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「そういうわけで、ハルカを助けたい。君も手伝ってはくれまいか」


「……分かりました、手伝います」


ミャン太の話を聞き、新藤は二つ返事で協力することを約束した。これには、猫であるミャン太も驚いたのか、こんなことを言った。


「ほう。人間とは、ハルカと静流の他は、救いようのない下衆ばかり…と思っていたが、そうでもないらしいな」


「人類に対する誤解が解けたのなら、少し嬉しいです。それで、ミャン太さんはご自身の家が、どこにあるのか覚えていないのですか?」


「その通りだ。覚えていれば、静流の協力だけで十分でだし、何度も夜に出歩く必要もなかった。君は吾輩とハルカの家がどこなのか、知らんかね」


「うーん…何か情報があれば、特定できるかもしれません。例えば、ハルカさんの苗字は分かりませんか?」


「苗字?」


「えーっと…では、仕事は何をされているのですか?」


「仕事?」


「出身地とか…」


「出身地」


これには新藤も腕を組んで考え込んでしまった。


「これは如月さんに相談したいなぁ。ちょっとヒントが足りなくて…」


「ふむ。では、あの赤い髪の女に相談してみてほしい」


「良いんですか?」


「静流が信じた、お前が信じる人間を、吾輩も信じよう」


「良かったー。ちょっと電話するので待ってくださいね。あれ?」


思ったよりも早く、ハルカを救出できそうだ、と新藤が電話を取り出したとき、ちょうど如月からの着信があった。


「あ、如月さん。無事ですか?」


「私は無事だ。だけど、すまない。ミャン太氏は取り逃がした」


「それなら、大丈夫です。今一緒にいます」


「なんだと?」


如月が低い声を出す。何か気に入らないことを言っただろうか、と思ったが、そうではないらしい。


「だとしたら、早急に私の言うことを聞いてほしい」


「なんですか?」


「私が渡したメガネ、ちゃんと持っているかね」


「もちろんです」


「すぐにかけろ」


どうして、という疑問はあったが、それよりも言う通りにすることが先だろうと判断した。


「かけました」


「良し。大事なことを言う。先程、ミャン太氏を追跡中、彼が襲われた。私はそいつの足止めをしている途中にミャン太氏を逃がしてしまった」


「何者なんですか?」


「分かりやすく言えば、死神だ。ミャン太氏のような魂だけの存在をエラーと判断して、排除することを目的としている」


「死神…もしかして、大きな刃物を持っているんですか?」


「そうだ。もう見たのか?」


「いえ、さっきミャン太さんから聞きました」


「そうか。だとしたら、話は早いな。その死神だがな、この世界を構築するプログラムの一種だ。自然現象のようなもの、と考えて欲しい。人は老いることを避けられないし、死人は生き返らない。食べ物は腐るし、時間を止めることもできない。そういうルールのようなものだ。それが、ミャン太氏を狙っている。たぶん、君はそんな存在から彼を守ることになるだろう。それが、どういうことか分かるかい?」


「えーっと…依頼人は死ぬ気で守れ、ということですか?」


如月が溜め息を吐いた。


「そうじゃない。やつはこの世界のルールだ。それと戦うと言うことは、台風や地震のような自然災害を一人で喰い止めるよりも難しい」


「そんなにやつに、ミャン太さんは襲われているのですか?」


「そうだ。だから、死神に遭遇したら、まず逃げろ」


何となく、生ぬるい風が吹いた気がして、新藤は振り返りながら、如月に聞いた。


「……ちなみに、その死神はどんな姿をしているのですか?」


「たぶん、一目見ればそれが死神と分かる。如何にも死神という格好だからな」


「ボロボロのローブを被っているとか?」


「そうそう」


「それで、顔面は髑髏みたいで、目の部分は赤く光って…武器は大きな鎌ですかね」


「そういうこと。まるで、目の前にいるみたいにイメージできているじゃないか」


「こっちを見ています」


「なんだって?」


先程、新藤の体を撫でつけるように吹いた風の向こうに、それは立っていた。確かにどこからどう見ても、それは死神であった。

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