ひとりかくれんぼ
痣。ここにも痣。
父親は僕に暴力をふるって、母親は僕を生んで死んだらしい。だからなのか。父親は僕を
殴り、蹴り、蹴り、蹴る。
終わっても僕の居場所なんてない。寝る場所もマンションだから小さく、起きるのも父親に蹴られて起きる。
「おい。学校。早く行け。」
僕は学校の途中。
コツンと小石が当たる。
声も聞こえる。
「あれー?死んだんじゃなかったの?」
「死ぬ勇気もないの?」
僕は学校も行きたくないし、家でも暴力をふるってくる親。なら。
「ただいま。」
誰もいない。
唯一のぬいぐるみがあるだけ。名前を熊きち。
「みんな僕がいやみたいだ。僕はなんなんだろうね。」
ビリリリリッ!
僕は熊きちの首をちぎった。いままでのストレスなのかな。
「熊きち。今日聞いたんだけど、ぬいぐるみって、炊くまえのお米でお前が殺してくれるんでしょ。綿だしてさ、ここにいれてさ。爪と髪をいれてさ。赤い糸で縫えば。これで。皆殺しかな。」
夜。
「こんばんはーふこうくん♪」
男の子は目をあけた。目の前には熊のコスプレをした美少女がたっている。
「君は誰?」
「くまきちだよ。不幸くん!」
「くまきちって、一人かくれんぼ用のぬいぐるみ?」
「そう!あなたが生命をくれたくまきちだよ!」
「生命?」
「一人かくれんぼっていうのはね。ぬいぐるみに生命を宿す受霊術のひとつなんだよ!それでどうする?お父さんも友達も殺していいの?」
「うん。いいよ‥‥」
「いや、君は自分で殺せないから私を召喚したんでしょ。」
笑顔だった顔は無表情になった。
「人に頼んで何が悪いんだ。」
「君はひとりかくれんぼをしようとして、なんなら自分も死ぬつもりだったんでしょ。そんなのだめだと思うよ。」
「死ぬのは自分の正義が、生きてる理由がないからもう生きていたってしょうがない。」
「あたしが変えてあげる!」
「熊吉がなにができるんだ。」
「あなたの寿命を使って今の状況を直してあげられるかも。」
「もう。いいよなんでも。それで。」
「それじゃあねぇ。いやだなって思ったらイヤイヤジャージャーのヤーっていって一回転したらいいんだよ。」
「死ぬのはイヤイヤジャージャー」
一回転。
「はぁ!朝か。」
「起きたか」
見上げるとお父さん。すっと足を背中につけ、ふくろはぎをあげた。察した。蹴られる。絶対。
「蹴られるのはイヤイヤジャージャー!!」
寝返りをした。
「っ‥‥!」
足が止まった。暴力的なお父さんのあの恐怖の元の足が止まった。
「止まったよ!熊吉‥‥!くまきち?」
いない。ぬいぐるみもなく、ただどこかしらから。
「あと7回。」
そのあとは簡単だ、僕は何かあるとまじないをした。イヤイヤジャージャーと、テスト、体力テスト、楽に楽にと、ある日、僕は小説が好きになった。から、、
「作家になれないのはイヤイヤジャージャー!」
一回転。
パタッと。目の前が暗くなった。
くまきち‥‥僕は夢を願ったのに。それを許してくれないのか。
「あなたは元々、体はもう強くなってない。寿命的に七回が限界だった。」
そこには、熊のぬいぐるみをもった熊のコスプレをした美少女。くまきちだった。続ける。
「ここは、黄泉の世界。僕はここでは、死神って言われてる。きて。」
そこには、多くの血液がポタポタとあるところに流れながら、黒く新たな黄泉の生き物が作られていく。それは、人間。
「くまきち‥‥これは人だよね。」
「うん。それだけじゃないよ。生きてる血液は汗とか怪我でどこかへ行ってしまう。土に帰ったり、変化したり、それで、初代の神は僕らを作った。僕らは駒だよ。絶対的な流れは血液でできてる。牛だってカブトムシだって。」
「元は神様の血ってこと?」
「そう。あのおまじないはここの君の血を使って発動するもの。って何冷や汗をかいているのさ。」
「だってこんな‥‥」
「君が僕を産んだ。元々は君の妹として産まれるはずだった。でも、事故で亡くなった母。狂った父。そうだこうしてる暇にすっと。無くなる。」
パタリと倒れた。作家希望。
「では、インタビューを続けます。」
「はい。」
スーツでがっしりと決めた、弱気そうな熊のぬいぐるみをももの上にのせた男性は答えた。
「父はある日、僕に暴力を振るいました。学校でもいじりやすかったんでしょう。石を投げつけられたり。靴を隠されたりしました。だからこの状況がどうやったら終わるのか考えました。簡単です。スッキリするように想像したらいいのです。僕はそれでここまで来ました。僕は妄想で生きてます。それは小説というものではなくてはならない想像です。」
記者はぬいぐるみは何かときいた。
「これはくまきちっていって」
本を持ち上げ、ぐっと握り前に後ろにはっきりと見えるようにし、
「この小説の参考資料です。これがあったから、ひとりかくれんぼという内容にしたし、こいつがいたから僕はがんばれました。」
ポンポンとそのぬいぐるみを撫でる。
「こいつのお陰でベストセラーですよ。」
「まるで、親子ですね。」
「母と子ですか?いえ。兄妹ですよ。」
「これで、インタビューは以上です。ありがとうございます。」
「お疲れ様でした。」
ぬいぐるみの熊には少し笑ってるような気がすると話題になった。