロさんは俺らに謝り始めた。
「悪かった!変な言い方して悪かったって!」
「デリカシーが皆無ですぅっ!!」
「相変わらず子供に対して言い方がなってませんよね」
「二人とも気を悪くしないでくださいねぇ?ギロは私達が叩いておきますからぁ!」
どうやら神に嫌われたというワードに凹んだと思われていたらしいのだが、それにしても二人のギルドマスターに対する扱いが雑である。
干された布団なのかなってくらい二人に左右からバシバシ叩かれている。
「あ、あの!私は気にしていませんから!」
「スーリアに同じく!だから先生達勘弁してあげて」
俺達がそう言えば、メロー先生は「アリオくん達がそう言うならぁ…」と渋々叩くのを止める。
ミューロ先生はと言うと「あまり子供に気を使わせないでくださいね」と、最後に一発殴っていた。
ギロさんは殴られた腰を痛そうに摩ると、改めて俺達の方を見た。
「ま、まぁそんなわけでな。各地にハウンズって名字の奴らが散ってっから、困った時には助けになると思うぞ」
「知っての通り私達は研究員をしていて、ギロはギルドマスターをしていますが、各々冒険者や一般兵などに紛れていますので見つけにくいかもしれませんがね」
「だからその為に〜私とお兄様からプレゼントですぅ!」
そう言って渡されたのはブレスレット。
キラキラと輝くそれには一つだけ紋の刻まれた宝石のような石がついている。
「ハウンズの紋の入ったミスリルをブレスレットに加工したものです」
「ミスリル!?」
「ま、仲間だっていう証みたいなもんだな。クズ石加工してるだけだからそんなに高いもんじゃないぞ?」
あっけらかんと言われた為、それ以上は突っ込むことはしない。
だが紋が入っている以上悪用などはしないという意味を込めてお礼を言う。
これを持っていればハウンズという姓を持つ人達には通じるらしく、お守り代わりにつけておいた方がいいと言われた。
「あとでユキトくんのも渡してあげてくださいねぇ〜」
「アリオくん達なら渡していいと私達で判断したので…あぁ、それをつけていたら街でハウンズに声を掛けられるかもしれないので、その時には相手をしてやって下さい」
「分かりました」
「手首にそれがついてりゃ大抵ハウンズだからな」
なんだか先生達の仲間になったようでちょっとテンション上がるなこれ。
ん?てことはこれをつけている人はハウンズ関係者ってことは、逆を言えばシーディア家の関係者だよね。
これは変なこと出来ないなと俺は内心冷や汗をかく。
各地にハウンズがいるなら、各地にシーディア家に通じるものがいるということだ。
目立つことをして迷惑はかけられない。
そんなことを考えている俺のことは梅雨知らず、ギロさんは「そうだそうだ忘れてた」と呟くと、俺らの前に一枚の紙を差し出した。
「少年、お前らに一個頼みがある」
「なんです?」
差し出された紙を手に取り、スーリアにも聞かせる為に読み上げる。
「…冒険者育成学校?」
「そうだ。少年達にはこの学校に入って手本になってもらいたい」
………
……………
…………………はい??
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