勝負は秒でつけましょう
「おーおー、明らかに坊ちゃんって感じだし、ぜってぇ弱いってコイツ!」
「女に守られてんだろ?wお前の祝福なんて大したことなさそうだしなぁ!」
「おっ、良いこと思いついたわ。お前のパーティーのあの子、くれんだったら手加減してやっても良いぜ?」
うっっっっっっっぜぇー……
何コイツ。
俺と向き合った瞬間にめっちゃ喋る。暇なの?
良いことって何?何も良くないですが?
確かにスーリアとユキトに守ってもらっていますよ?
俺の祝福死ぬことでしか効果発揮しませんよ?
それらは良いとしてスーリアを寄越せとな?
物じゃないんだから良いも何もないのが分からないのだろうか。
「パス。スーリア物じゃないし、そういう言い方品も何もないよ」
「はぁー?オメェが口出すことじゃねぇんだよ!だって負け犬から奪いとんのは当たり前だろ?」
「クソガキじゃねぇか!!!」
おっといかんいかん。あまりのクソガキムーブに叫んでしまった。
俺は大人の余裕というものを持っている。それをここで見せずにどこで見せるというのか。
落ち着けアリオ。クールになれ。相手はただの子供なのだ。
うんうん。そう思えば落ち着いてきたぞ。
今なら冷静に受け答えでk
「わりと顔可愛いし?お前には勿体ねぇから貰ってやるって言ってんの!」
「やっぱりクソガキじゃねぇか!!!」
もうコイツ駄目だわ!冷静になれるとかほざいていた三秒前の俺残念だったな!
俺には勿体無いってのは認めるけど、発言がゴミ!!!
コイツ倒そう!はーい、バ○スバ○ス!!
目を抑えて悶えて落ちてしまえ!!
ん?落ちる?
「あ、そうか」
「まぁ?オレ様が勝ってあの子が惚れちまう可能性g」
「そんな未来ないからよろしく」
「はぁ?」
剣を抜いてイキっていたガキンチョを手で制す。
ゴタゴタ言ってくれていたおかげで、俺が死なずに勝てそうな案が浮かんだのだ。
俺は自分の背後に意識を向けると、スキル大喰らいを多重詠唱で複数回発動する。
そうしてバレないように少し前に出て、かつ俺は相手を小馬鹿にしたような笑みを浮かべる。
「いやー…ごめんね?お前は勝てないよ、俺には」
「は?何言ってんだオメェ」
「だって碌な装備じゃないじゃないか!剣だって手入れしてないんじゃない?少し欠けてるじゃん」
まあ碌な装備じゃないのは俺も同じなんですけどね。
自慢じゃないけど前衛どころか後衛も出来ないのでね。装備はむしろ逃げ回れるくらいの最低限がいいのだ。
勿論スーリアとユキトは平常時の戦闘だとしっかりと防具を着けている。
提供はシーディア家の武器庫です。
俺の拙い煽りでも効果はあるようで、ガキンチョはさっきよりも顔を赤くして怒りを露わにしている。
でも、俺の全身をゆっくり見ると、途端に俺に指をさして笑った。
「それを言うならそっちの方が防具の一つもつけてねぇじゃん!買う金でも無かったのか?」
ケラケラと笑うソイツに対して、俺は爽やかに笑う。兄直伝のイケメンスマイルだ。
と言ってもイケメン以外がやったら腹が立つやつなのだが。
「だって君と戦うのに防具とか必要ないもん」
だってつけてもつけなくても、俺はワンパンで死んでしまうからね!
俺の一言に、ガキンチョは嫌な笑いを止める。
本当のことを言っているのだが、その意味は相手に別の形で伝わっていく。
きっと彼は、お前が弱いから使う必要がないのだと、そう思っているだろう。
その証拠にガキンチョはどんどん顔を怒りに歪め、こちらを睨みつけている。
正直ビビるが、なんとかなる。
むしろどんどん怒って、怒りに身を任せてくれれば都合がいい。
「お前殺すわ!不慮の事故ならいいもんなぁ!?」
「へー、やってみたら?」
俺を殺すのはアリを潰すより簡単なんだけど、それは言ってやらない。
ご丁寧に俺目掛けてまっすぐ突っ込んできたソイツ。
ミューロ先生達が言う通り、彼らはあまり冒険者に向かないかもしれない。
向かってきた切先。それが俺を貫く寸前、俺は立っていた場所から横に転がった。
途端に姿を消すガキンチョ——セマーカは何が起こったか分からなかっただろう。
俺は衣服を軽く叩くと、俺の立っていた場所の一歩後ろに空いた穴を覗き込んだ。
「おーい。生きてる?」
穴の中には顔を抑えるセマーカが見える。
顔面から落ちた彼は鼻血を流しながら恨めしそうにこちらを見上げる。
しかし、大喰らいの多重詠唱で掘った穴は深く、彼の身長では出る事はできないだろうからもう勝負は決してしまった。
「きゃー!アリオくんの勝ちですぅ!!」
しんと静まった会場の中、メロー先生が歓声を上げると、やっと勝敗を告げる鐘が鳴ったのだった。
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