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閑話・夏の日のアリオ達

毎日あっっっっっっついですね

「暑いですね……」

「はい…森の木々がないとこんなに暑いんですね…」


 とある日中の輝きまくる太陽の下。

シグマ王国もとより、世界は所謂夏になった。

俺としては東京のビルに囲まれたあの中に比べたらマシかなくらいなんだけど、森育ちと着物姿の二人には茹るくらいに暑いらしい。

二人とも、常に衣服は着崩さずに着ているし、防具も鎧ほど屈強なものではないものの、つければそこそこ暑い。

そんな中少しでも暑さを凌ごうと、二人とも普段とは髪型を変えている。

スーリアは髪を後ろで束ね、ユキトは男にしては長い髪をいつもよりも上で束ねている。

それでも暑いものは暑いのか、二人はいつもよりもぐったりしている。

何より、暑さでスーリアはいつもよりも食事量が少ない。

ユキトもユキトで時々ふらついている。


(これは前世知識を持つ俺がなんとかせんとですな!)


 このままでは、夏バテ熱中症待ったなしだ。

前世でもこの二つは脅威だったし、そういう知識が存在しないこの世界ではもっと危険視しなければならないものだ。

俺は前世のあれこれを思い出しながら二人に声をかける。

まず変えるのは服装からだろう。

ストレージくんから真新しいシャツを二枚と、帽子、そして清潔な布を数枚取り出す。

少し木陰になっているところで二人にそれらを渡す。


「と言うわけで、暑いだろうからそのシャツ使ってよ」

「アリオさんありがとうございます」

「いいよいいよ。あ、その布一枚は取っておいてね」


 それぞれ渡した布は二枚。

汗を拭く用と、体を冷やす用だ。


「体を冷やす?」

「そう。でもこれはスーリアに協力してもらうんだけど…」

「勿論!私は大丈夫ですよ」


 汗も拭いて着替えたからか、さっきよりもさっぱりとした表情でスーリアが笑う。

なんか機嫌が良さそうだし、元気ならばと協力してもらう。

スーリアには小さめの氷の塊を生成してもらう。それを布で包んでしまえば、簡易保冷剤の完成である。


「自分が氷を作れるってすっかり忘れていました…」

「暑くてボーッとしてたんだから仕方ないよ。じゃあそれを首とか手首に当てておいてね」

「アリオくん…これ仄かに冷たくて気持ちいいです……」


 これも前世の俺の知識である。

首と名のつく部位を冷やすのは体のクールダウンに非常に有効だ。

氷自体は貴重だし、魔法が使えても氷や水に適正がないとそもそも作れない。

俺は言わずもがな、ユキトは故郷が魔法に縁遠いからと魔法を使うのには消極的だから、スーリアさまさまである。


「それは良かった!それでねスーリア、もう一個手伝ってほしいものがあるんだけど…」


 氷を得てまた元気を取り戻した二人にホッとしつつ、暑い日に最も食べたくなるアレを作ろうと俺はニヤリと笑う。

スーリアの氷魔法、そして旅に出る前に準備して持ってきていたシーディア領産の塩とミルク、それらがあれば無敵である。

不的な笑みを浮かべる俺に二人は少しギョッとしていたが、そんなことも気にならないくらいに俺は作業に没頭したのだった。


***


「二人ともご飯出来たよー」

「「はーい!」」


 結局あのまま休んでいたところを野営地にした俺達。

二人ともバテていたし、スーリアには色々手伝ってもらっていたから今日は俺がご飯当番をかって出た。


「なんだか良い匂いがします」

「ふっふっふ…まぁ食べてみてよ」


 俺が促すと、ユキトは嬉しそうに、スーリアは恐る恐ると言った感じでパクリと口に入れる。

すると暫く固まった後、二人は勢いよくこちらを向いた。


「「美味しい!!!」」

「だろー?」


 得意げに笑えば、また勢いよく頷く二人。

俺が作ったのは猪肉の生姜焼き。といっても生姜焼き風だ。

シーディア領で引き篭もっていた頃、食に対して謎の拘りがあったおれはふらりと市場に行ってみた。

そうしたらなんと見つけてしまったのだ。生姜によく似た何かを…!

ジージャという見た目と匂いはまんま生姜のそれは、用途不明としてほとんどタダで叩き売りされていたものだった。

試しに買ってみた所、生姜でした。これ幸いと父上や兄に伝えると、領地で大ヒット。

体を温める効果もあったので、冬場にめちゃくちゃ重宝されている。

 そして肝心の醤油。これは桜華国がシグマ王国と貿易している物の中にあったので、父上におねだりしちゃいました。

まぁ父上も目をつけていたものだったので、こちらはスムーズに手に入りました!

旅に出る時にもこれらは充実させておきたいなと思っていたら、ストレージさんのおかげで日持ち云々の問題も解決。

なので異世界でこの生姜焼きが食べられるのは父上や桜華国、そしてストレージさんのおかげである。

俺も自分の生姜焼きを一口頬張る。

新鮮な猪肉の上質な脂が舌の上で溶け、生姜もどきと醤油の香ばしさがなんとも食欲をそそる。あー…ご飯ほしい……

ユキトも同じことを思っているのか、生姜焼きを味わいながら難しい顔をしている。


「ユキトこれな、ご飯があるともっと美味しいよ」

「ですよね!!」

「えっ、これ以上もっと美味しくなるんですか?」

「ご飯と生姜焼きの相性は抜群だからね。お米を手に入れたら二人に食べさせてあげるね」


 そう言うと、パッと嬉しそうにする二人に顔が自然と綻ぶ。

いいぞ若者達。君らのために沢山ご飯を作るからたんとお食べ。


「さてさてお待ちかねのデザートです!」


 スーリアが生姜焼きをペロリと完食したのを確認して、俺はストレージからあるものを取り出す。

あるものとはそう、みんな大好きアイスクリームである。


「冷たくてとても美味しいです!!」

「甘くて幸せれふ……」

「そうだろうそうだろう」


 一口食べたらあら不思議。みんなアイスの虜である。

スーリアに至っては相当気に入ったのか、ふにゃっと顔がとろけている。


「まだあるから食べたかったら言ってね」


 ストレージさんの中は時間が止まる。アイスの保存にはもってこいだ。

なんならもっと作っておいて保存しておくのもいいな。


「でもアリオさん、さっきの料理もそうですけど…この食べ物も相当高価なものなんじゃ……」

「ん?そんなことないよ?」


 生姜焼きの猪はユキトが狩ってくれたものだし、ジージャは今こそ人気が出て少し値は上がったがそれでもまだ安い。

醤油は旅に出る時に強請ったものなので、父上からの贈り物。

アイスに使ったミルクは、旅先でも身長を伸ばしたいという俺の足掻きによる持ち込みだし、砂糖は母上からの贈り物である。

氷をもっと冷やすための塩はシーディア領の特産品なので、我が家では常備品だし。

ちなみになぜ両親が調味料をくれたかというと、旅先でお金に困ってもそれが売れるからなのだとか。

つまりは醤油と砂糖は結構値が張るものなのだが、贈り物なのでノーカンということで。


「それに大変な部分の氷はスーリアが出してくれたから何も問題なし!というか二人がいなかったらこの料理は作れてないからね」


 というわけで食べて食べてと再びアイスを取り出す。

値段の勘定をしていたがアイスの魔力には勝てなかったのか、二人はまた嬉しそうに頬張り始める。

それを見ながら俺も少し溶けたアイスに舌鼓をうった。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

面白いと感じたらいいねしてくれると嬉しいです!

感想等も受け付けております。

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