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ファンといざこざはセットらしい

「——よし、やっと書けたぞー」


 一通目の手紙に対して返事が返せなかった謝罪と、警告へのお礼。

そしてカヌゥでの出来事と二人の仲間のこと、ミューロ先生達のことを書いていたら結構な文章量になってしまった。

どれぐらいの頻度で予知をしているか分からないから、仲間のこととかは詳しく書いた。

カヌゥは女神信仰が強いってことももれなくだ。


…ちなみに、それでどう送ればいいんだろうと考えていたら、手紙はあっという間に鳥へと姿を変え、窓の方へと飛び立った。

急いで窓を開ければ、鳥は颯爽と羽ばたいていて、唖然とする俺を置いて去って行った。


「アリオくん、王都に観光にでも行きませんか?」

「よければ案内しますよぉ!」

「本当ですか?!あ、でも研究は?」

「便箋を考えるのはまた今度。研究はいつでも出来ますからね」


 鳥を見送った俺に、凄く良いタイミングで話しかけてきた二人。

「ここ最近まともに外に出ていませんからね」とも言った彼らに、それならとお言葉に甘えることにする。

俺はさっと周りを片付けると、スーリア達を呼ぶために部屋に向かった。

流石にもう激マズエナドリから立ち直ったかなと、ノックと共に扉を開ける。

だが、ユキトは未だに気怠げにベッドに横になっていて、スーリアはすぐ近くに置いてある椅子に心配そうに座っていた。


「ユキト大丈夫…?」

「……すみません…まだ駄目そうです…」

「え。もしかしてなんか病気とか??」


 副作用とかあっただろうかと思考を巡らせるが、材料は人体に影響のないものだったし、食べ合わせも問題ないはずだ。

激マズになったのは煮込む時間とかによるものだったしな…


「それが…ユキトさん、どうやら魔力過多になってしまったみたいで……」


 見かねて補足してくれたスーリアの言葉に、俺は首を傾げる。

魔力過多。言葉だけだと、単純に魔力が許容量を超えたって感じだけど、そんな解釈でいいのだろうか?


