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私は聖女になる気はありません。  作者: アーエル
第二章

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第16話

「レリ姉ちゃん」


「おはよう。シュリくん。今から特訓?」


「うん。今日は絶対一本取ってやる!」


「・・・キズ薬、用意しとくわね」


「レリ姉ちゃん・・・オレが勝てないって思ってる?」


「そうじゃないわ。『一本取る』んでしょ?だったら、無茶をすると思っただけ」


「無茶は・・・」


「するでしょ?」


「・・・・・・・・・うん」


シュリの返事にレリーナは微笑んだ。


このオルスタ村は静かに時が流れている。

レリーナの『心の傷』は軽くなったが、まだ村長宅にやってくる『見知らぬ者』に対しては警戒してしまう。そのため、村の入り口には木の扉が設置され、警備隊が門番をするようになった。


「『聖なるちから』が弱まっているからな。村を守るために必要なことさ」


村の男たちは誰もがそう言った。

オルスタ村は三方を『自然の食糧庫』と呼ばれる山が囲んでいる特殊な地域だ。この山々は、オルスタ村側は『緑豊かな山』だが、外に回ると『硬い岩盤』で出来ている。

地下水も豊富で、山からは川も流れているし、山と村の入り口近くまでは『海岸』も広がり魚も捕れる。山もあるため、果実や山菜、薬草も豊富だ。

オルスタ村を領地に含めた『旧ダントン領』は王家直轄領となった。それを知って、移住希望者が溢れた。しかし、それは他領にとって『働き手の流出』ほど迷惑なことはない。そのため、移住希望は却下された。


そして、オルスタ村が納税を免除されていることが広がった。


今まで、交流が極端に少ないオルスタ村を、周囲の地形から『田舎』として見下していた旧ダントン領の者たちも知らなかったことだった。今まで知られなかった理由は、ダントンがその事実を黙秘していたからだ。

迷惑なことに、他の村や領地から申請なく直接家族で移り住もうとやってくる者たちで街道が溢れた。家族で乗り込んで来るのは、「此処まで来たのだから」や「幼子(おさなご)や老人がいる」という理由で無理矢理村に入り込もうという浅ましい考えからだ。


残念ながら、村の近くですでに王都から屈強な兵士たちが街道を封鎖していた。

オルガが王都にいる時点で移住を希望する者たちが「人から聞いた話」としてすでに『オルスタ村は納税の記録がない。それは免除されているからだ』と噂になっていた。すぐに神官長に報告され、緊急事態として国が動いた。

国としては、その噂が王都中心で流れていることと、たった50年で二度、それも立て続けに『聖女さまの子孫』に失礼なことを繰り返すわけにはいかなかった。


一個中隊が街道を封鎖して許可なき者をすべて王都へ移送した。不作の際に、他領に流れて難民が溢れないよう『許可なき移民を禁ずる』という法がある。オルスタ村へ入ろうとする者は、その法に違反している。王都に移送される際に、犯罪者用の鋼鉄の馬車で纏めて運ばれた。

その馬車を見て、自分たちが法に触れていると気付き、慌てて領地へ戻ろうとしたが、すでに各街道は封鎖されていたため、逮捕者は三千は(くだ)らなかった。逮捕者が多いのは『家族単位』だからだ。

中には『交易のため』など「仕事でオルスタ村へ向かう」という者もいたが、オルスタ村はレリーナの父ロブレドの死以降、交易はストップしている。さらにレリーナと母親のエレーヌが暴漢に襲われて以降、村の扉は閉ざされていた。

エイギースが村に入れたのは、『神官見習い』として通行許可証を持っていたからだ。


王都から、正式にオルスタ村は封鎖の許可がおりた。元々豊かな村のため、封鎖しても困らなかった。


オルスタ村の外では移住希望者たちの混乱が半年続いたが、オルスタ村の中では、平和な日々が流れていった。





聖女騒動から一年。

王都に集められた聖女候補たちは、すでに半数が候補から外れて故郷へと帰されていた。のこりの一年で、さらに聖女が絞られることになる。


故郷に帰った女性たちは決して『脱落者』ではない。

『聖なるちから』を持っていても、各地に現れ始めた妖魔や魔獣を退けるほど強くなかったのだ。しかし、町や村単位なら守れる者たちもいる。中には『領地なら守れる』という候補者もいた。

そのため、彼女たちは故郷でも丁重に扱われた。




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