第一話 二人のヒーロー
短くてごめんなさい。オープニングだから勘弁してね
あと今日三回目の更新になります。
掲示板回2→あらすじ&自己紹介→オープニング(これ)の流れです。
明日の二十三時更新予定です
◆清川家 夜
男が暗くなった部屋をのぞき込んでいた。
部屋の中には青年が一人、ヘッドギアをつけベッドで横になっている。
「そんな風にして部屋屋をのぞき込んでると、ゲームの悪役みたいよ、お父さん。」
女性が後ろから男に声をかけた。
「悪役って……。一応正義の味方のはずなんだけどなぁ」
男は頭をかきながら振り向いた。
そんな男に対し女は笑いながら応える。
「あら、あなたって正義の味方は味方でしたけど、あくまで勇者の仲間ポジションじゃなかった?」
「こいつは痛いところを突くね。……とはいえ、勇者とその仲間がそろって、ただこうして見てることしかできないってのは、忸怩たるものがあるね。例えそれが一番確率が高いとわかってはいても、ね」男は目をつむり天を見上げつぶやく。「暁の方は大丈夫だったかい?」
「ええ、大丈夫よ。暁もしっかりダイブインしてるわ」
「そうかい、ありがとう。それにしても本当にあの人の言うとおり、暁も一緒にダイブすることになるとわね」
そういう男に対し、女はあきれ顔で答えた。
「そんなのはじめからわかってたじゃない。あなたも響君と一緒でホント鈍感ね」
「そ、そうなのかい? そうか、ふむ……」思案顔の男だが、首を振り気を取り直した「そ、それはともかくだ。二人には頑張ってAIの未来を切り開いてほしいなぁ。特にこのゲームのAI達って僕たちのと違ってズルしたわけじゃなく、彼が手ずから作り上げた、言わば彼の子供みたいなもんなんだ。何とかなってほしいものだねぇ」
そんな男の背中を、女が軽くたたいた。
「私たちの自慢の娘が言ってるんだから信じてあげなさいな。それに父さんと母さんも行ってるんだから、いざとなったら手助けしてくれるわよ」
「そうか、そうだよなぁ」
男は自分に言い聞かせるかのようにうなずいた。
◆
オールドーの町に設置された闘技場。そこにはたくさんの観客が詰め寄せていた。
だが盤上で試合は行われていない。そこには大きなモニター――魔導機でできている――が設置されており、遺跡内部の映像を映し出している。
多くの観客は掛札を手に持ち、モニターに映し出された探索者の行動に一喜一憂をしている。
そんな観客の中に二人の少女がいた。
一人はショートボブに切りそろえられたシルバーの髪の少女。もう一人ははしばみ色の髪を二つにまとめた幼子。
カネティスとユエだ。
二人はお互い手をつなぎ、一つのモニターを食い入るように見つめている。
二人が見つめるモニターに映るのは片手に短剣を装備した盗賊風の男、そして一人の青年だった。
青年は右手にレイピア、左手に銃を持ち、相対する盗賊をうかがうようにそれらを構えている。
「お兄ちゃん、大丈夫かなぁ」
上目遣いで問いかけるユエを励ますように、カネティスは肩に手を置いた。
「兄さんなら大丈夫。約束してくれたんでしょ。何とかしてくれるって」
「う、うん。大丈夫、なんとするって指切りした」
頷くユエの頭をカネティスはなでる。
「それだったら大丈夫よ。兄さんは普段いい加減だし、すぐ約束忘れたりするけど。……でも兄さんが何とかする大丈夫って言うとね、ホントに何とかなっちゃうの。不思議だよね」
「そっか……、うんそうだよね。前もお兄ちゃんが大丈夫にしてくれたもんね」ユエは小首をかしげる。「あれ? お姉ちゃんもお兄ちゃんに大丈夫にしてもらったの?」
ユエの問いにカネティスは遠い目をした。
「……うん、そう。私も、私がユエちゃんくらいの頃、大丈夫にしてもらたの」
そうしてカネティスが思い出すのは夕暮れの公園。
自分がみんなと同じだと思っていた日々。
実は違うんだと知った日のこと。
異物は排除されるのだと、どんなにこちらから歩み寄っても無駄なのだと思い知らされた日のこと。
……そして、そんな自分の前に立つ小さくて大きな背中のこと。
彼がいなければ自分はどうなっていただろうか。
今の自分はいなかっただろうと、カネティスは思う。
自分自身を化け物だとさげすみ、自分を産んでくれた母を、父を恨んでいただろう。
祖父と祖母に心ない言葉を浴びせかけていただろう。
少なくとも、誰かを恨まず傷つけず生きてはいけなかった。嫌なことではあるけど、その点は確信している。
そんな自分を止めてくれた。最後の一線で引き戻してくれたのが彼だった。
心ない言葉から守ってくれた。彼女が彼女のままでいていいんだと、大丈夫だと言ってくれたのが彼だった。
だからカネティスは彼の、コダマの大丈夫という言葉を信じられる。
自信を持って、コダマに任せておけば大丈夫だとユエに言える。
「どうしたの? お姉ちゃん」
昔を思い出していたカネティスをいぶかしみ、ユエが問いかけた。
カネティスはかぶりを振る
「ううん、大丈夫。昔兄さんに助けられて時のこと思い出してただけ。兄さんって普段はダメダメなのに、いざとなったらヒーローみたいだなって思っちゃった」
「え~、みたいなじゃないよー。お兄ちゃんは私のヒーローだもん。お姉ちゃんは違うの?」
不満げに口をとがらせるユエ。カネティスはそんなユエの頭をなでた。
「ふふ、そうね。確かに私にとってもヒーローかな。それじゃあ二人のヒーローってことにしとこうか」
「んひひー。いいねー二人のヒーロー」
――――その時大きな歓声が沸き上がった。
二人がモニターに目を移すと、コダマが膝をついている。
二人は息をのみ、お互いの手をぎゅっと握りしめる。
大丈夫と約束したんだ、ヒーローになってくれるんだと信じながら、画面をじっと見つめた。




