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ホテルを脱出し、新藤は何とか如月と合流した。乱条が成瀬と連絡を取ったおかげで、スムーズに次の隠れ家へ移動できたのだ。そこは、都市からやや離れた場所にある豪邸だった。決して古くいものではなく、近代的なデザインで、庭にはプールまで備わっている。周りに別の住宅は少なく、田園が見られる程度なので、車が近付いてきたら、すぐに分かるだろう。


乱条は、成瀬に顔を合わせるまで、怒られるのでは、と珍しく肩を縮めていたが、そうはならなかった。


「もう少し早く合流しろ」


成瀬はそれだけ言って、乱条に状況を報告させた。新藤は、少女の拘束を解き、少し休ませることにした。如月の様子が気になるが、まずは少女と話すべきだろう。


少女は何を考えているのか、ただ項垂れて黙っている。いくつか質問してみたが、やはり返事はなかったので、新藤は仕方なく奥の手を使うことにした。


「先生、助けに来ましたね」


少女は顔を上げると、新藤を睨み付ける。


「貴方を助けにきた、と…はっきり言っていました。どうやって、あの場所を見付けたのかは分かりませんが、そのうち、ここにも駆け付けるのではないでしょうか」


「……違う。例え、ここに現れても、それは如月葵の命を狙ってやってくるだけだ」


「どうでしょうか。あの人は、貴方の命を優先しているように見えましたけど」


少女は数秒黙った後、不敵な笑みを浮かべた。


「お前、あれだけの大口を叩いて、先生に一撃で負けていたな。あの野蛮そうな女が現れなければ、間違いなく死んでいたぞ。約束がどうとか言っていたが、己の無力さを思い知っただろう」


新藤は苦笑いを浮かべる。


「あれは…決着が付く前に乱条さんが割って入ってきただけです。次は、ちゃんと勝ちますよ」


「馬鹿を言うな。あれだけの実力差、短期間で埋められるものではない。私に、殺しの世界から足を洗うように言っていたが、これで分かっただろう。私はもう抜け出せないんだよ。先生が生きている限り、私は人を殺し続けるんだ。きっと、これからもな。止めたいなら、私を殺してしまった方が早い」


「……とにかく、まだ勝負は決まっていません。貴方の先生は、きっとここにも現れます。そのときは、必ず僕が彼を倒します」


「本当に馬鹿みたいだな。次は死ぬぞ」


歪んだ笑みを見せる少女を、新藤は真っ直ぐ見返した。実際のところ、必ず倒す、と言い切ったが新藤に、ホン・ウーヤーに勝つ秘策があったわけではない。そもそも、ホン・ウーヤーがここを見つけ出すかどうかも分からないが…それについては、確信があった。彼は、絶対にこの場所を付き止め、正面から襲撃するだろう。そして、そのときは絶対に勝たなければならない。


新藤がその瞬間をイメージしていると、部屋の扉がノックされた。顔を出したのは、如月だった。如月は、新藤の顔を見て僅かに微笑む。新藤も似たような表情で頷いた。


「成瀬さんが呼んでいる。現状の確認と作戦会議みたいだ」


「分かりました」


「その娘も連れてくるように、だってさ」


「彼女も?」


新藤は少女を一瞥する。彼女が返す鋭い視線に、新藤は肩を落とした。




リビングのテーブルを囲むのは、新藤と如月、成瀬、乱条、そして暗殺者の少女だった。新藤と乱条の報告を聞いて、成瀬が話をまとめた。


「じゃあ、その武装集団が乱入してきたおかげで、命を拾った…ということかい?」


新藤は頷く。


「はい。何て言うか…明らかに危ない感じの人たちでした」


「こちらでも、そういった集団が派手に動いていないか、調べたんだけどね。一つ、それらしいものがあった。流星会…聞いたことはあるだろう?」


新藤は頷く。流星会は、極道に近い集団だ。


「流星会は、一代で成り上がった組織でね。巨大な製薬会社の支援で、一気に勢力を拡大させたんだ。ただ、数年前に勢いを失って、大人しくなったと思われたんだが…」


成瀬の説明に、新藤が首を傾げる。


「どうして、その流星会が今回の件に絡んできたんです?」


「そうそう、そこなんだよ」


成瀬は意味ありげな笑みを浮かべる。


「流星会が数年前に勢いを失った理由なんだけれど、当時の長が暗殺されたことが原因だったんだ」


暗殺、という言葉を聞いて、連想することは一つだ。成瀬は続ける。


「それで笑えるのは、乱条が先程の襲撃のとき、音信不通になった理由だ。乱条、話せ」


成瀬の指示に、全員の視線が乱条に集まった。


「あたしは、あのとき下の階を見回っていたんだ。ロビーまで降りたら、明らかに怪しいやつらを見付けたもんで、声をかけてみた。そしたら、いたぞ金髪の女だ、って突然追い回されてな。向こうは武器を持ってるものだから、少し手こずってしまってよ。それで成瀬さんからの連絡に応答できなかった」


呆れたように肩をすくめる乱条。


「金髪の女って、もしかして…」


新藤の呟きの後、全員の視線が金髪碧眼の少女に集中した。

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