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12. 殲魔
幻でも見ているのかと、そのとき彼女は本気で思った。
だが幻と片づけるには、あまりにくっきりと楽しげに興味深げに男が笑う。倒れかけた少女を支える腕は、ちがう温度を、示している。
ぱっと、半ば無意識にカリアは彼から身を離した。反応を予想していたのか、男――いるはずのない「はず」の彼女の「主」も、特に驚いた様子もなく手を離した。
呆然とカリアはその名を呼んだ。
「へい、か」
「なんだその顔は。都の危急の事態であると、俺に伝えたのはおまえだろう、ラピリシア第四魔術師団長」
彼は――王は悠然と笑う。明日までは戻らないはずだった、このエクストリーを統べる人物がカリアを呼ぶ。
いったいどうやって。彼女が問える暇もなく、王は、その表情を真剣なものへと変えた。またひとつ異常の光があがった、北区画に目を向ける。
そうして終わらせるために言った。
「遅くなった。間に合わせに行くぞ」




