とっておきの武器を授けるのじゃ
薄暗く埃っぽい地下室で、おれたち四人はそれを聞いた。
「敵襲!敵襲!」
鐘や金属のフタ、あるいはバケツだろうか?慌ただしく打ち鳴らしながら叫ぶ、男たちの声。地下室まで聞こえるほどの大騒ぎっぷりだ。
「ゾンビだー!ゾンビの大群だー‼︎」
「な、なんだよ急に」
おれは恐る恐る口を開く。
「聞いての通りじゃ。今まさに危機が訪れようとしている。そしてこの街を救えるのは、勇者とその仲間。……つまり、わしら四人のみ、というわけじゃ!」
「わけじゃ(キリッ)」じゃねーぞ、このロリババア。おれは勇者じゃないっつーの。それにほら、坊さんも困ってるだろうが……
「お経は効くのかな?勇者君はどう思う?」
おいおい。順応早いな。
「とりあえず、何か武器が無いと、なあリーダー」
「任せろ、とっておきの武器があるのじゃ……」
とっておきだと?そんなの、ヘンに期待してしまうじゃないか……
「作戦はこうじゃ。ゾンビには物理攻撃はイマイチ効かぬので、魔法使い君に任せる。わしら三人はその護衛じゃ」
薄暗い地下室の床にチョークで図を描きながら、リーダーが説明する。
「……攻撃は任せろ……」
魔法使いが中性的な声でつぶやいた。
「ところでリーダー、おれたちの武器なんだけど……」
いかん、少しワクワクしている。こんな状況なのに。
「ああそうじゃった」
「銃とかあるのかな、それか火炎放射器とか」
対ゾンビならこれくらい欲しい。
「???じゅう?」
あ、無さそう。まあそうだよな……
「ふふふ、驚くな、これじゃ!」
ドヤ顔で指し示した部屋の角に、数本の木の棒が立て掛けられていた。
「木刀か?まあ……」
少しガッカリしたが、まあいい。剣だの槍だの渡されても戸惑ってしまうだけだろう。試しに握ってひと振りすると、あれ、なんか覚えのある匂いが……
「木で出来た風呂みたいな匂いがする」
おれがそう言うと、坊さんが棒を一嗅ぎして言った。
「これは……ヒノキですね」
……とっておきの武器が「ひのきのぼう」かよ!