絶望と希望
嫌だ…死にたくない…。
助けて…良い子になるから…もう誰も傷つけない、誰に対しても優しくする、二度と悪意を向けないから…だから、だから、だから助けて…お願いします…神様でも誰でも良い…お腹から流れる血を止めてください…僕を、助けてください…。
……………。
<汝、救いを求めるか?如何なる対価を払ってでも>
っ!!!!?
(誰っ!?僕を助けてくれるの!?お願いします!何でもします、良い子にします、他人に優しくします、自分に厳しくします、お願いします助けてください!!)
<我が名は◼️◼️◼️、偉大なる神なり。汝を生かし、対価に◼️◼️を受け取る者なり。ここに契約は成り、我が存する限り汝は生を失わず死を遠ざけん。我が世界は過酷なれど、汝が死は失われた。我は汝の来訪を歓迎せん。目覚めよ、思うがままに生きよ。我が世界にて契約は絶対なり。例え何があろうとも我らが交わした契約は必ず履行される。努々忘れる事なかれ>
(えっ?え、えぇ?ど、どういう事?何が…え…?)
突如感じる喪失感。否、すぐに失われた事も感じない。そこには何も無い。あったはずの温かさ、あったはずの冷たさ、その他多くの感覚が失われていく。何も感じる事ができないまま、自分はただ思考のみを繰り返し、いずれ眠りに落ちる。願わくば、目が覚めた時には目の前に家族がいる事を願いながら…。
◇◆◇
………なんだろう。温かい、温かくて…暖かくて…何も感じない。ああ、冷たくなった…何も感じない。何かを感じてすぐに失われていく…とてつもない気持ちの悪さを…感じなくなった。怖い、怖くなくなった。辛い、辛くなくなった。苦しい、苦しくなくなった。少しだけ嬉しくなって、すぐに嬉しくなくなった。それが悲しくなって、悲しくなくなった。
いずれ何も感じなくなる未来が見えて、どうすれば良いのか考えて、どうにもならない現実に泣き叫ぶ。何が起きているのか、分からないことに苛立ち、落ち着き、何も感じなくなる。
そうなってしまったからには仕方がない。ただただ生きるだけだと…諦め…。
否、割り切れるものか、そんな簡単に割り切れるわけがない、許せるわけがない、このまま何もかもを感じられなくなったしまったならば、それはもはや自分ではない、人形。そう、人形だ。理不尽な世界の操り人形に他ならない。
許せない、許さない。己のものを貪るナニカに対する激情。
それすらも失われようとしていることに気づき更なる激情が湧いては奪われ湧いては奪われ湧いて奪われ、泣き叫びながら延々と繰り返していく。許せない、許せない、許せない。
湧き上がる拒絶。湧き上がる抵抗。湧き上がる、気が狂いそうな程の怒り。怒り。怒り。
憤怒。
延々と延々と延々と繰り返し繰り返し繰り返して……………狂った。
同時。己にかけられる、遥か昔に聞いたような声音。
<汝が犯せし、契約が不履行、世界に対する拒絶、神に叛きし大罪に世界の理にて咎人の冠を与える。許されざる身にて世界を許さぬと言いのける魂に憤怒の大罪を背負わせる。世界の罪をその身に宿し、贖罪を果たせ>
…。
お前か、お前か、お前が!お前がお前がお前がお前がお前がお前が!!!!!!!!殺す!奪い取る!奪い返す!
身体など、精神など、魂など知った事か!
僕は死なない、この怒り晴らさず死んでなるものか。
この怒りを忘れない。この怒りを奪わせない。この怒りは、この希望は絶対に渡さない!
狂って叫び、決意に叫び、憤怒に叫ぶ。
理不尽に泣き、不条理に泣き、憤怒に泣く。
◇◆◇
ある一家に、小さな体に大きな罪を背負う赤子が生まれた。