ゴロツキと俺と異世界テンプレ
いきなりですが問題です!
俺は今とある異世界テンプレに遭遇しています。それは一体なんでしょうか!
「こんなガキが冒険者〜?ハッ!すぐママに泣きつくんじゃねぇかぁ?」
「ここは子供が遊びに来るところじゃありませんよぉ?分かってまちゅか〜?」
正解は〜?
『ゴロツキに絡まれる』でしたー!
二人組のゴッッツイおっさんの煽りに俺は冷たい視線を送るが、悲しいことに相手はガハハと笑うばかり。
子供にマウントをとって何が楽しいのかさっぱり分からないが、反応が返ってこないのを萎縮と捉えているからか、二人組はかなり見下してきている。
そんな二人を見上げながら、どうしてこうなったのかと振り返ってみる。
…まず、俺の『墓まで持っていく恥事件』は、カリスのフォローによってその日一日はよく休むことという注意で終わった。
本当に、あの時話を合わせてくれたカリスには頭が上がらない。
昨日一日よく休んだ俺は、カリスの提案によって冒険者ギルドにやって来た。
全く気付かなかったが、カリスは既に冒険者登録をしていたらしく、ギルドマスターに話を通しにいってくれた。
二人だけではと、父親役として付いて来てくれたドゥールは、よく分からないがいろんな冒険者に囲まれて揉みくちゃにされている。
…本当に何者なんだうちの執事は。
で、今に至る。
カリスはまだ帰ってこないし、ドゥールは入り込めない雰囲気だった為、一人離れたところにいた俺は見事に絡まれた。
絡まれ方なら百点満点だ。
でも焦ることはない。何故なら俺は『お・と・な』なのだ。
無茶ぶり上司も、話を聞かない部下も経験済みだ。
「分かったらとっとと帰りな!」
「泣きべそかいてからじゃ恥ずかしいぞぉ?」
俯いた俺に、ゴロツキ達は笑いながらそう言う。
俺よ…役者になれ…!今の俺はベテラン子役だ!!
大きく息を吸い込むと勢いよく顔を上げ、視線を二人組に向ける。
そして俺は、
「おじさん達筋肉凄いですね!俺もおじさん達みたいにカッコよくなりたいなぁ!」
媚びた。
奥義、子供からの憧れの眼差し付きで。
「お、おう…そうか?」
「うん!おじさん達凄くカッコいい!」
キラキラとした眼差しを向けると、二人組は先程と打って変わって上機嫌になった。
(これは勝ったのでは?)
褒められて気を悪くする人はいない。
それは大人も子供も、前世も今世も変わらないことだろう。
身長差がある事と、子供であることを利用して、前世のテレビでやっていた可愛く見える角度なるものもをすることも忘れない。
声も少し高めに出して小首も傾げる。
「おじさん達みたいになるにはどうしたらいいかな?」
「おぉ?それはまず肉をつけることだな!」
「坊主はちっこいから獲物は軽めのもんから始めろよ?」
子供の眼差しはゴロツキを変える。これは積極的に使っていこう。
俺に対してどんどんアドバイスをくれるようになった二人組に、なんとなくピリピリしていたギルドの雰囲気が柔らかくなる。
無視されているのかと思ったが、他の冒険者達もこちらのやり取りを気にしてくれていたようだ。
「アリオ!」
「あ!兄さん!」
そこそこ会話が弾んできた時、ギルドマスターと話し終えたのか、カリスが走ってくるのが見えて俺は手を振る。
「待たせてごめんね」
「大丈夫!このおじさん達が冒険者について分かりやすく教えたくれたから、楽しかったよ!」
「坊主の兄ちゃんか!」
「お前もヒョロヒョロしてんなー…ちゃんと食ってんのか?」
ぺこりと頭を下げた兄に、それはもう上機嫌なおじさん二人は、俺と兄を見比べる。
俺凄い。短時間で煽りおじさんを心配おじさんに変えたもん。
「弟のことを見ていてくれてありがとうございました。アリオ、勉強になった?」
「とっても!」
にっこり笑えば、照れ隠しのように二人組は頭を掻く。
そのまま人混みから脱出してきたドゥールが合流すると、角が立つこともなくその二人と別れた。なんなら困ったら声を掛けろとまで言ってくれた。
「いやはや…見事な手腕でしたな坊ちゃん」
「そうだね。お陰で初心者にちょっかいを出す二人組が更生したから凄いよ」
「あ、やっぱりあの二人そうだったんだ」
なんかそんな感じがしたし、周りの冒険者も冷やかな目で見てたから、彼らのなかにも被害にあったことがある人がいたのかもしれない。
なら俺がしたのは良いことかもしれないな。これで少しでもあの二人組が他の冒険者に優しくなればいいなと思う。
(ん?というか…)
「二人とも見てたの?」
俺が見れば、二人は顔を見合わせてにこりと笑う。
「えぇ、坊ちゃん達の護衛として、目を離さぬよう見ておりましたとも」
「俺も最初止めに入ろうと思ったんだけど…アリオが上手くあしらうからついね」
はっっっず……
身内に猫被りモード見られるの恥ずかしい…。
頭脳は大人の名探偵もこんな気持ちだったのだろうか。自分がやると思った以上に後からじわじわと恥ずかしさがやってくる。
あれを自然にやっていた高校生探偵は偉大だな。
「見てたなら止めてくれぇ……」
「ごめんごめん。代わりに話は通してきたから、冒険者登録しにいこう?」
顔を隠したまま兄の後ろを着いて行く。
連れて行かれたのは奥の部屋で、ドゥールが扉を開けると、二人して中に入る。
「待っていまし……その子は何故顔を隠しているのですか?」
「…気にしないでください」
「そ、そうですか…」
そう言いつつも、他者の前で顔を隠しているのは失礼だなと思い手を退かす。
パッと開けた視界。そしてすぐに目に入ったその人に俺は変な声が出た。
「ひょえっ……」
「やっとお顔が見えましたね。私はギルドマスターのルファルと申します」
輝かんばかりの金髪。エメラルドグリーンの瞳。そして特徴的な長い耳。
「どうかしましたか?」
漫画やゲームでよく見たことのある、そんなエルフがそこにはいた。
(ありがとう…異世界……!)
俺は初めて転生に感謝した。
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