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第三話 キャラメイク

ここまでが説明回。

次からゲームが始まります。

長くなってごめんなさい。

投稿は明日の23時です。

 部屋に戻って時計を見ると八時半。やばい、時間がない

 いやこれには理由がある。仕方なかったんだ。


 しなね屋を出た後、木屋橋姉弟に軽く町を案内してもらいつつ、買い物をして叔父さん宅に帰った。ここまではよかった。

 遅ればせながらサプライズで歓迎会をしてくれることになったらしく、帰ったらたくさん料理が並んでた。

 ミニトマトにバジルとチーズを挟んでオリーブオイルかけたやつ、なんかの貝の上にマリネ? 野菜がのったやつ、生春巻きにラムチョップ、ローストビーフ、その他色々。俺が昼から外に行ってる間に、叔母さんが用意したそうだ。

 いやもう、ほんとおいしくて時間がたつのも忘れて食べてしまった。ちなみにデザートのパンナコッタもおいしかったです。


 ああそうそう、今日は(あきら)ちゃんも顔を出してくれた。初対面の時とは違ってパーティ用にかわいい服を着てきてたから、かわいいねって言ったら喜ばれた。

 その後、作務衣について聞いたら、それは忘れろと怒られた。なぜだ。かっこよかったのに、解せぬ。


 ついでに、今夜やる予定のβテストについて叔父さんに話してみたが、快諾してくれた。

 許可なんて取る必要ないよとは言ってくれたけど、まぁ最初くらいはね。一応学用に買ってくれたものなのに、初使用が遊びなんだから。

 初ゲームがリエージュのゲームじゃないんだって苦笑はしてたけど。


 ちなみにそこでも暁ちゃんに怒られた。なんでもっと早くゲームをやることを教えないんだって。

 そうはいっても決まったのが今日だし、何より18歳未満は保護者同伴じゃないとこのゲームはやれないんだからそもそも一緒にゲームできない。俺もVR登録したばっかりだから、保護者になることもできない。

 そう答えたら怒って部屋に帰ってしまった。


 叔母さんが、暁ちゃんは今日色々頑張ってたのが空回りしてちょっと興奮しただけだから、すぐ元通りになるって言ってくれたけど、心配である。


 その後は叔父さん叔母さんと、暁ちゃんへのフォローの方法やここ十年のうちに起こった暁ちゃんの面白事件を写真を交えて話したり、大学生活について聞いたりして、最後に二十歳になったら一緒にお酒を飲むことを叔父さんと約束して部屋に戻った。


 そして今に至る、というわけだ。

 時計を見ると35分。ちょっと考え込んでる間に5分も過ぎてる。やばい。

 とりあえず昨日のうちに配線だけは終わらせておいたから、後は専用の椅子に座るかベッドに横になるかだけど、今回は初めてだし横になるか。

 そうしてベッドに横になりスイッチを押し、VRの世界に旅立った。そう、俺の人生を決定づけることになる長くて短いVRの世界へと。





 気がつくと書庫にいた。少しアンティークな味わいのある本棚に囲まれた書庫に。

 目の前には書庫には不釣り合いの大きな姿見がある。周りの棚にはぎっしりと本がつまってるけど、題名がついているのは一つしかない。

 そんな風に周りを見渡していたら、不意に後ろから声をかけられた。


「おー、まだキャラクター設定を始めてない人がいたとは驚きだよ。2陣目当てにしても遅い気がするなー」


 振り向くと三頭身の小さな人形? が宙に浮かんで話しかけてきていた。どことなく体験ムービーで見た戦乙女をデフォルメ化した感がある。


「お? 僕についてなんか知ってる風だね。さてはムービーでパーフェクト僕を見た口かな。どうだい? かっこよかっただろう」


 確かにかっこよかった。たった今台無しになる感じはするが。


「なんてこと言うんだ、全く。せっかく時間がないだろうと思って、急いでやってきたのに」


「そうだったのか。それはすまなかった」


「ま、僕が急いで来ようががゆっくり来ようが、かかる時間は実は一緒なんだけどねー。時間は皆平等。等しく与えられているのさ」


 この野郎。ま、まあ、急いできたのは事実っぽいし見逃してやろう。……決してデフォルメキャラがくるくる回るのがかわいいからではない。


「とはいえ時間がないのは事実。早速キャラクター作成にいくとしよー。まずは自己紹介。僕の名前はL、十二番目だからL。安直な名前だよね。さあ、君の名前は? 名前と言っても本名じゃなくてキャラクターネームの方ね。あ、姓名両方答えてね」


