大きいです……
「見ろ!ゾンビたちが」
おれは叫んでいた。ゾンビたちが集まり、折り重なるようにして、人体の山を現出させる。
「フフン、我が奥義、とくと味わいやがれデス!」
ゆらゆらと、巨人が立ち上がった。複数のゾンビが文字通り「合体」し、ひとつの巨体を形作っていた。
「二人とも、こちらも奥の手を使うのじゃ」
「おおリーダー、何か策が」
「『召喚』を行う!二人にはアレの足止めをお願いするのじゃ」
巨人ゾンビは重たい足取りでこちらへ向かっていた。
「でも、どうする?アレはデカすぎる」
おれがそう言うと、リーダーは不敵な笑みを浮かべて言った。
「ふふ、アホの作ったアホ巨人じゃ、対処のしようもある」
「聞こえてるデス!ブチ殺すデス!」
「こちらも合体するのじゃ!」
巨人に向かっておれ、魔法使い、リーダーの順に一列に並ぶ。
「わしは召喚の準備をする。しばらくの辛抱じゃ、頼む!」
リーダーは懐からチョークを出すと、石畳に魔法陣を書き始めた。
「じゃあ、おれたちも」
「……合体……」
一直線に攻撃してくる巨人に魔法を浴びせ、勢いが落ちたところをおれが食い止める、というのがリーダーの作戦だった。同士討ちを避けるために、おれの背中に魔法使いが密着する、まさに「合体」。
「よし、合体だ、ってアレ⁉︎」
魔法使いが密着する。
「な、なんか当たってる」
背中に柔らかいものを感じた。
「……嬉しいか、少年……」
「え、えーっと、じょ、女性だったんですね」
「……なぜ敬語……貴様の尻もなかなか……」
ケツをつかまれた。
「……来るぞ、少年、集中……」
そうは言っても、背中の感触……
「……大きいな……」
「うん、大きいです……」
何メートルくらいあるだろう?見上げるほど大きい巨人が、おれ達の眼前にいた。それはゆっくりと腕を振り上げると、無造作に振り下ろしてきた。モーションは遅いが、重たそうな打撃。
「……ファイヤー……」
火球が巨人の腕先にヒットする。一瞬弾かれたようになり、弧を描いて再びこちらへと向かって来た。
「よし、勢いが死んでる。これなら!」
おれはひのきのぼうの両端を掴み、横一文字に構えた。