ファイヤーワークス
頭上にハエ、そして眼前に迫り来るゴキの大群!
おれ達は身を寄せ合い、地べたに這いつくばっていた。不意に、リーダーがビクッと体を揺らす。
「感じるのじゃ」
「な、何を?こんな状況で……?」
「???……まあいい、時間が無いのじゃ」
いちめんの虫の死骸、巻き込まれたら窒息しそうだ。地上で、黒い海の中、溺れ死ぬおれ達の姿が頭に浮かんだ。
リーダーがおれの耳元で囁く。耳がくすぐったい。
「みっつ数えたら横に逃げるのじゃ。息を止めて、全力で走るのじゃぞ」
「な、何……」
「始めるぞ!いち、にい、さん!」
おれ達は立ち上がり、走った!息もせず、行けるところまで行き、そして地面に滑り込む。その瞬間、背後で光が閃いた。
シュッ、とはじけるような音、炎が上がり、濃く立ち込めた霧状の粉末に、猛スピードで引火していく。
「アニメで見たことある、かも」
「???あにめ?」
「そん時は小麦粉だったかな」
散発的に火種が投入され、夜空を舐め上げるような火柱が上がる。おれは恐怖も忘れ、つい見惚れてしまっていた。それは幾度か繰り返され、そして静かになった。
「終わった、か?」
リーダーは立ち上がると、きょろきょろと辺りを見回した。
「あそこじゃ、行くぞ」
おれも立ち上がり、リーダーが指差す方向を見た。
明るい星の光に照らされて、魔法使いがひらひらと手を振っていた。おれ達は小走りで駆け寄る。
「おぬしの魔力、感じておったぞ」
「……おまたせ……」
「MPは大丈夫かの?」
「……もうちょっとだけなら……」
合流したおれ達の数メートル先に、ネクロマンサーがいた。明らかに動揺しているようだったが、打ち消すように笑みを浮かべ、高慢な態度で言った。
「フフン、なかなかやるデス!ならばこれはどうデス?」
少女が腕を上下させると、釣られるようにゾンビたちが立ち上がってきた。のそりのそりと、引きずるような足取りで、一箇所に集まってきているようだった。
「目にもの見せてやるデス!さあみんな、やってやるデス!」
少女はカッと目を見開くと、叫んだ。
「合体‼︎」
な、何だと⁉︎