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よからぬ企みと俺達

ゴールデンウィークは来るまで長くて来てからは一瞬で過ぎますね。

恐らく時の流れが違う。

「うーむ、本当に良かったのだろうか…」

「良いんですよ!私とユキトさんの希望なんですから!」


 あの後街の外で野営をすると言うユキトと一度別れると、俺達はギルドに依頼達成報告と薬草の売却をしに行った。

そしてユキトの取り分を渡しに行ったところ、ユキトから「パーティーだから」と報酬の半分を渡された。

流石にこれは受け取れないと返したのだが、受け取ってほしいという圧に負け、結局三分の一を受け取ることになった。本人はかなり不満げだったが、俺としては三分の一でも受け取りすぎなくらいだ。

そう思っていると、なんとスーリアまでもが半分を受け取って欲しいと言ってきた。

やっぱり断った俺だったのだが、ユキトよりも凄い圧により、一先ず預かるという方向で収まった。

というかスーリアの分はストレージに入れている為、現状としては俺が全額持っている形になっている。

スーリアはそれで満足そうだし、好きに使ってくれとも言われているのだが、使えません怖いです。

二人とも俺が悪者だったらどうするつもりだったんだ。おじさん心配だよ…


「とりあえず持っておくけど、買いたいものとかあったらすぐに言ってね?」

「はい!あ、じゃあ夜ご飯を食べに行きませんか?」

「いいね。夜ご飯の時間にはまだ早いけど、その方が混まないだろうし」


 スーリアの提案に良い店はないかと、俺はキョロキョロと周りを見る。

まだ滞在二日目だし、スーリアさえよければ露店で食べ歩きをするのもいいかもしれない。

同じことを思っていたのか、人の列を探そうと彼女も俺の服の袖口を掴みながら辺りを見回している。


「アリオさん、あそこに人混みってありますか…?」

「え?あるけどどうしたの?」


 俺の袖を軽く引いたスーリア。その指差した方を見ると、何やら人が集まっている店がある。


「お?お前らユキトと一緒にいた坊主達か」


 スーリアが口を開きかけた時、いきなり後ろから声をかけられて二人で振り向く。するとユキトオススメの酒場の店主がそこにいた。

大きな紙袋を抱えているから、どうやら買い物帰りらしい。


「お前らうちで飯食ってくか?良い肉が手に入ったからよ、サービスするぜ?」

「本当ですか?!スーリアどうする?」

「…そうですね!沢山食べて英気を養いましょうか」


 しばらく人混みを眺めていた彼女だったが、すぐに俺の方を見ると笑顔でそう言った。

そして袖口から手を離すと、歩き出した俺の横にピッタリとくっつきながらカンカンと白杖を鳴らす。

店主はそれをまじまじと見ているが、白杖の意味が分かったのか、関心したような面持ちだった。


「そういやお前ら、あの坊主はどこ行ったんだ?」

「今日は野営をするみたいで、さっき別れたばっかだよ」

「何だ、今日はアイツうちに泊まらねぇのか」

「え!あの店泊まれるんですか?」

「おう。少し狭いけど、二階が空いてっからアイツに貸し出してたんだよ」


 それは良いことを聞いたとばかりに俺は目を輝かせる。

このカヌゥという街はどうもよそよそしい感じがある。それは宿屋でも同じで、昨日泊まった宿はお世辞にも愛想が良かったとは言えないものだった。


「今日お前らが使うなら貸し出しても「ぜひお願いします!」」

「随分食い気味だなお前…」

「店主さんは信用出来る人ですから、私からもお願いします」

「そ、そうか?まぁ、狭くても文句言うんじゃねぇぞ?」


 スーリアの言葉に厳つい店主の顔が少し緩む。信用できるのは本当だし、少なくとも宿に泊まるより気持ちが軽い。


「肉が余ったらアイツにもなんか作っといてやるか。俺は表立って行けねぇから、お前らが持ってってくれ」

「了解!きっと喜ぶよ」


 そんなこんなで俺達は酒場に行くと、ちょっと早めの夕ご飯をご馳走になった。

店主は狭いと言っていたが、子ども二人は余裕で寝られるスペースがあったし、何より綺麗に掃除されていて埃っぽくもない。それが先に泊まっていたユキトによるものなのか、店主によるものなのかは分からないが、どちらにせよ快適なのは変わらない。

下で酒場として機能し始めたこの店の賑わいを聞きながら、俺達は簡素なベッドに腰掛けて明日の予定を立てる。

そうして夜も更けてきた時、人の声がまばらになったタイミングで店主がバタバタと慌てたように俺達の部屋のドアを開けた。


「お前ら今夜中にあの坊主を連れてこの街を出ろ!」

「急すぎません!?」

「いいからさっさと荷物まとめろ。時間がねえ!」


 様子が変な店主に俺は首を傾げるが、その横でスーリアはいたって冷静に荷物をまとめ始めている。


「アリオさん、夕方の人混みの件なのですが」

「う、うん…」

「黄色でした」

「黄色?」

「はい。中には赤も混ざっていました」


 スーリアにとっての赤色は、確か危険信号だ。

主に犯罪者や、こちらに害を為すような人がそう視えるらしい。

ということは黄色はそれに準ずるものの筈。犯罪者予備軍か、これから悪事を働く可能性があるもの。

二人の言葉の意味が分かった俺は、サーッと顔が青ざめていく。


「まさか…!」

「そのまさかだ!街の馬鹿どもは、アイツを異教徒として排除するつもりだ…!」


 すぐに俺は荷物をストレージへと仕舞う。

いっぺんに荷物が全て消えたからか、店主が驚いたような顔をするが、それも気にせず俺はスーリアに手を伸ばす。


「行こうスーリア」

「はい!」


 迷うことなく俺の手を取ったスーリアと共に部屋を出ようとすると、店主の大きい手が俺の肩を掴んだ。


「待て、下にはまだ客がいる。出るなら窓からの方が良い」

「分かりました」

「お前らも気を付けろよ」

「ありがとうございます。貴方もどうかお気を付けて」


 窓を開くと途端に風がふわりと俺達の髪や服を揺らす。

隣の屋根に飛び移るだけだと分かっていても、この高さで自分が死なないか少し心配だ。


(えぇい!ここで怖がったら男が廃る!一気に行ってやらぁ!!)


 時間が惜しいし、俺は窓に足をかける。

そして一回大きく深呼吸をすると、俺は意を決して飛び出した。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

面白いと感じたらいいねしてくれると嬉しいです!

感想等も受け付けております。

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