 ふむ、姓名両方なのか。元々本名をもじってつけようとしてた候補が二つあるから、


「コダマ・パサド、でいいかな?」


「ん、オッケー。大丈夫だよ。それじゃあ次は世界観の説明とかなんだけど、時間がないからキャラクターを作りながら聞いてもらうことにしよう」


 そう言いながらエルはふよふよと本棚まで飛んでいって、一冊の本を取り出した。唯一題名がついていた本だ。


「VSOを使ったVRMMOがこの本棚にずらっと並ぶ予定なんだけど、まだ一作目のβテストってことで、この一冊だけだ。さあ、ヴァルホルサーガのキャラメイキングの始まりだ。最初はクラス設定。職業選択ってやつだね。職業多いし時間もないから簡単な説明のみにしてあるよ。詳しいことが知りたければ、あらためて言ってね」


 そう言いながらエルが本を開くと、俺の目の前に半透明のウィンドウが立ち上がった。そのウィンドウにはいろんな職業と簡単な説明が書いてある。



 ―――――――――――――――――――――

 見習い戦士☆

 武器を使う戦闘職の見習い


 剣士

 主に剣を使う戦闘職

 

 精霊術士

 精霊術に長けた戦闘職

 ・

 ・

 ・

 ―――――――――――――――――――――



 といった風に。ざっと見ても百近くはあるだろうか。その数に圧倒されていると、エルが話しかけてきた。


「その中で最大三つまで取得することができるよ。☆のついている職業は、今ここでしか取得できないやつね。ゲーム中には取得できないから注意! 逆にゲーム中にしか取得、転職できないやつもあるけどね。ちなみに見習い○○って職業は、ようはお試し職。いろんなことができる代わりに能力に制限がかかる。でも専門職への転職はローコストでできるよってやつだね」


「なるほど、例えば前衛やりたいけど武器は決めてないから見習い戦士をやって自分に合った武器を決める。剣を使いたいなら剣士に転職って感じかな」


「そうそう、他にもみんなを守りたかったら後で盾士に転職したらいい。それじゃあじっくり悩みつつも急いで選んでちょうだいな」


 ふむふむ、これは悩む。武器を使って戦いたいっていうのもあるし、せっかくのファンタジー、魔法を使いたいって言うのもある。加えて所謂ペット職に適性があるって言うんだから、それ系の職にも就きたい。どれかに特化した方がいいんだろうけど悩むなぁ。


「ずいぶん悩んでるみたいだけど、時間がないよー。他にも設定することはあるんだからね」


「わかった、この三つにする」


 そう言って選んだのはこの三つ。



 ―――――――――――――――――――――

 ウェポンマスター

 あらゆる武器の取り扱いに長けたクラス


 妖精使い

 妖精が手助けをしてくれるクラス


 エッグマスター☆

 自分専用の使い魔が産れる卵を持ったクラス。

 ―――――――――――――――――――――



 コンセプトは、やりたいことは全部やれるようにする、 だ。

 ウェポンマスターでいろんな武器を使って、卵から孵ったペットとともに戦う。もしペットが外れだったり孵るのに時間がかかっても、妖精使いがあれば大丈夫。魔法も妖精がいれば擬似的に使えるかもしれない。まぁこれは希望的観測になるけど。

 我ながら完璧ではないのか?

 と思ったが、エルは俺の選んだ三つのクラスを見て渋い顔をした。


「本当にそれでいいの?」


「確かに中途半端になるかもしれないけど、せっかくのβテスト。色々試してみたいからこれでいいよ」


「それならいっか。最悪、管理AIのイザヴェルが詰んだりしないように調整はしてくれるはずだしね。よし、時間もないから次に行こー。次は種族と能力値だ!」


 そう言ってエルが本のページをめくると、あらためて目の前にウィンドウが立ち上がった。



 ―――――――――――――――――――――

 所持AP:25

 ―――――


 種族:人族 AP:0

 ごく一般的な種族。

 特殊な能力はなく、能力値も平均的なものとなっている。


 能力値:肉体(10)

 力強さや肉体抵抗。その人の持つ運動能力。

 重武器や単純武器の取り扱いにも影響。


 能力値:感覚(10)

 器用さや察知能力。回避能力。

 軽武器や複雑な武器の取り扱いにも影響。


 能力値:精神(10)

 意志の強さや精神抵抗。

 魔法の行使にも影響。


 能力値:信仰(10)

 戦乙女との関係性。

 肉体抵抗や精神抵抗に補正。

 神や祖霊、精霊等の力を行使する際に影響。

 


 ―――――

 

 種族:エルフ AP:10

 夜目が利き、機敏で魔法の行使にも長けた種族。

 反面体力的にはもろい。

 ・

 ・

 ・

 

 ―――――――――――――――――――――


「さて、以上12の種族の中から一つを選んで、能力値を決定してちょうだい。+1するごとにAPを5消費、+4以上は7消費。-は1まででAPを10獲得できるよ。余ったAPは持ち越せるしゲーム中に獲得したAPで能力値を上げられるけど、APの消費は増えるから注意してね」


 なるほど。俺のクラスの取り方から考えると、どこかに特化するのも難しいし。うーん、どうしようか。悩むなあ。


 ――よし、これでどうだ。



 ―――――――――――――――――――――

 所持AP:0

 ―――――


 種族:人族 AP:0

 


