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真夏のウイニングショット  作者: ゴリラゴリラゴリラ
小学生篇
12/12

     波乱 Ⅱ

「分かっているだろうな?」


 隼人はキャッチャーミットで口を塞ぎ、話し始めた。


「何が?」


 祐貴が訊き返す。


「この回は、三者凡退で終わらせるぞ」


「それは意外と大きく出たもんだな」


 祐貴は苦笑いする。相手は今大会の有力候補の一校。それを三人で終わらせるのだと言うのだ。


「それくらいの度胸で行かないと、この試合に勝てない。うちの投手軍でこの相手と対等に戦えるとしたらお前がどこまで粘れるかによるからな」


「分かってるよ。昨日、嫌という程動画を見直していたからな」


 隼人がマウンドからキャッチャーボックスに戻ると、ゆっくりと座り、ミットを構える。


 祐貴は土を蹴って、右腕を回すと、


「プレイ!」


 相手の一番バッターが打席に立ち、主審が声を上げる。


(さて、この一番バッターは、確か内角攻めはしないほうがよかったな。苦手なコースは、外角の内から外に逃げるカーブ……)


 祐貴は、大きく腕を振りかぶって、第一球を投げた。


 パァン!


 ボールはミットにすっぽりと入る。一球目は、ストレートのインコース。


「ストライクッ!」


 二球目、ストレートの外にボール一つ分外す球。ボール。


 三球目、内から外に逃げるカーブをしっかりストライクゾーンぎりぎりに投げた。


 キィン!


 相手はバットをしっかりとふり、ボールを上に打ち上げる。


 セカンドはしっかりと打球の行方をしっかりと追い、グローブの中に入る。


「アウトッ!」


 二塁審判が大声で判定を下す。


「良しッ!」


 祐貴は小さくガッツポーズをした。


 次の二番、三番も綺麗に打ち取り、三者凡退で一回の裏を終えた。


「ナイスピッチング! 野上!」


 と、ベンチにいるチームが褒め称える。


「ナイッピ」


 隣を歩く、隼人が祐貴の胸に自分のミットでポンッ、と叩いた。


「さて、まだ序盤だ。せめて、一点でも取っておくぞ!」


「「「はい!」」」


 監督の皆が大声で返事を返す。




 三塁側のスタンドで、その様子をじっくりと秋一達は感染していた。


「それにしても一回からすごい闘いだね。秋はどっちが勝つと思う?


 秋一の左隣に座っていた冬乃が話しかけてきた。


「まだ一回だ。どっちが強いとかまだ分からないよ。兄ちゃんが鳳凰打線を三人でしっかりと終わらせていることは、いいことだけどな」


「そうだな。キャッチャーのリードがいいんだろう。それにしっかりと祐兄も考えながら投げている。俺だったら嫌らしい闘い方だけどな……」


 右隣にいる春馬がそう答える。


「もし、二人があの場所に立っていたらどうしている?」


「投げる!」


 と、答える秋一。


「しっかりとリードして勝つ」


 と、答える春馬。


「あ、二人とも勝つつもりなのね……」


 冬乃は、苦笑いをしてそう言った。


「当たり前でしょ、ふーちゃん。相手が強いことだって当たる前から知っているし、勝たないと甲子園なんて一生行けないわよ」


 冬乃の隣に座っている夏海が言った。


「そうだぞ。それに過去のデータなんてあまり役に立たない。ここ最近での一ヶ月以内のデータが役に立つ。恐らくあの二人は、鳳凰打線の研究をどの学校よりもしっかりと準備してきたんだろう。それが攻撃にも生かされている」


 四人を球場まで連れてきたのは、春馬の父親・和宏かずひろだ。


 彼は元高校球児であり、甲子園経験者でもある。現在は、甲子園ファンであり、社会人野球に所属している。


「スリーアウト、チェンジ!」


 と、攻守交代を告げる声が響く。




 試合は膠着状態のまま、時間だけが過ぎていった。


 得点は共に、0—0。

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