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15

翌日、新藤が事務所を訪れると、驚くべき光景を目にした。珍しいことに、如月が既にデスクへ座っていた。


「ど、どうしたんですか?」


思わず驚きをそのまま口にした新藤だが、如月の不機嫌そうな視線を受け、すぐに彼女が何をしているのか気付き、苦笑いを浮かべて誤魔化した。寝ていないのだろうか。黙って事務所を出て、如月のために駅前のハンバーガーを買って帰ると、作業に一段落付いたのか、彼女は体を伸ばしながら欠伸をしていた。


「何か分かったのですか?」


聞きながら、ハンバーガーとポテトが入った紙袋を如月のデスクに置く。礼を言って早速ポテトを口に放り込む如月は、目の前のモニターを指差した。新藤が覗き込むと、名前と住所、それから電話番号らしいものが並んだリストが表示されている。


「高月が美術品を手に入れるとき利用する骨董屋や美術商をピックアップした。今日の仕事はこのリストを順番に回ることだね」


「かなりの数ですね」


ざっと目を通した感じだが、三十は超える名前がある。


「これだけの骨董屋や美術商と関わりを持つだけでも大変じゃないですか。きっと、高月さんは仕事も趣味も手を抜かない人なんでしょうね」


新藤は素直に感心してみせるが、如月は肩をすくめた。


「どうだろうね。私も別に詳しいわけじゃないが、このリストを見ても、そういう印象は受けなかった。何と言うか、ただ集めているだけでこだわりが見えてこないんだ。統一感がないと言うか、信念がない。文字通り、彼の趣味が見えてこないんだよね」


「適当に集めている、ということですか?」


如月はその質問に対して、肯定も否定もしなかったが、高月をこう評した。


「人は仕事だけでは生きていけない、と言うが、高月を調べれば調べるほど、それが真理かもしれないと思ってしまうね」


「僕は逆であるように感じましたが…? 高月さんは何よりも仕事を優先しています。仕事が趣味と言わんばかりに」


何よりも、妻が危険な目に合う恐れがあるにも関わらず、仕事を優先している。


「彼の言動を見る限りでは、そうかもね。でも、このリストを見ると彼の焦りが見えてくる。自分の中の空虚を埋めるため、必死になっているような……。仕事以外の何かを見付けなければ、いつか自分が壊れてしまうように感じているのか。体を鍛えている、というのも、そういう意図があるのかもしれないね」


そんな話の後、新藤と如月は事務所を出た。如月が作ったリストにある骨董屋や美術商に話を聞くためだ。

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