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執事何者?闇の者?

執事は全部お見通しです。

 うーむ…これは困った。

ヒントは見つかったが決定打がない。

まずお伽噺の出来事がこの世界と一致するのかが問題だよな。

お伽噺はお伽噺だし、誰かの作り話なんてザラだ。

俺の周りには読み漁った地図や歴史書などが散乱し、夕飯前には片づけなければとそれらを手に取る。

殆どが元の場所に戻る時には、窓の外はだいぶ陽が傾いていた。


「これは一応持っておこうかな」


 最後の一冊は最初に読んだ勇者の本。別に本棚に戻してもいいんだけど、古そうだし、劣化を理由に捨てられたら困る。何より、まだ気付いていないことがありそうで手放し難かった。

その本を持って書庫を出ると、夕飯を知らせに来たであろうドゥールと廊下で鉢合わせた。

一瞬驚いた顔をしたドゥールは、すぐに笑みを浮かべると手本のような礼をする。


「坊ちゃん、そろそろディナーの時間でございます」

「ありがとう!今日のメニューはなに?」

「本日のメインはハンバーグステーキでございます。デザートはお楽しみに」


 「やったー!」と声を上げれば、ドゥールはまた柔らかな笑みを浮かべる。

中身は成人済みの男なのだが、どうも体に引っ張られるのか、俺は感情のままに言葉を発することが多い。

…まぁその分子どもの演技をしなくて済むから便利なんだけど、些か恥ずかしいものがある。

何より家族や使用人さん達の微笑ましいものを見る目が恥ずかしいし、居た堪れない。


 俺が喜びの表現として両手を上に上げていると、それを見ていたドゥールは持っていた本へと視線を動かす。そして「ほぉ」と一言こぼした。


「ドゥール?」

「いや、坊ちゃんが持っているその本。目的のものをちゃんと見つけられたのですね」

「うん!ドゥールが場所を教えてくれていたから簡単だったよ」


 表紙を見せるように掲げれば、ドゥールは付けている丸眼鏡を持ち上げると、僅かに腰をかがめて覗き込む。


「して坊ちゃん、坊ちゃんはこれはもうお読みになられましたかな?」

「読んだよ!」

「ではどう感じたでしょうか」


 ドゥールの質問を受けて俺は少し考える。

すかさず思ったのが終わり方だ。中途半端すぎる。俺としてはその後勇者は無事に祝福を無くせたのか、そこが気になる。

次に思ったのがこの物語の真偽。これは切実に気になる。俺のこれからに影響する。

だがこれは本の感想を問うているなら向かない答えだなと、俺は考え直す。

感想ならば、読んだ最初の印象を言うのが一番いいかもしれない。


「勇者の人は疲れちゃったんだろうなって思った」

「そう思った理由を伺ってもいいですかな?」

「期待や責任って一人で抱えると凄い疲れちゃうから。それに仮に失敗したら、全部自分のせいにされるのが目に見えてるもん」


 これは前世社畜だったからよく分かる。抱えているものの大きさは違えど、期待されればされるほどプレッシャーも大きくなる。失敗やミスがあればトカゲの尻尾切り。

よく話し、仲の良かった人までひそひそと陰口を叩いてくる。

何が怖いって、やったことが正しいことであったとしても数には勝てない。悪人が大きい立場であった場合、善も悪になる。


「望んで勇者になったわけじゃないのに…」


 祝福という言い方をしているが、その勇者からしたらもはや呪いだ。

勝手に決められてあとはほったらかしなんて、凄い無責任な話だし。

何より一生祝福に縛られ続けるのは辛いに違いない。


「坊ちゃんは随分と感情移入してらっしゃいますな」


 ドゥールの言葉にドキッとする。

いかんいかん…つい自分の未来のように感じられて感情がこもってしまった。


「あっははー…いやー…勇者って言っても同じ人だしなーって思って」

「ですが坊ちゃん。坊ちゃんのような考え方をする者は少ないのですよ」


 疑問に思って、横を歩くドゥールのことを見上げると、視線に気付いたのかドゥールはこちらを見てニコッと笑った。


「祝福とは文字通り神から与えられた最上級の贈り物です。ロラン王国では特にその傾向が強い…」

「だから祝福に沿って職業に就く人が多いんだよね」

「さようでございます。しかしそれに反する者達がいるのも事実…」


 何処か悩ましげにドゥールは視線を下げる。

まぁ、やっぱりそうだよなと俺は内心頷く。他人事ではないし、むしろ祝福を取り消そうと考えている俺はそちら側だ。


「そういう者達はあまり良い扱いを受けません」

「そうなの?」

「えぇ、女神からの贈り物を捨てようとしていると思われますからな」


 スッとこちらを見たドゥールに、ビクッと肩が揺れる。

これはやっぱり、俺の目的は話さない方が無難かもしれない。そう考えるとカリスが寛容的な反応で助かった。

ビクビクとドゥールの様子を窺っていると、何を思ったのかドゥールは楽しそうに笑い始める。


「そう萎縮しないでくださいませ。私が言いたいのは、坊ちゃんが何を考え、成そうとしても、この家の者は味方だということです」

「え?」

「さぁ坊ちゃん着きましたぞ。今日はお疲れでしょうから沢山召し上がってくださいませ」


 聞き直そうとするが、その前に部屋へと通される。

なんとなくモヤッとした俺は、ドゥールが扉を閉める前に素早く透視を発動した。


***

ドゥール・モルドウ 種族:ヒト属

[祝福]

暗殺者

[称号]

・影を歩む者

・潜む者

・執事

***

えっ、ちょい待ちストップジャストモーメント。




………俺ん家の執事何者?


ここまで読んでいただきありがとうございました。

面白いと感じたらいいねしてくれると嬉しいです!

感想等も受け付けております。

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