俺と伸び代?と勇者の絵本
イケオジはいいものです。
『伸びしろがあるのは素晴らしいことです ありを』
んなわけないだろーッ!!!
ちっさ!ちっっっさ!!
俺のスキルツリー赤ちゃんだよ!!
こんな小さな芽をさらに隠すなよ…!
見えないものがもっと見えなくなったら、もうそれは無いのと一緒なんだよ!
…というか何でいきなり解放されたの…?
もしかして腕立て伏せか?
腕立て伏せをしたことによって経験値みたいなものが溜まったとか?
というか、
(言葉…関係なかったんかい……)
割と長い時間カッコよくスキルツリーを呼んでたのに…
正直凄く恥ずかしいので、ベッドに籠城する。といっても俺しかいないから見られてはいないんだけど。
…でもこんな小さな芽をどうやって育てればいいのだろうか。
兄の言う通り、経験を積むことで解放されるのだろうか。
仮にそうなると、今後の予定はとりあえず訓練ということになる。
(カリスのお陰で訓練出来る目処は立ったから、後はいつ冒険者になるかだな)
兄はあの調子だと俺の味方をしてくれる筈。
問題は父親と母親へ打ち明けるタイミング。次男坊だから家に損は少ないだろうけど、母親は割と息子を溺愛するタイプだからな。
(まぁ、仮に止められてもこっそり冒険に出ればいいか)
祝福消しの為には情報を集めなければいけない。
念の為に、家の書庫にある本をもっと読み漁るのもありかもしれない。
思い立ったが吉日。部屋を出ると、俺は早速書庫へと向かう。
「おや坊ちゃん。探索ですかな?」
「ドゥール!うん!書庫に行こうと思ってるんだ」
声を掛けてきたのは、家で一番のベテラン執事であるドゥール。
優しくて、気配りも完璧な所謂イケおじ。俺も小さい時からお世話になっていて、大切なシーディア家の一員だ。
「坊ちゃんは本当に本がお好きですな。今回はどのような本をお探しで?」
ドゥールはかなりの本好きで、何度も俺の探している本を見つけてくれた。聞いたことにもしっかり答えてくれるので、俺の中ではWiki○ediaみたいな人だ。
彼に聞けば、目当ての情報が手に入るかもしれない。
「ねぇドゥール。祝福がなくなったとかって内容の本はあるかな?前例でもいいんだけど」
祝福は女神からの授かりものな為、無くしたいというと混乱を招く可能性がある。それ故の質問だった。この聞き方なら、そういった物語を探しているようにも捉えられるだろう。
ドゥールは顎に手を当てて考えると、悩ましげに口を開く。
「前例かどうかは分かりませんが…そういうお伽噺はありますな」
「本当!?」
「えぇ、本当ですとも。それは書庫の右奥の本棚にありますぞ」
流石イケおじ!俺の求めているものを的確に教えてくれる。そこに痺れる憧れる!
お伽噺でも上等!俺には圧倒的に情報が足りないから、これは大切な一歩だ。
「ありがとうドゥール!読んでみる!」
「いえいえ、お安い御用です」
ウキウキとした気持ちで俺はドゥールと別れる。
これはなかなか幸先がいいぞと思いながら、俺は書庫へと走った。
………
……
「しかし坊ちゃんは何故あのようなことを…祝福を無くしたい勇者の話、不敬だと絶版されたそれの存在聞いて目を輝かせるなんて…」
***
何事もなく書庫に着いた俺は、ドゥールの教えてくれた右奥の本棚に真っ直ぐ向かう。
すると、本棚の隅の隅に目立たないような所に一冊の本が収まっているのに気が付いた。
『祝福という呪い』
著者名のない本は、表紙の所々が脆くなっていて、染みなのか表紙の色は各所で違う。題名もかろうじて読める程度だ。
恐る恐る本を開いてみると、劣化し始めている表紙とは裏腹に中身はわりと綺麗だった。
言語も問題ないなと軽く確認すると、改めて本を読むことに集中する。
『—…むかしむかし
あるところに立派な勇者がおりました。
女神から勇者という祝福を授かった彼は、魔王から国の民を守る為、長く果てしない旅に出ました。
旅の道中、仲間は傷ついていきます。
魔王への道はまだ遠く、一人また一人と仲間は倒れていきます。
勇者は一人になりました。
一人になった勇者は、ついに魔王を倒しました。
勇者は周りから称賛され、感謝されました。
勇者に国王は言いました。
「勇者よ、これからも国を守ってくれ」と。
国民達も口々に勇者を称賛します。
勇者は思いました。
「国は守れたが仲間は失った。仲間の一人も守れずに、どこが勇者なんだ」
国は勇者を再び戦地へとおくりました。
それは魔王ではなく、国同士の戦いでした。
勇者は人を殺しました。
勇者は憂いましたが、国民達は喜びます。
皆が勇者を勇者と呼びます。
彼は普通の人になりたいと思いました。
勇者ではなく、ただの人になることを望みました。
それでも世界はそれを許しません。
何故なら彼は“勇者”なのですから。
勇者は反対を押し切り、旅に出ました。
勇者という呪いを解くためです。
神の住まう都と呼ばれるあの頂へ、勇者は————』
…
……え、終わり?
中途半端な所で途切れたページには先がない。
破られたわけでもなく、最初からないと言った方が自然だ。
うーむ…すっごくモヤモヤするけど、この神の住まう都って所に行けば、希望はあるかもしれない。
問題はこの頂はどこにあるのか。次はそれを調べる必要がある。
試しに書庫にあるこの世界の地図や歴史の本を手に取って見てみる。
しかし、期待に反して、どの本にも神の住まう都という記述は見つからなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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次回は閑話です!




