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第2話

「だっ、大丈夫ですか?」


とりあえず状態を確認しないと……


「うっ……」


「大丈夫ですか?」


「君は…もしかして松月の……」


「松月?ええ、確かに私は松月ですけど」


それを言ったきり青年はまた目を閉じた。ていうか服とかすごいボロボロなんだけど…。その割に体はどこも傷付いている様子が無いから、行き倒れ…とか…?


「どうしよう、とりあえず寝かせないと…。狐!居ないの?狐!」


狐たちを呼んでみるけどうんともすんともいわない。社が荒らされてるから外に出てこれないのかな?


「うーん、ここに置いておくわけにもいかないし…よし、背負うか」


一大決心した私は、私より遥かに大きい青年を背負って裏道を目指したのだった。




「お、重っ…」


表の道を通れば誰かに見つかって面倒な事になるから私が昔からよく使っている裏道を通ってきた。

道らしい道ではないからそれなりに掠り傷とかはできちゃうけど仕方ない。


「救急箱救急箱っと」


とりあえず私の部屋に寝かせている青年の傷の手当てをしないといけない。さっきまで無事だったけど、家に連れてくる過程で全身擦り傷と掠り傷だらけだから。


ーーーまさか、あの人が社を荒らした人では…?


そんな考えも一瞬頭をよぎった。

でも何故かこの考えは最高に下らない考えに思えて、数秒後にはこの可能性を頭から消し去っていた。


「えーと、切り傷にはマキロン、掠り傷にもマキロン…マキロン有能すぎないか?」


見えるところの応急処置を終え、私は改めて青年の全身を見た。


ジーパンにパーカー、どこにでもあるような服装。肌は白くて睫毛が長い。髪は茶色で癖っ毛らしく、所々跳ねている。


多分顔は良い。目をあけてないからわかんないけど。でも、それだけのどこにでも居そうな人。


なのに、それなのに、なんでこの人を見るとこんなに懐かしく感じるんだろう。


「私、この人に会ったことがあるのかなあ…」


そのまましばらく青年を眺めていると、青年は不意に身じろぎをして目をあけた。


「………」


「お、気がつきましたね?ここ、私んちです」


「…私は…」


「結局あの後バタンキューしちゃったんで私が連れてきましたよ」


「ありがとう」


ここで青年は初めて私を見た。目は明るい茶色で、思った通り、かっこいい。


「…もしかして…けい?」


「え」


なんでこの人、私の事知ってんの?


「馨だよね?馨、馨」


「いや私は馨ですよ。合ってますよ。連呼しないで下さい。でもなんで私を知ってるんですか?」


青年は私の質問には答えず、まず私の顔を自分の顔の角度に向かせた。青年の目があんまり嬉しそうだから私は何も言えなかった。が、直後の青年の行動に私は吹っ切れる。


「会いたかった…!!」


青年は、私を、抱きしめた。


「な、な、何すんのよおおおおおお!!」


反射的に私は青年から離れると思いっきり睨み付けた。

青年は目をぱちくりとさせている。


「全くねえ、出会って間もない女子高生捕まえて会いたかっただぁ?いくら顔が良くたってそんなん犯罪でしょ、は、ん、ざ、い!!わかる?あんた頭大丈夫?それに私たち初対面でしょ?そんでもってなんで私の名前まで知ってんのさ!」


半ギレしている私に、その青年はのほほんと笑って斜め45°ズレた返答をした。


「馨は、今でもよく喋るんだねえ」


「話聞いてた?」


マズい。これは話進まないパターンだ。


「馨は私を忘れたの?」


青年は悲しそうな目で私を見て来る。

でも私こんなイケメン見たら絶対忘れないだろうし…


「ああそうか。この姿じゃわからないか」


青年はニッコリ笑って私を手招きした。

2019/10/21 転載及び加筆修正


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