お久しぶりの透視くん
「よーし行くぞー!」
「「おー!」」
カヌゥに来て二日目。ギルドまで行った俺達だったが、ユキトはギルドに入る前に俺達に一言謝った。
なんでもユキトが最初に祝福の話をしたのはギルドで、どうやらそこから話が伝わったせいで依頼が受けられなくなったのだとか。ギルドカード紛失の件も、ギルドに寄って気付いたら無くなっていたから聞いてみたものの門前払いを受けたらしく、それで警戒心が増し増しになっていたらしい。
まさに村八分。女神に対する信仰って怖いね。
事情も知らずに突っぱねる人間のこういう所俺嫌い。
そんなこんなでまだ全然顔の割れていない俺達が依頼をとり、街の外で合流した。
ユキトは近距離戦が得意だという事で、依頼内容は猪討伐。これは魔物とは違って、普通の野生動物だ。まあ、魔物はこういった野生動物に障気が集まって生まれるものだからあまり違いはないっちゃない。ただその凶暴性は段違いだ。
「猪ですか。なら肉や毛皮は討伐後に処理してしまいましょう」
「処理ってどうするんですか?」
「毛皮は少し炙って虫を無くし肉は血抜きすれば、どちらも売るもよし、肉に至っては食べるもよしになりますよ」
「なるほど!あ、でも俺そういうのはさっぱりなんだけど…」
俺の言葉にスーリアが頷く。そういえばそこら辺は準備不足だったなと頰を掻けば、ユキトは大丈夫だと笑う。
「そこら辺は任せてください。なんならお教えしますよ」
「本当!?ユキトお前良い奴すぎないか…?」
「大袈裟ですよ。大したことないですし」
ワイワイと喋りながら歩けば、あっという間に近くの狩場に到着する。ユキトはしゃがんで地面を見ると、森の左側を指差した。
「足跡的にはあちらですね。新しいものですし、このまま辿っていきましょう」
スタスタと歩き出すユキトを追おうと、俺はスーリアに手を差し出す。森の中だし、初めて来た場所は用心が必要だと思ったからだ。スーリアもすぐにその意図が分かったのか、白杖を持つ手とは逆の手で俺の手を取った。
「ユキトさん凄いですね」
「分かる!あの感じを見るとかなり狩りに慣れてるよね」
「私ももっと頑張りますね…!」
「俺も足引っ張らないよう頑張らないと…」
やる気を見せるスーリアに、俺も気合いを入れ直す。
少し先を行くユキトに着いていきながら進んでいくと、スーリアは時折薬草に気付いて足を止めた。
「ここにも薬草があるので摘んで行っても良いですか?」
断る理由のない俺達は、頷くと採取の手伝いを始める。だが、どうやらこちらの方はスーリアの方が得意らしい。ユキトは俺やスーリアに聞きながらも、毒草との見分けに悪戦苦闘していた。
「手触り…俺にはよく分かりません」
「大丈夫だよユキト、俺もよく分かんないから!」
「アリオさん、今持って来たのは毒ですよ」
「ほらね!」
おちゃらけながらユキトの方を向けば、ユキトは耐えきれないと言ったように笑い出す。スーリアもその笑いにつられたのか、同じように笑い出す。
なんだか俺達良い雰囲気じゃないか?と、自画自賛する。俺が読んでた異世界ものはわりとパーティー内がギスギスみたいなことが多かったから、なんか安心した。
最初のアレとは異なり、ユキトが温厚な性格だったのも大きいんだと思う。
依頼を受けた時に、俺に戦闘能力がないことを告げると、大丈夫だと笑って受け入れてくれし。なんなら戦闘時には避難していていいとまで言ってくれた。ちなみに俺だけじゃなく、スーリアにまでそう言っていた。
優しいがすぎる。
というよりも、ここで気になってくるのは彼の祝福だ。
ここまで気を使ってくれるという事は、恐らくは戦闘に特化した祝福なのだろう。
でもその場合、何故彼が祝福を消そうとしているのかの理由が分からない。
念の為、二人に内緒でユキトに向かって透視を使用してみる。
***
ユキト・イチジョウ 種族・ヒト族
[祝福]
剣ノ神
[称号]
・努力家
***
久しぶり透視くん。君はやっぱり良い子だね。
やっぱり戦闘系かと苦笑いする。しかし、これは戦闘系と括って良いものなのだろうかと首を傾げる。個人的に知っている剣士系祝福の中での最高値は、剣豪や剣聖。後は聖騎士とかも強いとされる部類だ。
***
剣ノ神:剣に愛されし者。
使用する武器の能力を最大値まで引き出す。
また、使用者の能力値を全て二倍に引き上げる。
武器及び防具が朽ちない。
武器を奪われても自動で手元に戻ってくる。
***
…ふぅ。
うん。これはあれだね。所謂チートってやつですね!!
やっぱりこれを見る限りではユキトに不利益があるとは考えにくい。
死ねない俺や、盲目のスーリアとは全然違う。効果を見てもデメリットどころかメリットしかない。言ってしまうと異世界ものの主人公のような能力値だ。
ここまで考えてふと思う。
もしかしたら透視くんでは分からないだけで、剣ノ神とやらはとてつもないデメリットがあるのではないかと。
戦いになると暴走するとか、何か行動に制限がかかるとか。或いは別の要因で戦闘に支障をきたすとか。
これは猪討伐は一波乱あるかもしれない。
そう考えた俺は、もしかしたら今日また死ぬかもしれないなぁと、どこか他人事のように青く澄んだ空を見上げたのだった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
面白いと感じたらいいねしてくれると嬉しいです!
感想等も受け付けております。




