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第24話

「私、みんなの天狐様に昴って名前つけたよね?でもそれ…」


「知ってるよ!」


「え?」


「天狐様の名前、すばるって言うの、知ってるよ!」


馨姫かおる様も、すばるって名前つけたの、知ってるよ!」


けい様も馨姫かおる様も同じ、すばるって名前つけたんだよね!」


「でも、同じすばるでも違うんだよ!」


御先稲荷たちは私の聞きたい事をわかってくれたみたいだけど私には狐たちの言ってる事が解らない。さっきまでグズグズしてたのを忘れて思わず考えこんでしまった。


「馨姫様の『すばる』はひらがなだけど、馨様の『昴』は漢字なんだよ!」


「だから同じだけど違うんだよ!」


「ひらがなと漢字じゃ違うんだよ!」


「どういう事?」


「違う言霊が入ってるんだって!」


「天狐様が言ってた!」


え?昴が?

おかしいよ、だって昴は…


「昴は…私を、馨姫の代わりとして、見ていたんでしょ…?」


「違うよ!」


「そんな事一回も言ってないよ!」


「天狐様は、馨様の事好きだよ!」


「嘘……」


「嘘じゃないよ!」


狐たちはとても真剣な様子だった。私はこの狐たちが嘘をついているのを見たことがない。だからってこの事を信じられるわけじゃないけど、頭は冴えてきた。


今思えば私、長いこと待たせてた昴に随分ぞんざいな扱いして逃げてきた気がする。


やっぱり、謝った方がいいよね…。


「いたっ!!」


足を怪我してたのを忘れて普通に立ち上がろうとしたせいで、捻った足首と擦りむいた膝に鋭い痛みがはしった。いやマジで痛い。


「いっ…いたっ…」


「大丈夫?」


「馨様っ!」


「死なないでっ!!」


「死んじゃやだ!!」


そんな簡単に人間くたばりゃしないって…

小さく呟いた途端に聞こえた声に私の脳は考える事をやめた。


「馨?」


「天狐様!」


「馨様がっ!!馨様がっ!!」


「足を怪我してて…」


「死んじゃう!」


私が何か言う前に御先稲荷が昴に突っ込んでいった。昴には何がなんだかわかってないみたいだけど。


「わかった。わかったから一旦離れて」


「はーい」


「馨様大丈夫かな?」


「大丈夫だよ。大丈夫だから社にお帰り」


「はーい」


御先稲荷は昴に言われて連れ立って帰っていった。場は再び私と昴。さっき御先稲荷たちに元気づけられたけど無理だ。

昴を目の前にしたら涙が溢れてくる。流れないようにするのが精一杯。


もう昴の姿を視界に入れる事すら怖い。

私という個を否定される事がこんなにも怖いなんて知らなかった。

昴はゆっくり私に近づくと、そばにある木の根に座った。


「玉藻様に聞いた。馨姫かおるの事、聞いたんだね」


「…う、ん」


「玉藻様は昔から居る狐だから誤解したのかもしれない。私の話を聞いてほしいんだけど、いい?」


私は俯いたまま黙って頷いた。なんの話だろう。


「私はその昔、馨姫と恋仲ではなかった。良き友だったんだよ」


「えっ?」


「玉藻様は何か誤解をしていたんだと思う。

私は別に馨姫に恋情を持っていたわけではないし、馨姫も同じ。お互い最高の友人だっただけ。それでも親しかった事に変わりはないから誤解されても仕方なかったのかもしれない。でも馨姫は…玉藻様に聞いた通り…。


それから人間を憎んで過ごした年数はとても長かった。神社つきの狐となってからもそれは変わらなかったんだ。でも、ある時、小さい女の子に会って…それがけいだよ」


「…私…?」


思わず昴の顔を見ると、昴は今にも泣きそうな優しい顔で私の頬を撫でた。


けいを見た時、一目で馨姫かおるの生まれ変わりだってわかった。彼女のような見鬼けんきの力を持っている事も、私の神社の神主をする家系の娘である事も。だから初めは…初めの内は馨姫かおるの代わりとしてけいに接していたんだと思う」


2019/10/21 転載及び加筆修正

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