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私は聖女になる気はありません。  作者: アーエル
第三章

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第36話


「ユーリカが呼んでる!」


「落ち着いて、ミリィ」


今日あたりにシンシアが出産する予定のため、学校を休んだユーリカ。ミリアーナはユーリカの『声』を受け取ると慌てて席を立ち上がった。

そんなミリアーナを隣に座るアシュリーが(なだ)めて落ち着かせる。その間に男子生徒のカリファが『聖なるちから』を使って『声』を届ける。

ちょうど授業と授業の間の休憩時間中。教室に先生(おとな)がいない。そのことがミリィの気持ちをさらに焦らせていた。


「『通信隊員』は病院に連絡。『出産予定者は村長のシンシアさん』。ミリィ。ユーリカはなんて言って来た?」


「『赤ちゃんの頭が出てきてる』。どうしよう!ユーリカがパニック起こしてるの!」


「ミリィ。落ち着きなさい」


「お祖母ちゃん!」


「ミリィ。深呼吸してからユーリカに聞いて。『今、ママは何処にいる?』って」


「えっと!えっと!」


「ミリィ。深呼吸して。スーハー。スーハー」


「スーハー。スーハー」


アシュリーに合わせて周りに集まった女生徒たちも一緒に深呼吸を繰り返す。ミリィも一緒に深呼吸を繰り返す。すると少しずつ気持ちが落ち着いていく。最後に深く息を吐くとミリィは顔を上げた。


「・・・うん。落ち着いた!ありがとうアシュリー。みんな。・・・・・・お祖母ちゃん。朝からベッドで寝てるって」


「そう。じゃあ心配しなくて大丈夫よ。すでにシンシアは3人産んでるからね。赤ちゃんが出やすくなってるのよ。誰が通信隊員さんに連絡を?」


「はい。僕が」


カリファが手をあげるとニーナは笑顔で頷く。


「じゃあ。もう1ヶ所。伝えられるかしら?」


「えっと。まだ長距離は苦手で・・・」


「大丈夫よ。この学校の何処かにいるオルガさんに『赤ちゃんが生まれるよ』って伝えて欲しいのよ」


ニーナのその言葉に窓際の子供たちが次々と窓を開けていく。そして誰かの「せーの!」の合図で「オルガ先生(センセー)!赤ちゃんが生まれるよー!」と外に向かって声を揃えて叫んだ。

とたんに騒がしくなる周囲。

校庭を突っ切って馬を走らせて行くオルガの姿が見えると、誰かの「ガンバレー!」という声援が彼方此方(あちこち)から聞こえた。それに応えるように右腕を上げると、校門を出て家へと馬首(ばしゅ)を向けた。




30分後・・・。


「赤ちゃん生まれたって!」


立ち上がって喜ぶミリアーナの嬉しそうな声に「まだ授業中だ」という注意と共にパコンと教科書で頭を叩かれた。


「ナシード、先生・・・」


「前に書いてある問題を前に出て解いてこい」


「えー!あれ10問あるよ!」


「もっと増やして欲しかったか?」


「いい!増やさなくていい!」


「じゃあ、早く解いてこい」


「はーい・・・」


叩かれた頭を撫でながら『緑板(りょくばん)』の前へと進むミリアーナ。教壇に上がって問題を見上げたミリアーナに「そうだ。ミリィ」とナシードが声をかけた


「ユーリカはなんて言ってきたのかだけ、皆に教えろ」


そう。ナシードがミリアーナを前に出したのは、皆に報告させるためだった。


「あのね。男の子だって!」


ミリアーナの言葉に「やったー!」と歓声があがる。カリファは「村長の家に男の子が生まれた」と何処かへ報告している。彼はまだ『聖なるちから』が不安定のため、声に出さないと通信が使えない。しかし、それも練習すれば声を出さなくても通信出来るようになるだろう。


「オルガ先生は間に合ったの?」


「うん。ちゃんと『立ち会った』って」


「よし。じゃあ、あとは授業が終わってから報告しろ。ということで、ミリアーナ。その問題を早く解かないと休憩時間がなくなるぞ」


ナシードの言葉に慌てて緑板に向かったミリアーナは問題と『にらめっこ』を始めた。ミリアーナは勉強が出来ないわけではない。逆に成績は上位に食い込んでいる。

今はただ、ユーリカの喜びの感情が流れてきてしまい、冷静に問題に取り組めないようだ。そんなミリアーナの感情に呼応するように、ミリアーナの髪が風で揺れている。


「臨時放送です。オルガ先生に男の子が生まれました」


「繰り返します」の言葉の後にもう一度同じ放送が流れる。他の教室でも「ヤッター!」という歓声があがって賑やかになっている。



授業終了の鐘が鳴り、ナシードは大きく息を吐いた。


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