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私は聖女になる気はありません。  作者: アーエル
第二章

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第21話


『見回り』はただの口実ではない。

レリーナの祖母、『オルスタの聖女』レイオンの偉功で周りから注目されたが、この村は元々『特別な地』だった。

三方を囲む『自然の食糧庫』と呼ばれる山。其処から渾々と湧き出す泉。冷たい北風を受けず、冬でも暖かく雪が降るけど村外のように何メートルも積もらない。山から流れる川も地下水も豊富で夏に渇水することも冬に凍結することもない。

村の出入り口の方には海岸も広がり漁業も盛んだ。さらに、広範囲に渡って岩礁があるため他からは小船でも入って来られない。山もあるため、果実や山菜、薬草も豊富だ。それていて、畜産業も養蜂業もある。穀倉地帯もあり村民が飢えることもない。

・・・他の地域が飢饉で飢えていようとも。



「不自然なほど自然に特化した村だ」


初めてこの村を見回りした時にナシードの口から(こぼ)れ出た率直な感想だ。


養蜂業は果樹園を持ち、蜂蜜の取れない時期は果樹を育てている。

果樹は毎年たわわに実るが、瓶詰めなどの保存方法も確立しているため廃棄されるものは出ない。それは穀類もそうだ。穀倉庫にはその年に収穫した穀物の半数が蓄えられるが、前々年の穀類は残されていない。必ず収穫時期までに前々年の穀類は使い切ってしまうらしい。

船に乗り海に出たこともある。港から1海里離れた場所から急に現れる岩礁帯。それは不規則に並び、小船では通ることも満潮時に波に乗って越えることも出来ない。さらに、岩礁帯の外では時化(シケ)で荒れ狂っていても、岩礁帯の内側では凪いでいる。10メートル幅ほどの岩礁帯が波の勢いを殺しているのだ。


『難攻不落の自然要塞』


レリーナの誘拐騒動以降、一般的にそう呼ばれるようになった。海から、山から村に入り込もうとして失敗しているのだ。関所を守る兵たちに金や宝石、時には女性を与えてオルスタ村に入り込もうとするものもいる。関所を越えれば、あとは幅5メートルの村に続く道を進むだけだと信じられている。しかし、村の門は閉じられ、容易(たやす)く入ることは出来ない。


ナシードも、村に入るのに関所までは(とも)を連れて馬車で来るが、其処から村までは馬に騎乗して単身で来ている。

初めて村へ入る前に一度、関所から馬車で村に向かった。何の変哲もないただの一本道だったが、馬車が着いたのは関所だった。そのため、改めて馬に騎乗し村へと向かった。気付いたらナシードひとりが村の門に辿り着けていた。

後に知ったが、兵士たちは村を武力で征服し、聖女の孫(レリーナ)を聖女として王都に連れ出す気だったそうだ。・・・レリーナさえ手に入れれば村に用はない。そのため皆殺しにするつもりだったようだ。


もちろん王都に帰還後、兵士たちを問い(ただ)し、兵士隊長以下この計画に加担した者たちを査問会にかけた。王都市民たちの評決は『全員有罪』。『オルスタの聖女』に実際に生命を救われた者たちの(いか)りが大きかったのだ。兵士たちの家族ですら『有罪』と評決を(くだ)していた。

神殿側は『オルスタ村は聖女候補探しから外す』と宣言したことに触れ、「神殿に10年前の罪を繰り返させるつもりか!」と激昂した。

帝国も『オルスタ村に自治権を認める』と二度発布(はっぷ)しているのだ。一度目は『オルスタの聖女』の時、そして『レリーナ誘拐騒動』の時だ。

帝国の、それも王都を守るはずの兵士がそれすら守れない。

それは帝国の兵士たちの名を落とすこととなった。

そんな時、ミズーリ国からアストリア王都へ打診が来た。


『北の鉱山で起きた岩盤崩落で人員が足りない。そのため、無期限で兵士を送ってくれないだろうか』


この場合の人員とは、警備や官吏ではなく『鉱山労働者』の方だ。たしかに、問題を起こした兵士たちに処罰を与えることになる。だったら、彼らを『有効活用』出来るところに預けるのが一番いいだろう。

兵士たちには「重罪を犯した君たちには重い罰を与えるつもりだったが、ミズーリ国から鉱山の岩盤崩落で人員が不足しているためひとりでも多く送ってほしいそうだ。そのため無期限で向かってもらいたい。それを君たちの罰とする」


何故だろう。彼らは喜んでミズーリ国へ身柄を送ることに納得し署名した。私は『罰だ』と言ったが、彼らの中にはやはり『鉱山の警備や官吏に選ばれた』と勘違いしていたのだろうか?

その中に隊長は含まれなかった。彼は『神官にとって死刑に値する罰』を受けたからだ。

・・・『エイギースと同じ罰』といえば分かるだろうか。



『神々に護られ精霊の憩いし村』


古き文献でもそう呼ばれているオルスタ村は、その名に相応しい。この村だから『聖女』が生まれたのだろうか。それとも聖女を守るためにこの地は存在しているのだろうか。


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