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真夏のウイニングショット  作者: ゴリラゴリラゴリラ
小学生篇
5/12

第3話  予選開始 Ⅰ

 翌日の朝――


 昨晩の天気は小雨だった。


 天気予報によると上空に雨雲が掛かっており、朝方にかけて降る予報であったが、空は薄暗かった。


 ジリジリジリジリジリジリジリジリ。


 目覚ましの音が、部屋中に響き渡った。


 新聞配達のバイク音と聞こえてくる。時刻は午前五時半。


 リビングの方では朝のニュース番組が始まっている。


「寝みぃ……」


 祐貴は目を覚まし、自分の部屋から顔を出した。


「おはよう。早く顔を洗って家の前の掃除でもしてちょうだい」


 秋一・祐貴の母、野上紗香のがみさやか(四十三歳)が、朝早くから子供たちの朝食や弁当を作っていた。


「へい、へーい」


 祐貴は眠そうな表情をしながら洗面所に向かい、顔を洗うとタオルで拭き、そのまま首に巻いて外に出た。


「うーさむっ!」


 ドアの隣に置いてある竹ぼうきを手に取ると、自分の家の前に落ちている枯れ葉やゴミを掃く。


「こりゃあ、どっちに女神がつくか分からねぇーな……」


 祐貴は空を見ると、未だに星は輝いており、月も輝き、東の空には太陽の真っ赤な光が顔を出していた。




 チュンチュン、チュンチュン。


 小鳥の鳴き声が聞こえる。


 秋一は、気持ちよさそうに布団の中で眠っていた。


 祐貴は、外の掃除から戻ってくると手を洗い、リビングに向かう。


 ソファーの上にはいつの間にか、押さない少女が座ってテレビを見ていた。テレビ画面もいつの間にかアニメ番組に切り替えられている。


「美咲、秋一は?」


「まだ寝てるよー」


 と、祐貴の妹・美咲みさき(小一)が答えた。


 祐貴は一人部屋だが、秋一と美咲は一緒の部屋に寝ている。


 美咲は小学一年生でありながらいつも六時前には起き、夜十時過ぎには寝る。早寝早起きのよくできた女の子である。


「そうか、なら起こして来いよ。もうすぐ、朝食ができるからさ」


「はーい」


 美咲は、リモコンの一時停止ボタンを押して、二階へと上がっていった。


(これ、録画だったのか……)


 と、祐貴はテレビの画面を見てそう思った。




「すー、すー、すー」


 秋一は扇風機の風に当てられて、気持ちよさそうに抱き枕を抱いて寝ていた。


「秋兄、朝だよ。ご飯だよ!」


 と、二段ベットの梯子を上って、秋一の頬を抓る。


「すー、すー」


 痛みは絶対に伝わっているはずなのにピクリとも反応しない。


 美咲は、次の行動に出た。秋一の上にまたがり、右手と左手の平に息を吹きかける。


「はぁ……」


 そして――


「起きろー‼」


 パン、パン、パン、パン、パン、パン。


 と、綺麗な音が鳴った。


「いてぇえええええ!」


 秋一の叫び声が、外まで響いた。


 頬は真っ赤になっており、ヒリヒリする。美咲の両手の掌も赤くなっていた。


「美咲、何するんだよ……」


「朝だよ。早くしないと朝ご飯が無くなるからね」


「……」


「何?」


「そこ、どういてくれないと起きることすら出来ないんだが……」


「それは、それは……」


「お前、本当に小一か?」


「そうですよー」


 美咲は秋一から飛び降り、先に一階へと降りて行った。


「普通、妹と同じ部屋で寝ている兄貴なんていないと思うんだけどな……」


 秋一は、重い体を起こして一階に降りた。




 太陽が昇り、辺りが暗くなり始める。自動車の音が少しずつ聞こえ始めてきた。


「それじゃあ、学校に行ってくるわ」


 秋一はランドセルをからって、靴を履き、学校に登校する準備を始めた。


「行ってらっしゃい。美咲をしっかり連れて行くのよ」


「分かってるよ」


 美咲もトイレから出てきて手を洗い、ランドセルをからう。


「そうだ。そうだ……」


 秋一は、玄関から顔だけを台所の方に向けて祐貴の方を見た。


「兄ちゃん、勝てよ!」


「ああ、勝つよ」


 祐貴は答えた。


「じゃあ、行ってきまーす」


 二人は学校に行った。


「祐貴は何時から試合だっけ?」


「確かお昼の十二時だったな」


「そう、頑張りなさいよ」


「おいおい、息子の先発に見に来ないのかよ……」


「母さんだって家事で忙しいの。ネットで応援するから我慢して、準決勝から応援に行くから……」


「そこまで行くとは限らないだろ……」


 祐貴は、朝食後のコーヒーと新聞を時間になるまで楽しんだ。


「父さんは?」


「出張でまだ帰ってこないわよ」


「あ、そう……」


 祐貴は、熱々のコーヒーをぐっと飲みほした。




 真島食堂前――


 秋一たちが到着したころにはいつものメンバーがもう集まっていた。


「よっ!」


「よっ!」


 春馬と秋一は、いつも通りの簡単な挨拶をする。


「なっちゃん、おはよう」

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