表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/48

転生者始めました

 異世界転生…というものを知っているだろうか。

俺は知っている。何故なら、まさに俺がその異世界転生を遂げたからだ。ラノベや漫画で見た時には憧れたが、実際なってみるとあまり感動はない。

嘘ですあります。めっちゃはしゃぎました。

やばい異世界すごいなんて思っちゃいました。語彙力も無くしましたハイ。

…とまぁ、齢十歳になった俺は、唐突に前世の記憶を思い出したのだ。

前世俺が会社員だったこと。ラノベや漫画が好きだったこと。人付き合いがあまり得意ではなかったことなどなど。

漠然とした人生への不安に苛まれた日々を終えるために、マンションの屋上から飛び降りたこと。記憶の解像度を言えば、あの夜の月の綺麗さまで思い出せる。そのせいで、十歳の誕生日を迎えたばかりの俺、『アリオ』は盛大に泣いた。


そう。盛大にだ。


誕生日を祝ってくれた両親と兄は、最初こそ俺が嬉しくて泣いているのだと思って笑っていたが、ガチ泣きをしていることに気付き、誕生日会をストップして俺を慰めにかかった。

理由も分からず泣き、急に落ち着いた息子を見た時の両親の内心は容易に想像できる。確実に引いたに違いない。俺だったら引く。


「アリオ、さっき父上が呼んでいたぞ」

「分かった!ありがとう兄さん!」

「おう!転ぶと危ないから走るなよー」


 ヒラヒラと手を振る兄に、手を振り返して俺は父親の元へと急ぐ。

田舎町の伯爵家、シーディア。それが転生した世界での俺の家。家格は高くないのだが、海に近いことで、漁業や塩などで領地や国をまわす結構重要な家だ。

俺はそんなシーディア家の次男で、領民からは引っ込み思案の次男坊としてある意味親しまれている。二歳上の兄、カリス・シーディアは、そんな俺にも優しく賢い。容姿も、母親似の丹精な顔に、海のような青い瞳。父親似の少し癖のついた亜麻色の髪。贔屓目で見てかなり整っている為、将来はモテる男になるに違いない。


 パタパタと足音を響かせながら父親の執務室まで走っていると、廊下の窓から見える海にふと足を止める。少し小高い丘にあるシーディアの屋敷からは、ほとんどの窓から海が見える。青く輝く海は、今日も綺麗だ。

そして、そんな綺麗な海を見ると思うのだ。


—…あぁ、この海に飛び込んだら今度はちゃんと生を終えれるのだろうか…と。

…え?何かおかしくないかって?

何もおかしくないぞ。至って真面目だ。

俺の夢は、綺麗に人生の幕を下ろすこと。

それ以上でも、以下でもない!


何?お前さっきは、「異世界転生しゅごい!」って言ってなかったかって?

言ったぞ。言いましたとも!

でも違うのだ。俺が嫌なのは異世界ではない。『また人生を歩まなければいけない』ということが嫌なのだ!!

どこで生まれようと、どんな風に育とうと、俺が俺である限り人生が怖い。

前世もそうだ。未来が分からないのは当たり前なのだが、何が正解で何が間違いか分からない。誇れる特技もなければ、自分を変えようとする度胸もない。

結果出来上がったのは超絶死にたがり野郎だ。

いや違うな、微妙に違う。

この世界に来てからは、ただ死ぬのではなく華々しい散り方を求めるようになった。

前回は人に迷惑をかける死に方をしてしまったが、今考えると他者に迷惑になる死に方はアウトだ。それなら魔物のいるこの世界ならではの、魔物に食われてサヨナラ☆みたいな方がいい。


…でもまて、やっぱり嫌だな。

何処の馬の骨とも分からない魔物に食われるのは癪だ。

そこは俺も選びたい。どうせならこう、魔王や、魔王までいかなくても中ボスレベルと戦ってか華々しく散りたい。

どうせ異世界に転生したのだし、この頃魔物が増えてきたと言ったような話も聞く。

つまりはいる筈なのだ、魔王やそれに準ずるものが!!


と、熱く語ってしまってから言うのもなんだが、これだけは言わせてほしい。



「勝手に転生なんてするんじゃねぇーーッ!!!!」

ここまで読んでいただきありがとうございました。

面白いと感じたらいいねしてくれると嬉しいです!

感想等も受け付けております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