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結局、クレアは新藤に捕らえられてしまった。


「重いぞ、新藤くん。何で私がこんな壺を…」


新藤がクレアを拘束しているため、大事な壺は如月が抱えている。


細く明らかに腕力のない如月に壺を運ばせることは不安でしかなかったが、新藤が器用に空いた手でフォローしているため、それを信用するしかなかった。


「何となく想像できなくもないのですが、どうして高月邸に侵入したのですか?」


新藤の質問。事情は把握しているようだが、素直に答えるわけにはいかなかった。


「黙秘する」


溜め息が返ってきた。


「じゃあ、どうしてこの国に戻ってきたのですか? もう用はないでしょう」


なぜ戻ってきたのか。そう問われると答えにくい。


「それは、お前に……」


ただ、新藤に何か言ってやりたかった。


でも、何を?

自分の行動の意味を、自分で説明できず混乱するクレアに、新藤は重ねて質問する。


「僕に、何ですか?」


その質問が何だか無神経に感じて無性に腹が立った。


「お前を殴り飛ばすために戻ってきたのだ!」


力を入れようとしたが、肩を固められた状態で拘束されているため、痛い目に合うだけだった。


「そんなことより、宗谷雄二郎と知り合ったきっかけだけでも教えてくれないか?」


今度は如月からの質問だった。クレアは少しだけ考える。この女に対しては、怒りを抱くことはない、素直に答えてやろう、と。


「三日三晩、飲まず食わずで、ついに倒れたところを助けられた。今も生活を助けてもらっている。私は店長に恩返しするためなら、何でもする」


「何でも?」


と新藤に強調され、居心地が悪くなる。


「ある程度のことなら、何でもする」


取り敢えず、言い直した。


「なるほど、恩返しですか。確かに大切ですね。もっと非常識な人格だと思っていただけに、感心ですね」


「と、当然だ。私は潜入調査のプロだからな。常識に精通してなければ、人の裏をかくことはできない」

「でも、不法侵入は駄目なことですから」


「……分かっている」


クレアは観念した。そして、肩を落として、新藤に乞うしかなかった。


「頼むから、店長に手荒なことはしないでくれ」


新藤は小さく笑い、頷いた。


「当たり前です。安心してください」


その気配を背中で感じたクレアは、心の底で安心する。


だが、次の瞬間には、誰がこんな男を信頼するものか、と唇を引き締めるのだった。

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