ヒトサライ蝶
菫色の蝶が人を攫った事件は
もう何回目のことだか分からない
日常生活を送らざるを得ない人々も
いつの日か蝶に背を向けるかもしれないと
不可思議な恐怖に包まれている
蝶を討伐する仕事もいい加減飽きてきた
剣が錆びるばかりで何も楽しくない
中には訓練用の木刀で狩る者すら現れるほどだ
いつか顔を見ることはできなくなるのだろうか
使い捨てに自らなるほどの気力はない
目の端に見える菫色は誰かが赤くした
それが余計に剣を錆びらせる
蝶はいつまでも人を攫う
自分が狙われる日も近いのだろうか