 能力値:肉体(10)


 能力値:感覚(13)


 能力値:精神(10)


 能力値:信仰(12)


 ―――――――――――――――――――――


 決定したステータスを見て、エルはふむふむとうなずいた。


「なるほど、なかなか面白いねー。ちなみにどうしてこの能力値にしたのさ? 」


「肉体をあげなくても感覚をあげてれば戦闘はできるかなと。後はせっかくエルと仲良くなれたし、記念に信仰もあげてみた。」


「え? それはその。……うん、ありがと」


 ――エルが照れている。もじもじする姿がちょっとかわいい。

 ……まてまて、そうじゃない。ここは「妖精使うために信仰必要だからあげたんだろー、からかうな」とか言って怒るところだろう。AIなのに照れてどうする。これじゃあ本当のことを言い出せないじゃないか。

 ……よし、なかったことにして、話を先に進めることにしよう。その前にまずは、まだ虚空に向かってブツブツ言ってるエルを正気に戻さないとな。


「おーい、エル。次は何の設定をすればいい?」


 そう言っておでこを軽くつつくと、エルははっとしたように目をしばたいた。


「――あう! ご、ごめんよー。えっと、次は容姿の設定だね。これに関しては時間もないし、僕としてはランダムをおすすめするよ」


 ランダムかー。昔、洋ゲーで容姿をランダムにしたら、なかなかひどいことになったんだよな。少し悩むな。かといって時間もないしなぁ。


「なんだか心配そうな顔をしてるけど、多分大丈夫だよー。完全にランダムって訳じゃなくて、現実の容姿に合わせた形でのランダムだからね」


「なるほど。例えば髪の色とか瞳の色が変わったりする感じ?」


「そうそう、後は能力値に合わせて肉付きが変わったり、特徴的な痣ができたりとかかなぁ。それだけでも結構印象変わるんだよね」


 そうエルは腰に手を当て得意げな顔で答えた。

 別にエルのおかげというわけではないだろうに。いや、ここもあえて深く問うまい。


「わかった。それじゃあ、そのランダムでよろしく頼む」


「おっけー。ほいっとな!」


 エルが手を振ると、ポンッと言う音とともに目の前に姿見が現れた。

 そこには一人の人物が写っている。

 髪は藍に白のメッシュがかかった色。藍色に白のラインが入ってる感じだろうか。それを長めのオールバックにしてまとめている。

 目つきが少し鋭くなっていて体つきは若干締まった感じはするが、体格自体はそんなに変わらない、かな。

 全体的に見ると現実の俺を美化した感じに見える。


「ふっふっふー、どーだ! なかなかにかっこよくなっただろう。さっきのお礼にしっかりと僕が監修したからね。違和感はなく、それでいてファンタジー感のある絶妙なかっこよさ。」


「お、おう。ありがとう」


 額を拭うそぶりで達成感を出すエル。そんな彼女を見てるとなんだか少し申し訳ない気持ちになってくる。ただの軽口、冗談のつもりだったのになぁ。


「よーし! 次が最後だよー。ここではどの戦女神から加護をもらうか選んでもらうよ。それぞれにメリットとデメリットがあるからしっかり考えて選んでね。一応レベルが上がればデメリットを少なくしたり、逆にメリットを伸ばしたすることもできるけど、それはまだ先の話だからね。とはいえ時間は残り少ない。あの時計の針が0を指すまでだったら一陣に間に合うようにするから、いそげいそげ―!」


 そうエルが指さした先の時計を見ると、もう後2、3分しかない。じっくり悩む時間はなさそうだ。

 いそいで目の前に現れたウィンドウに目を落とす。


 ―――――――――――――――――――――

 ・アルヴィトル

 ・エイル

 ・エルルーン

 ・ゲイルドリヴル

  ・

  ・

  ・

 ―――――――――――――――――――――


 全部で12か。さすがに全部のデータを見比べる余裕はないな。こうなったら勘だ、勘。


「よし、決めた。エルとここであったのも一つの縁だ。せっかくだから同じ名前のエルルーンの加護をもらうことにするよ」


「んふふー、ありがと。それじゃあこれでキャラメイキングは終わり。これからキミを送り出すことになるけど、最後に少し注意点を。このVRMMO版ヴァルホルサーガの体感時間はものすごく加速されている。そのためいったんログアウトしてしまうと再度同じキャラでのログインはできない。そして一定条件を満たすか、一定時間――外部時間で3時間、内部時間で2年――たつとゲームが終了、クリアとなる。詳しくは中でヘルプを見てね」


 内部時間が2年!? 聞き逃せない言葉が混じるが、本当に時間がないのかエルは早口でまくし立てる。


「よし、それじゃあキミの冒険に幸多からんことを。僕はコダマのことを応援しているよ。いってらっしゃい」


 そう言ってエルが小さく手を振ると同時に、視界が白く染められていった。



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