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気付けば彼は沢木と出会った川沿いの道にいた。

人を殺してしまった。哲也の頭の中では、それだけが支配していた。


とんでもないことをしてしまった。

こんなにも嫌な気持ちになると言うことは、これから自分がやろうとしていることは、間違っていることなのだろうか。


この街に住む人間、すべてが恨めしい。できることなら、一人一人に謝罪させ、痛め付けてやって、もう一度謝罪させてやりたい。今まで自分を蔑ろにしたことを後悔させなければならない。この街の人間は、誰もが悪だ。僕を救おうとしなかった、軽んじた、慮ることがなかった。そんな罪を背負っている。それを贖わせることは当然のことだ。


しかし、あの新藤という男が言ったように、本当は悪くない人がいるとしたら…。自分のことを好きになってくれる人がいるとしたら…。視線を落として歩く哲也は、今ならこの街に住む人間すべてに復讐しようなんてことはやめられるかもしれない、と考えていた。


やめた方が良いかもしれない、と哲也が顔を上げたとき、視界が何かに遮られた。それは人の体だ。自分より倍近い大きな体の男が、目の前にいたのだ。それに気付かなかった哲也は、大人に当たってしまう。大人からしてみれば、少し当たったという程度かもしれないが、哲也には巨大な壁に迫られたかのような大きな衝撃だった。突然だったこともあり、踏ん張ることはできず、哲也は尻餅を付く。哲也はその大人が自分に対して、どんな態度を取るのか、無意識に待ち構えていた。この大人の言葉こそ、自分の中の、人間すべてに対する、善悪に関する判断を左右させる、という確信があったのだ。


それなのに、その大人は何も言わなかった。


謝るわけでも、罵倒するわけでもなく、哲也を一瞥すると小さく舌打ちし、そのまま歩いて行ってしまったのだ。だから、哲也はその大人の足を曲げた。大人は突然足が曲がって痛みに声を上げながら、土手を転がり落ちて行く。


哲也は立ち上がると、復讐の遂行を決意する。やはり、この街の人間は誰もが許しがたいものだった。そんな人間たちは、大きな痛みを知り、何を蔑ろにして生きているのか、知らなければならない。その生き方を悔い改めさせなければならない。


「見つけたぞ、異能犯」


決意した哲也が進む道を遮るように、一人の女が立っていた。眩しいくらいの金髪に、妙にテカテカした上着を羽織っている。今までなら、決して声をかけられたくないようなタイプだ。


「流石、成瀬さんだな。新藤のやつを張ってれば、異能犯にぶち当たるってね。子供だったのは驚きだが、観念してもらうぜ」


何者だか知らないが、どうやら哲也を捕まえるつもりらしい。それが何者であって、どんな理由であろうと、哲也にはどうでも良いことだった。


今から復讐を始めようと言うのに、煩わしいやつだ。それだけである。すぐに片付けて準備をしよう。哲也は歩き出した。

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