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11

文香の部屋に戻ってきた新藤と如月。そのとき、部屋の中から妙な物体が出てくるところを目撃した。それは、気体のような何か。色の付いた煙が塊になって、ゆらゆらと揺らめきながら宙を移動していた。まるで、人魂だ。


幽霊に関係する何かに違いない。そう判断した二人は、咄嗟にそれを追おうとしたが、文香の寝室から、目出し帽を被った小柄な人物が飛び出して来た。問題は一つではないらしい。


「私があっちで、新藤くんがこっちだ」


それは如月が声にしたわけではないが、アイコンタクトによる意思疎通だった。二人は頷き、如月は人魂を追い、新藤は目出し帽の人物へと歩みを進める。


目出し帽の人物は、こちらを見て、明らかに動揺したようだった。新藤は訝しく感じたが、あくまで冷静に、謎の侵入者を捕らえなければ、と考える。さらに目出し帽の人物へと距離を縮めようとしたそのとき、文香の部屋から、またも何者かが飛び出した。


それは高月文也だった。


彼は忍び込んだ賊を自身で捕らえようと考えたのか、目出し帽の人物に向かって殴りかかろうとしている。


高月が出した拳はコンパクトだが鋭い。目出し帽の人物が、上手く頭の位置を変えながら後退して、その拳をやり過ごしたことも驚きではあるが、高月のテクニックは付け焼刃、というわけではない。


目出し帽の人物が壁際に追い詰められると、高月は慎重に近付きつつ、拳を小さく動かくフェイントを見せた。目出し帽の人物からしてみると、いつ飛んでくるか分からない鋭い一撃を回避するためには、五感だけでなく、第六感も駆使するしかない。


高月の動きが一瞬だけ止まった……かと思うと、目にも止まらない高速の一撃が放たれる。目出し帽の人物は、体ごと左に逸れると、高月の追撃がくるよりも先に、廊下の奥へと消えようとした。


「僕が追いかけます! 高月さんは、ここで二人を守ってください!」


新藤は、目出し帽の人物を追って駆け出す。高月の横を走り抜けるとき、彼が一瞬だけ、皮肉めいた笑みを見せたような気がしたが、新藤は勘違いだと思うことにした。


目出し帽の人物の足は速いが追いつけないわけではない。ただ、目出し帽の人物の背を眺めながら走ると、いつだかもこんな風景を見たような気がする、とデジャブのような感覚を覚えた。


目出し帽の人物は、侵入口として使ったのであろう、開いたままの窓から身軽に外へ出る。ここは二階ではあるが、新藤も躊躇なくその窓から外へ飛び出した。


着地に成功し、すぐに走り出したが、その追跡劇は長続きはしなかった。目出し帽の人物が塀を駆け上がろうと足を止めた瞬間、新藤が追いついたのだ。

腰の辺りに組み付き、塀から引き離すと、地面に叩き付けるように投げ飛ばす。倒れた相手に膝を乗せて、体重をかけて自由を奪ったところで気付いた。


目出し帽の人物は、小柄で華奢だ。まさか女性だろうか、と。


「動かないでください。大人しくしてくれたら、悪いようにはしませんから」


警告する新藤だったが、目出し帽の人物は酷く暴れた。


「だから、大人しくしてくださいってば!」


「離せ!」


その声に聞き覚えがあった。

そして、記憶を探れば、割りと最近聞いた声だと気付く。


「まさか!」


新藤は、唯一露わになっている青い双眸に確信を覚えつつ、その人物が被る目出し帽を無理矢理、剥がし取った。


「やっぱり! クレア、どうしてここに!」

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