称号だと思ってたら呪いらしい
「はい注目!というわけで、俺による俺のステータス講座を始めます!」
「わー!」と打ち合わせ通りに拍手をしてくれる二人に、俺は教鞭をイメージした木の棒をクルクルと振る。
こうなったのは他でもない、つい先程の明日死ぬ発言のせいだ。
たまたま日数的にカヌゥに来る道中は大丈夫だったからすっかり忘れていたし、言ってもどうにもならない事だからスーリアにも言っていなかった。
まあ…一体何のことですかって思いますよね…
うん、アレです。『忘れた頃の不幸』ってやつです。
あまりにも忘れたいザコ死だから、俺の記憶からも消えていた。
「それでアリオさん、さっきの発言は一体どういうことですか?」
「あー…」
正直言ってめちゃくちゃダサいから言いたくない。
でも言っておかないと二人が驚くだろうし、俺としてもどのタイミングで発動するか分からない爆弾を一人で抱えるのは難しいものがある。
仮に他の人がいる時に発動したら、誤魔化すのは至難の業だ。それこそ協力者がいないと不可能だ。
「……二人とも絶対笑わない…?」
「よく分かりませんが笑いませんよ」
「はい!それに知らなくちゃ、心配でどうしたらいいか分かりませんし…」
うーむ、二人が良い子で俺はとても嬉しい。
でも同時にこれから話すことが凄くしょぼいことに心苦しさを覚える。
違うんだよ…俺の話はそんなに真剣な顔で聞くものじゃないんだよ…!
だってタンスの角に小指ぶつける程度のことだから…!!
俺の言葉を待って息をのむ二人に気付かれないように、静かに息を吸って吐く。
落ち着け俺。これは一時の恥というものだ。…たぶん。
しょうがなく腹を括る。
「…………だ」
「アリオさんすみません…もう一度言ってもらえますか?」
「…俺…タンスの角に小指ぶつけて死ぬんだ……」
「タンスの角に…」
「小指をぶつけて死ぬ…ですか……?」
「はい……」
死にそうな声を出す俺に、二人分のポカンとした視線が刺さる。
もうヤダ。俺こんなデバフ付けた神のこと絶対許さんからな。
神が俺のこと嫌いだって分かっているよ?でもそれ以上に俺がお前らのことを嫌いだからな?生きている限り恨むからな?
「…まあ…大した事じゃないから…死んでも生き返るしね、うん。もしそうなったらフォローよろしくって感じで…」
固まった空気に居た堪れなくなって、また死んだような声でそう付け加える。
すると困惑から回復したのか、突然スーリアは俺の手をガシリと掴んだ。
「な…何でもっと早く教えてくれなかったんですかぁ!!!」
「ちょっ…スーリア!?」
「死んでしまうのに、大した事じゃないわけないですからね?!」
怒ったような、悲しんでいるような、そんな表情を浮かべた彼女にどうしたものかと俺は助けを求めるようにユキトを見る。
が、ユキトはユキトで難しい顔で考え込んでいる。
「あのー…ユキト?」
「ああ、はい。すみません少し考え事をしていました」
未だ強く俺の手を握っているスーリアを宥めつつユキトに声をかけると冷静な返事が返ってくる。
そして「質問いいですか」と、静かに挙手をした。
「あ…はいどうぞ…」
「ありがとうございます。その…アリオくん、君のそれはもしかして呪いというものなのでは…?」
「………呪いとな??」
呪い。
NOROI
頭の中でその言葉を高速で反復する。
俺の中では称号としての位置付けだったし、実際ステータスにもそう書いてあった。
もしユキトの言う通り、これらのデバフが呪いなのだとしたら、本当に称号と呼べるのは【転生者】の一つだけってこと?
「それ以外に何かアリオくんに弊害はありますか?」
「ある…というかありすぎる」
「まだあるんですか!?」
スーリアは驚いた声を上げ、ユキトは目を丸くする。
驚いている二人には悪いが、一番驚いているのは俺である。
だって四つも呪いがかかっているんだもん!
たとえまだ想像の話でも、四つですよ!?しかも呪いなんて俺いつ受けたんですか!!
女神か?!この世界で崇められている三神か?!
だとしたらとことん俺のこと嫌いだね!?
「ちなみに聞いても…?」
「いいよ」
おずおずと聞いてきたユキトに頷くと、俺は残り三つの呪い(仮)をあげる。
すると、説明を聞いていた二人の顔がどんどん青ざめていく。
「ちょっっっっと待ってください……今のは本当なんですよね?」
「残念ながら正真正銘俺のステータスの一部です」
「アリオさん…今までよくご無事で……!」
「本当にそう思うよ…」
俺じゃなかったら絶望的なステータスですよね。
いや俺も絶望したんだけどね。スパッと消えるつもりの俺は、祝福さえなければ結構魅力的だったというか…
でも小指ぶつけて死ぬのは嫌だな。今の撤回で。
「ですが…受けるダメージが固定されるのは良い気もしますね」
「数字で分かるのはいいですけど、私達の命って数字で分かるものなのでしょうか?」
「え、二人ともライフポイントの概念がない感じ?」
「「ライフポイント?」」
首を傾げる二人を見て、俺はこの世界にライフの概念がないことを知る。
確かに兄のステータスを見た時にライフの項目がないなとは思ったが、まず概念がないとは思わなかった。
いや、本当はあるが、本来本人達の目では見えないものだったりするのかもしれない。
ゲームとは違うし、ないのも当たり前だけど、そう思うと自分のライフが見れるのは強みかもしれない。
…まあどう足掻いても俺のライフは百しかないんですけど。
「とにかく!俺の望みはただ一つ、祝福とおさらばして真っ当に生きて死ぬことである!」
「「いやいやいやいや!!」」
高らかに宣言すれば、返ってきたのは綺麗に揃った否定の声。
二人ともまだ出会って二日目にも関わらず息ぴったりだ。仲が良いのはとてもいいことだね。
「ま、そういうことで!今日はユキトとスーリアのおかげで稼ぎも出たし、ギルドで報酬を受け取り次第二人に渡すね!」
「「いやいやいやいやアリオさん(くん)の分は!?」」
おぉ、二人ともよく声が揃うね。二人が仲が良さそうで俺も嬉しいよ。
「だって俺何もしてないしなぁ…」
「ご飯作ってくれましたよね!?」
「あれは誰でも出来るし」
「服も貸してくれましたよ!?」
「そりゃ替えがなかったら普通貸すよ」
「今だって荷物を全て持ってくださってますし!!」
「いやストレージ持ちなんだから荷物ぐらい持つって」
自分の行動を思い返してみるが、やって当たり前のことしかしていない。
そんな俺を見ている二人は唖然とした表情の後、ヒソヒソと何かを話している。
気にはなるが、視界の隅で大きな魚が跳ねたのを見て俺は、そういえば桜華国には生魚を食べる文化はあるのだろうかと思いを馳せる。
視線を二人に戻すも二人はまだまだ内緒話の最中だったので、すっかり乾いたユキトの服を畳もうと俺は手を伸ばした。
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