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私は聖女になる気はありません。  作者: アーエル
第一章

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第9話



ダントンとビアンカは、自分たちが乗ってきた馬車に拘束されたまま乗せられた。

そして、外から(かんぬき)を掛けられた。

領主親子のその様子に、他の村から来ていた野次馬たちは蜘蛛の子を散らすように居なくなった。

誰かが「儀式の邪魔をしたからじゃないか」と呟いたからだ。

どの村でも口を挟んだりしゃしゃり出て来ては、大なり小なり、儀式の邪魔をしていた。

それがとうとう、捕縛という処罰を受けたのだろう。

そして、はたと気付いた。

自分たちの行為も『儀式の邪魔』をしているのではないか、と。

現実に、本来神殿で行われるはずだった『儀式』が、場所を変えて行われることになった。

確かに村の外から来た自分たちが、儀式中に村を散策されては落ち着かないだろう。

この集まった者たちのうち、誰か一人でも『留守宅に忍び込もう』と考えているかも知れないのだ。

疑心暗鬼に(おちい)った野次馬たちは、その『見えない不埒者(ふらちもの)の愚行』に巻き込まれては困る、と、各々(おのおの)の村へと逃げ帰ったのだった。

その『副産物』として、領主親娘の捕縛が村を駆け回り、領主の館のある「セタ(せた)」の町には野次馬が集まった。






「皆さま。乱入者の邪魔が入りましたが、これより儀式を始めさせて頂きます」


神官が『儀式の開催』を宣言する。

一人ずつテーブルの前に進み、水晶玉のような鑑定石に手を乗せる。

(わず)かに光る女性もいるが、それも信心からで『聖女候補』に選ばれるには足りなかった。

残りの女性も少なくなってきた。

その中に、レリーナとシンシアもいた。

レリーナの右手をシュリが黙って握っていた。

シュリは護衛騎士たちが儀式が始まると同時に、村長宅の敷地の外へ出て行ったのを確認して、レリーナとシンシアを呼びに入った。

レリーナはソファーに座って震えていたが、シュリの顔を見ると安心したのか少しだけ笑顔になった。


「もう大丈夫だよ」


そう言って、シュリから領主親娘が『儀式の邪魔をした』ことで捕縛されて馬車の中へ入れられたことを聞かされると、シンシアが「よくやった!」と喜んだ。

そして儀式が始まると同時に護衛騎士たちが『敷地の外』に出たことを知って窓から外を見ると、庭にいるのが神官一人と村の人だけになっているのを確認した。


「大丈夫だよ、レリ!ビアンカたちも護衛騎士(男たち)もいなくなってる!」


「レリ姉ちゃん。怖いなら、僕が一緒にいてあげる!」


「何言ってんのよ。このマセガキが」


シンシアは揶揄うが、シュリは3年前に喘息の発作で『死ぬかも知れない』と思った時、レリーナの作ってくれた薬を飲んで回復したのだ。

そして、先月起きた事件。

その時にレリーナは母親を亡くした。

それでも、薬師(くすし)として村のために尽くしてくれた。

そのことを知ったシュリが『レリーナを守るため』に剣術を習い始めた。

それが功を奏したのか、喘息が起きる回数が少なくなってきたのだ。

発作が起きても、以前のように倒れることはなくなった。


「レリ。どうする?」


「行くよ。・・・シュリくん、一緒にいてくれる?」


「いいよ。じゃあ一緒に行こう」


そう言って立ち上がったレリーナの震える手を握りしめた。






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