28
飯島清司は職場で頭を抱えていた。
妻から離婚の申し出があったからだ。こんなはずではなかった。離婚について、職場の上司や同僚には、何と説明すれば良いのだろうか。
妻を殺すために、殺し屋を雇ったことが見つかった、なんてことは、決して言えない。自分のプライドに傷がつかないためには、他人からの評価が落ちないためには、どんな説明が適切か。そんなことを考えていると、頭が痛かった。
そうだ、もう一度…殺し屋を雇うのはどうだろうか。前回のやつは無能だった。今度こそ、高い料金を払ってでも、もっと凄腕の殺し屋を雇うのだ。そして、離婚だ何だと騒ぎ出す前に、あの女を葬ってしまえば良い。そんな考えが浮かぶと、口元が緩んだ。
「こら、君…どこから入ってきた!」
オフィスに荒々しい声が響いた。何だろうか、と顔を上げると、男が一人、侵入してきたようだった。警備員や職場の人間が、何人かで取り押さえようとするが、男は凄まじい力で振り払った。そして、視線を右から左へと漂わせ、その目が飯島を捉えた。すると、男は僅かに笑って、こちらへと歩み寄ってきた。
「お、お前は…!」
飯島は逃げ場を探すが、恐怖のあまり足が動かない。怯えているうちに、大男は飯島の目の前まで迫っていた。そして、大男は拳を振り上げるのだった。
次の日の新聞に、小さく取り上げられた事件がある。そこには、オフィス街のど真ん中で、空から男性が降ってきた、と書かれていた。
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