死と戯れし者
僧侶の体から放出される光。真昼だってこんなには明るくならないだろう。
「大丈夫か、勇者よ!直接見てはダメじゃ」
おれとリーダーはうつ伏せになり、強烈な光をやり過ごす。あちらこちらから、崩れ落ちるような音がした。
おれとリーダーは身を起こすと、辺りを見渡した。ゾンビの群れは糸の切れた人形と化し、石畳に力なく転がっている。
「やはりアンデッドには、僧侶じゃな。さすがじゃ……」
労いの言葉が終わるのを待たずに、再び崩れ落ちる音。僧侶が仰向けになっていた。
「だ、大丈夫ですか!」
おれは駆け寄ろうとするが、僧侶が身振りで制した。
「ハアハア、大丈夫です。ただ……MPが」
MPかよ。な、なんか腹立つな、悪いけど。
「僧侶よ、そのまましばらく休んでおれ。さあ勇者よ、見よ!アレがこの騒動の黒幕じゃ!」
リーダーが叫ぶ。指さした先には……⁉︎
ぼんやりと目に映る黒と白。暗闇にじっと目を凝らすと、フードをかぶった少女が、こちらをきっ!と見つめていた。
「あやつの服装、あれこそは死と戯れし者の証、骸骨のローブ!」
リーダーがいかめしい口調で言った。
確かに骸骨に見えなくもないが……
「パンダ柄のパジャマみたいだ、子ども向けの」
「???ぱんだ?」
その時、高く鋭い声が夜の街に響いた。
「世界は死に満ちている……デス!」
拡げた両手を頭上でぐるぐると回しながら、小柄な少女が叫んだ。
「な、なんだと?」
おれは思わず口走る。
「どうした、勇者よ?」
「リーダーより小さい!」
「な、何を言っておる⁉︎」
黒くて細かい何かが少女の手を中心に渦巻き、辺りを満たしていく。霧のように、しかしひどく乾いていて粉っぽい。
「くっ、気をつけるのじゃ、勇者よ。これがあやつの力じゃ」
「な、何者なんだよ、あのガキは⁉︎」
「舞っているのは恐らく、虫の死骸じゃ。あやつは死者を操る力を持つ……」
死者を操る……⁉︎
「ネクロマンサーじゃ!」