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そろそろクレアの仕事も終わった頃だろうか、とコレクション部屋に顔を出す新藤。しかし、クレアは石のレプリカを手にしたまま、戸惑うように右往左往するばかりだった。


「何をしているんですか?」


声をかけると、どこか決まりが悪そうに振り返る。


「ない」


「え?」


「本物の石がない」


「そんなわけがないでしょう。確かこの辺りに…」


部屋の中央、壁際に置いてあったはずが…確かに、石はなかった。二人で部屋中を探すが、やはり石は見当たらない。高月が移動させた? これまでの経緯を考えると、それが自然だ。しかし、新藤はそこはかとない嫌な予感があった。事態はもっと深刻でまずいことになっているのでは、と。


その不安が、新藤の直感を冴えさせたのだろうか。新藤はこの部屋に恐怖の片鱗があるような気がして、視線を巡らせた。


「た、足りない」


新藤の呟きに、クレアが振り返る。


「何か言ったか?」


「人形が足りない! 確か、十体あったはずなのに」


人形は八体。修理に出したのだろうか。いや、だとしたら……あの夜に壊れた人形が、なぜそのままの状態で倒れているのだ。新藤はすぐに携帯端末を取り出し、如月に電話を入れる。


「作戦は成功したかい?」


「いえ、例のコレクション部屋に石がありません」


「……なるほど。高月が移動したのかな」


「それだけのことで済めばいいのですが…」


「どういうこと?」


「先日の人形が姿を消しています。既に動き回っているのかも…」


暫く沈黙があったが、考えがまとまったのか、如月は再び口を開く

「最悪のケースとしては、会田真司の魂が人形に乗り移ってから、石を持ち出した、と考えられるね。本体と言える石を持っていれば、守りながら攻撃に出れる」


「だとしたら、人形は既に文香さんを探して外に…?」


「たぶんね。でも、確証がほしいな。高月に尋問できないのかい?」


「今、気絶しています。目を覚ますまで、もう少し時間がかかるかもしれません」


「あ、君がやったの?」


嬉しそうに笑う如月だが、新藤は真面目に答えた。


「はい。腹が立ったので殴りました」


電話の向こうで如月が驚いたような間があったが、すぐに愉快そうにフォローする。


「良いじゃないか。いけ好かないやつだったからね。殴られても仕方がないさ」


そういうことではない、と新藤は心の中で否定するが、本当のことを話す必要性もなかった。


「しかし、尋問はあまり気が乗りません。もっといい方法が……」


そのとき、新藤の携帯端末に別の電話が入った。


「瀬崎さんから連絡が入っています」


「あの子なら、思わぬ角度で情報を持ってきてくれるかもしれない。報告は後で良いよ」


瀬崎からの通話に切り替える。


「新藤さん、気のせいだったら、ごめんなさい。この前、高月先生のお屋敷で見た人形にそっくりな人とすれ違ったかもしれません。何か、ありませんでしたか?」


「……瀬崎さん、今どこにいるの?」


「大学から駅まで歩いているところです。その途中で、人形みたいな人にすれ違って…」


「今からそっちに向かうよ。瀬崎さんは絶対に大学へ近付かないように!」


恐らく、高月文香は大学にいる。会田真司の魂は、その近くまで迫っているようだ。

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