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王都と扉のない研究塔

「やっと着いたーーーー!」

「お疲れ様でした。無事に着けて良かったですね」

「アリオさんのお兄さんに感謝ですね!」


 兄さんのくれた地図を見ながら、休憩を挟みながらもなんとか王都に辿り着いた。

ギルドカードを見せて関所を通れば、そこは花の都とも呼ばれる城下町だ。

シグマ王国の王都シグールには、王宮は勿論のこと、ギルドの本部や教会の総本山がある。

周りをぐるりと囲む壁には歴代の聖女の祈りが込められているとかで、野生動物はおろか魔物の侵入も防ぐのだとか。

あ、そうそう。馬は関所で預かってもらえるとのことで、今はお留守番させている。


「そういえば、アリオくんの先生がいらっしゃるんでしたっけ」

「正式に言えば俺の兄さんの先生ね!魔法と剣の先生なんだ」

「なんかアリオさんのお家ってお貴族様みたいですね」

「確かにそうですね。アリオくん自体も所作が綺麗ですし、服も質がいいですし」

「そ、そんなことないよーやだなー」


 そういえばこの二人には俺の実家のこと言ってなかったわ。

スーリアの大切な家族であるチュナさんには話したけど、なんか自分から貴族ですって宣言するの恥ずかし過ぎて嫌なんだよな。

まぁ、時がくれば話すってことで、今はいいか!


「ところで研究室ってどこなんだろ?」


 研究室においでとは言われたが、詳しい場所は聞いていない。

研究室というくらいだし、それっぽい建物があってもおかしくはないはずなんだけど…


「ギルドなら街のことに詳しいんじゃないでしょうか」

「確かにそうですね!行ってみましょうアリオさん!」


 俺の手を握って笑ったスーリアに癒されながら、ギルドを目指して歩き出す。

いつの間にか二人に挟まれる形で街を見ていると、至る所に大道芸人や吟遊詩人がいるのに気付く。

三人でそういった人達の芸を覗いていると、周りの屋台からは大盤振る舞いといったように食べ物やら飲み物やらを渡された。

明らかに子供な俺達を見て何を思ったのか、それらの全てがタダだった。

活気のある街って凄いなぁ…と、俺は気付かれないように食べきれない分の食べ物はストレージに仕舞っていく。

ちなみに俺の左隣では、スーリアが小動物のように一生懸命に口をもぐもぐと動かしている。

ゆっくり食べなと言いながら右を向くと、ユキトの手からは山ほどあった食べ物が全て消えていた。

君はブラックホールかな?


「あ、あそこではないですか?」


 ユキトの指差した方向を見れば、ゴツメの武器を担いだ厳つい戦士や、大きめの帽子を被ったいかにも魔法使いですといったような出立ちの人が大勢いる。

ここが異世界でかつギルド前じゃなかったら、軽いコスプレイベントみたいだ。


「カヌゥのものより大きいですね…」

「ウォールのも結構大きい建物だと思ってたけど、流石は本部……」

「人も沢山いて賑わってますね」


 広い建物に溢れる人。

俺達は人波に流されないように手を繋ぐと、ギルドの受付を目指して歩き出す。

大人が多く見えるけど、そんな彼らは俺達のことを見ると強張った顔を綻ばせる。

中には怪我をしている人もいるが、パーティー関係なく治療しているように見えた。

そんな中空いている窓口を探していると、見慣れた後ろ姿を見つけて俺は思わず声を上げる。


「ミューロ先生!」

「おや、アリオくん。王都にいらしていたんですね」


 わざわざ俺に綺麗な礼をしてくれたミューロ先生。

なんで冒険者ギルドにいるのかと聞いてみれば、研究費用を得るのに冒険者業が丁度いいらしく、運動がてら依頼をこなしているんだとか。


「需要の把握も出来ますし、利点の方が多いのですよ」

「なるほど…」

「ところでアリオくん。手を繋いでらっしゃるお二人は…」

「俺の仲間です!」


 繋いだ手をそのままに両手を上げる。


「王都には依頼を受けに?」

「いえ!ノープランです!!なんならミューロ先生達に会いに来ました!」


 そう言えば、「なるほど、それは嬉しいですね」と顔を綻ばせた。


「私の用事は終わりましたし、もしよければ研究室でお話ししましょうか」

「二人もそれでいい?」

「私達も行っていいんですか…?」

「勿論。アリオくんのお仲間なら歓迎致します」


 そうと決まれば早いのがミューロ先生。

俺達の背中を優しく押しながらギルドを出ると、歩幅を合わせながら先導してくれる。

そうして辿り着いたのは街の周りを囲む壁のすぐ近く。城からも街からも少し離れたところにある塔だった

街から少し離れているからか、木々が多く、周りには見たこともない植物が生えている。

見上げた塔には蔓が伸び、その蔓は何かの模様を描いているように見える。

だがこの塔、おかしいところが一つあった。


「アリオくん…俺には入り口があるように見えないんですが…」

「奇遇だねユキト。俺にも壁にしか見えないよ」


 目の前の塔に扉はない。

試しにユキトと周りを見てみたが、均等に並べられたレンガの壁があるだけで入り口という入り口はない。

チラッとミューロ先生の顔を見るが、ミューロ先生はニコニコと笑うだけでヒントをくれる様子はない。

何か条件があったりするのだろうかと腕を組んで考える。

こういうのはどっかのレンガを押したら開くとかそういうのが鉄板だけど…

捻り出した知識でペタペタと塔の壁を触ってみるが何も起きない。

諦めてヒントを聞こうかと考えている時、ふいに横で何かが開くような音がする。

驚いて音の方を向けば戸惑ったようにこちらを見るスーリアと、いつの間にか現れた入り口と思われる扉があった。


「あの…たぶん開きました」

「素晴らしいです。初見でコレを開けたのはお嬢さんが初めてですよ」


 ルンルンで扉を開けたミューロ先生。

入るように促されるが、さっぱり意味が分からない俺とユキトは顔を見合わせたまま首を傾げた。


食べ物その後

アリオ「…ユキト…俺の分も食べる…?」

ユキト「いいんですか!?!」

スーリア「私のも食べますか?」

ユキト「もぐもぐ…いただきます!!」

アリオ・スーリア(よく食べるなぁ……)


ここまで読んでいただきありがとうございました。

面白いと感じたらいいねしてくれると嬉しいです!

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