「…元々、俺は魔力はあまり使いませんから、今回魔法を使って…更にそれで魔力回復薬を飲んだので、身体が驚いてしまったみたいで……」

「おっとー…そこまで配慮出来てなかったー……ユキトごめん……」


 謝る俺に、ユキトは首を振る。


「いえ…俺も初めてなったのでいい体験でした」

「それに、魔力過多っていうのは中々なるものではないですし、私達が気付けなかったのも無理はないんです…」

「そうなんだ…でもユキトが駄目なら王都観光は延期しようか」


 三人じゃないと面白くないしと思った俺に、同意するようにスーリアは頷くが、逆にユキトは先程よりも強くそれを否定した。


「二人は行ってきてください。俺が行ってまた粗相があったら二人に迷惑かけますし……」

「ユキト…」

「それに、俺が好きそうなご飯処を見つけてくれると嬉しいです!」

「それが本音か…!!」


 とまあこんな感じで、ユキトを休ませたまま俺とスーリアはミューロ先生達と一緒に王都観光に出た。

先生達にも事情を話し、飲食店をメインに回っていく。勿論食べることもメモすることも忘れない。


「うまっ!これは絶対ユキトが喜ぶやつだ!」

「こっちのも美味しいです!ユキトさんにも買って帰りましょう!」

「二人とも慌てて食べなくても大丈夫ですよぉ〜!ほら!こっちは私のオススメですぅ!」

「わ!ありがとうございます!」


 差し出されたドーナツを半分にすると、スーリアに渡す。

俺達はユキトみたいなブラックホール持ちじゃないから、何を食べるのも半分にして沢山食べれるようにしている。

そうすればその分ユキトに情報を持って帰れるからね。


「はぁ〜…とっても仲良しさんで可愛いですぅ…」

「衛兵に引き渡したほうがいいですかね?」

「見てるだけですぅ!見守って、癒されているだけなんですぅ!!」

「顔を蕩けさせるくらい見つめる人がどこにいますか。あ、お二人とも、この飲み物もオススメですよ」


 流石に飲み物を分けるのはと気を遣ってくれたのか、ミューロ先生から二人分の飲み物が差し出される。

ありがたく受け取り飲もうとすると、メロー先生が待ったをかける。

何かと思っていると、カランという音と共に、コップの中に氷が浮かぶ。


「これでも〜っと美味しく飲めますよぉ!」

「凄いです…!どうやったらこんな正確な制御が出来るんですか?」

「はわ…そんなキラキラな目で見られたら教えるしかないですぅ〜!!」


 単純に冷えたジュース美味しいと思って飲んでいる俺とは違い、スーリアは魔法の制御に興味を持ったのか、メロー先生に色々と質問している。


「メロー先生めっちゃ嬉しそうですね」

「メローは向上心の高い子が好きですからね」


 二人でメロー先生達を見ながらジュースを飲んでいると、ふいに目の前に影がかかる。

何かと思って視線を上げれば、十三、四歳くらいだろうか、背中に剣を背負ったツンツン髪の少年と、大きめの帽子にふわっとしたスカートの少女が立っていた。


「あ、あの!ミューロ・ハウンズ先生とメロー・ハウンズ先生ですか…!?」

「そうですが、貴方達は?」


 少し警戒しているのか、俺のことを軽く引き寄せながらミューロ先生はいつも通りの声色で応える。メロー先生の方を見ると、メロー先生もスーリアのことをガードするように抱き締めていた。


「あの…!私達、お二人のファンで!この前のスタンピードでも助けていただいて…!!」

「それで、俺達あれから考えて、弟子になりたいと思って探してたんです!」


 わぁお。弟子入りの志願でしたか。本当にあるんだなこういうの。

やっぱり二人はこういう場面で弟子をとったりするのだろうかと見上げれば、想像に反して困ったような顔のミューロ先生とメロー先生が目に入った。


「お気持ちは嬉しいですが、生憎と弟子は間に合っていますので…ね?メロー」

「そうですねぇ…今回はご縁がなかったということでお願いしますぅ」


 迷いのなかった断りの言葉。

あのメロー先生ですら顔に愛想笑いを浮かべている。

二人組はそんな先生達の様子に気付かないのか、なんでどうしてと声を荒げ始める。

しかしミューロ先生達はそれにも何処か冷ややかで、俺にだけ聞こえる声量で「そういうところだ」とこぼした。


「まさか、間に合ってるってこの子供のことじゃないですよね…!?!」

「んん!?」


 突然俺のことを指差したツンツン髪に、魔女っ子の方は「嘘でしょ!?」と否定する。


「こんな弱そうなのが弟子なわけないわ!」

「でもコイツとそっちの女の子以外に周りにいねぇだろ?!」


 今はプライベートで弟子を連れていないとか考えないのかなこの二人。

というか初対面に弱そうでコイツ呼びですかー。

ドゥールがいたらブチギレていそうだなー…

まあ実際俺は弟子ではないし、中身はお・と・ななので?

心は広くがモットーの大人なのでー??

口がピクピクするだけで許してあげますけどぉ???

 未だギャンギャンと言い争う、礼儀知らずで、被る気のない猫を捨てたような二人に引き攣った笑みを浮かべていると、その二人組はまた俺達…というか俺に対して人差し指を向ける。


「おいお前!!俺と戦って、俺が勝ったら先生から離れて一生この王都に近付くんじゃねぇぞ!!」

「は?」

「じゃあそっちの子は私と戦って?条件は全く同じってことでヨロシク♡」

「…はい?」


なんだコイツら。

この二人は王様か何かだろうか。そんな権利もないのに、全くもって意味が分からない。

俺達にとってメリット一つもないし、受ける意味がない。

スーリアも同じことを思っているのか、見たこともない顔で明らかに幻滅している。

謎にドヤ顔を決めてくる二人に大きい溜め息を一つ吐くと、丁重にお断りしよう口を開く。

が、その前にミューロ先生が前に歩み出た。


「いいでしょう。私達の弟子がどれだけ優秀なのか、その身を持って味わってください」

「ミューロ先生!?!」


 てっきり断ってくれるものかとばかり思っていた俺の耳に、全く違う回答が転がり込む。

物申そうとすると、後ろからメロー先生に抱き締められる。

ふわふわが当たって気持ちい…じゃなくて、チラリと見たその顔は笑っていない。


「大丈夫ですよぉ?決闘で相手の首がうっかり無くなってもぉ、私達がちゃあんと無実の証言をしますからぁ」

「怖い怖い怖い…!!」


 真顔で言うことじゃない。

大体俺にそんなこと出来ません。

慌てる俺とスーリアをよそに、話はノンストップでまとまっていく。

あれよあれよとギルドの地下にある決闘場、もとより訓練・試験部屋に連れてかれ、周りに話を聞いた野次馬が集まっていく。

完全に逃げ道を塞がれた俺とスーリアの脳内は恐らく一緒だろう。


(待ってよぉ…今バーサーカーいないんだからぁ!!)


 今ベッドで寝ているだろうユキトのことが、無性に恋しくなった。


アリオ・スーリア(ユキト(さん)がいれば……!!!)

ユキト(はっ…!今なんか凄くお腹がすいた気がします!)

アリオ(やっぱり寝てろユキト)


ここまで読んでいただきありがとうございました。

面白いと感じたらいいねしてくれると嬉しいです!

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