表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

70/70

#69 二対一

 二対一の構図。

 端から見れば一人の方が圧倒的不利であるとわかる。

 イリーナ先輩の刺突も速い。更にここにアラン先輩の攻撃が加われば回避するのも難しいだろう。

 ただなぁ、それは一般人に限る話なのだ。

 リオンの高速連撃にロザリオの速さ。これらと比べてしまうとどうしてもイリーナ先輩の速さが遅く感じる。

 加えてスキル〝思考加速〟により攻撃が到達するまでいくらでも対応策を考えられる。

 ちなみに〝未来予測〟を使えば簡単に回避できるが、二対一では得られる情報が多いので負荷が生じる。

 それらを処理するより〝思考加速〟を使う方が効率が良いとのことだ。【ユグドラシルの枝】からの助言である。


 俺はイリーナ先輩の刺突を【ユグドラシルの枝】で受け流し、軽めに腹部へ一撃を与える。

 あくまでも模擬戦だから本気を出して怪我させてはマズイ。

 リオンには本気で向かっても俺が怪我するだけだが、イリーナ先輩の場合は違う。柔な鍛え方はしていないと思うが念のためだ。


 イリーナ先輩を吹き飛ばしたのも束の間、アラン先輩が間合いを詰めて拳を振り下ろそうとしている。

 明らかに近接パワータイプだよな。拳を受け止められる自信はあるが次の一手に繋げるためには回避するべきか……。


《回避するのをオススメします》


 どうやらお告げでも回避した方が良いと。

 じゃあ、回避一択で。

 俺はバックステップでアラン先輩の拳を回避する。

 耳に入った空を切る音は重かった。多分本気じゃなくてこれなのだから本気で殴られたら結構なダメージになるだろうな。


 まあ今はそんなことどうでも良し。

 大振りによって生まれた隙を見逃さず、アラン先輩にも一撃を与える。

 今回はちょっと強めだ。イリーナ先輩と違ってアラン先輩は厚い筋肉やらスキルで威力が抑えられると思うからこのぐらいがちょうど良い。


 さて、第一波を終えて抱いた感想はとりあえずは上々ってところかな。

 アラン先輩もイリーナ先輩も予想外の出来事に驚いている様子。まあ、一年生に吹っ飛ばされたとなると驚く──というかショックを受けるかもな。

 

 しかしカーティス姉妹が相手だったら甘過ぎる。

 あの二人であれば俺の反撃も余裕で回避してくるし、下手すれば今の一瞬で俺はやられているかもしれない。

 決して先輩たちを侮っているわけではないが、敵にも格上がいるという事実を知ってしまった以上はこの程度で満足してはいけない。


 その後、対カーティス姉妹用に【ユグドラシルの枝】が考えた戦略を試しながらアラン先輩とイリーナ先輩と勝負を続けていった。

 さすがは【ユグドラシルの枝】と言ったところだろう。

 二対一という状況下でも常に最適解を示してくれる。おかげでこっちも指示通りに動いて失敗しないように緊張しながら動いているけどね。

 それでも人間である限り失敗も当然する。

 指示に追い付けず失敗も少々あった。

 もしカーティス姉妹が相手ならば致命傷に成りかねないがその時はその時。そうならないためにも練習あるのみなのだ。

 まあ、例え失敗したとしても【ユグドラシルの枝】が即座に別の指示を出してくれるから問題ないと言えばそうなんだけどね。結局のところ俺が指示についていけるかなのだ。


 模擬戦も始めて十五分ぐらいが経過した。

 アラン先輩とイリーナ先輩は後半から俺を一年生とは見ずに同学年、もしくは上級生を相手しているような目で向かってきていた。

 本気も本気。ほぼ全ての攻撃が全力で確実に俺を仕留めにきている。

 一応俺は一年生なのだから加減してほしいのだけれども……。

 先輩たちの攻撃を一度も当たらずに回避しているのが原因か。【ユグドラシルの枝】の指示が優秀過ぎる故に先輩たちを本気にさせてしまっている。

 

 ここまで来たら模擬戦の域を超えていると思うし、さすがにバルガ先輩も止めに入るだろう。

 なんて思ってたが一向に止める気配はない。マーシャ先輩もじっくりと観察している。

 ちなみにロザリオは俺と先輩たちの模擬戦を見て今にでも混ざりたい様子だった。

 何だったら今すぐにでも変わってあげたいと思う俺である。


 それにしても手の内を隠しながら戦うのは疲れる。

 先程マーシャ先輩も「次の行事のこともあるから仲間の手の内を教えることはできない」ような感じで言ってたし、リオンからもその行事のことは簡単にだが聞いている。

 どうやらその行事というのは高等部の生徒全員で行う行事らしい。もちろん戦闘がメインの行事だ。

 となると情報は表に出さない方が懸命だろ?

 必要最低限の動きと攻撃、魔術スキルも同様だ。

 加えて【ユグドラシルの枝】の指示に従うのだから苦労する。手の内を隠さなかったらもっと楽できた。


 なんて愚痴を溢しても仕方がない。

 それにもうそろそろこの模擬戦も終わりそうだ。

 アラン先輩とイリーナ先輩は全力を出しているせいか疲弊している。体力に自信があるアラン先輩はまだしも、イリーナ先輩は肩で息をしているほどだ。

 俺はまだまだやれるが先輩たちに無理をさせるもの良くないだろう。

 

「バルガ先輩、もうこの辺りで終わりにしませんか?」

「うむ、そうだな。決着がつかないことに不服があるかもしれないがそれは後日行われる〝学年別対抗疑似戦争〟にて決着をつけるといい」


 バルガ先輩がそう言って模擬戦は終了したのである。

 そして、イリーナ先輩は立つのも精一杯だったのかその場で座り込んでしまった。


「はぁ~!! まさか一年生相手に一撃も与えることができなかったなんて思わなかった。普通に自信無くしそう」

「そう言うな、イリーナ。確かに今回はアルクが一枚上手だったが俺たちだってまだまだ伸び代がある。再戦するまでに腕を磨けばいいだけの話だ」

「アラン……。そうね、その通りだわ。一年生に敵わなかったことが問題じゃない。今日を糧にして強くなれば良いのよ」

「その意気だぞ。さあ、これから反省会だ」


 なんだかバルガ先輩とマーシャ先輩と違って二人は仲が良い感じがするな。


「やれやれ、また二人だけの世界が始まったわ」

「二人だけの世界とは?」

「あの二人、結構前から付き合ってるのよ。まあ、人の色恋に口出しする権利はないし応援したいけど、ねぇ?」


 相手がバルガ先輩の部活だから複雑な心境だと。

 そんなことより俺はアラン先輩とイリーナ先輩がお付き合いしていることが今日一番の驚きであった。

 意外な組み合わせ──と言ったら失礼だがこの二人がそういう関係になるとは。


「だったらマーシャ先輩もバルガ先輩とお付き合いしてみては? もしかしたら今まで見えなかった一面も見えるかもしれないですよ」

 

 なんて冗談で言ってみたが物凄く嫌そうな顔をしてた。

 そこまで拒絶しなくてもいいと思うけど。バルガ先輩が可哀想だ。ってバルガ先輩真横で見ておいて全然気にしていないな。


「筋肉しか脳のない男に見えなかった一面なんてないわよ。どうせ年がら年中筋肉のことしか考えていないわ。この筋肉ダルマのことは知り尽くしてるからわかるのよ」


 う~ん、わかる気がする。今もバルガ先輩は筋トレのメニューでも考えていそう。

 でも今バルガ先輩のことを知り尽くしていると……。それってつまりバルガ先輩のことを誰よりもよく見ているってことでは──

 いやこれ以上は止めよう。

 世の中触れてはいけないことは沢山ある。多分これもそうだ。というかこれ以上進むのはなんか怖い。


 というわけでこれにて模擬戦は終わり!!

 残りは自由ということで俺はしばらく休憩。レントンとロザリオは体験入部という形で先輩たちと交流するのであった。

新作『奈落の底で生活して早三年、当時『白魔道士』だった私は『聖魔女』になっていた ~幼馴染みパーティーと再会したけど追放したくせに今更戻ってほしいと頼まれても遅いです。自由気ままな無双生活、始めました~』


という作品を書きました。

簡単に内容を説明するとゴリゴリに強くなった女の子が無双の旅をするお話です。


よろしければそちらも読んでいただけると嬉しいです。




※作者からの大切なお願い。


最後まで読んでいただいき誠にありがとうございます。

本作品をここまでお読みになって──


・面白い!

・続きが気になる!

・更新頑張って!


と少しでも感じたり思っていただけましたら、広告下の【☆☆☆☆☆】をポチっと押して応援してもらえると、作者のモチベーションがいつも以上に \超絶爆上がりッ!!/ になります。

ブックマークもしていただけると嬉しいです。


ですので皆様、是非ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